「自分に素直になれる気がする」フリースクールで学ぶ“えすぺらんさ(夢・希望)” 不登校30万人時代に
不登校の小中学生が約30万人に達したと言います。学校でも家でもない、子供たちにとっての「第3の居場所」として注目されているのが、フリースクール。子供たちが自身の成長を感じられる、かけがえのない居場所になっています。
目次
「子供たちが安心していられる場所」
福岡市東区のフリースクール「箱崎自由学舎えすぺらんさ」には、様々な事情から学校に行きづらかったり通学できなくなったりした小学5年から高校2年までの15人が在籍しています。学校の環境に合わずに自信を失ってしまっている子供が多いということですが、そんな子供達にとって「えすぺらんさ」は大切な居場所になっています。
中学1年「もうひとつの家。みんなが優しいし温かいから」
小学6年「(ここに来たら)安心する」
小学5年「(まわりと)同じ気持ち。共感できる。『仲間がいるんだ』みたいな」
箱崎自由学舎えすぺらんさ 小田哲也さん「ここは、子供たちが安心していられる場所」
「この子たちはどうなるんだろう?」
代表の小田哲也さんは、教師として高校に勤めた後、青年海外協力隊に入り、途上国の子供達の教育支援をしました。その後、帰国した小田さんは日本で不登校の児童生徒が増えている現状を見て「えすぺらんさ」を開校しました。
箱崎自由学舎えすぺらんさ 小田哲也さん「『この子たち、どうなるんだろう』『この子たちが元気が出せる場があるといいのかな』と思って」
文部科学省が調査した小・中学校における不登校の児童・生徒数の推移を見ると、不登校の児童・生徒は年々増加していて、2022年度は約30万人に上っています。
福岡県内では1万4943人(小学生5778人、中学生9165人)で、福岡教育委員会は「過去最多の人数」と説明しています。フリースクールの数や、通っている人数は把握できていない、ということです
学校の出席日数に替えることも可能に
「えすぺらんさ」の授業は1対1が基本で、それぞれの教科の担当職員が子供たち一人一人と向き合います。学校側の理解も得て、「えすぺらんさ」に通った日数を学校の出席日数として数えることも可能です。
「えすぺらんさ」にはフリースペースも用意されていて、卓球やボードゲームなどをする時間もあります。授業だけでなく、スポーツやゲームを通じて気持ちの共有や個性を認め合うことを学びます。
小学6年「スマッシュを強く打つのが楽しいです」
小学5年「みんなが強すぎて、全然勝てなかった。多分調子よかった」
目に見える変化 母親が実感
周囲の優しさや温かさ、時には厳しさにも触れ、子供たちも自分の成長や変化を感じています。
小学5年「なんか、明るくなった気がする。自分に素直になれる気がする」
小学5年生の男の子は、小学2年の頃から学校に行きづらくなり、小学4年の時に「えすぺらんさ」に入りました。通い始めて1年ほどですが、一番身近で見守る母親は確かな変化を感じています。
母親「本来の明るさ、人懐っこさを受け入れていただいて、楽しそうに話してくれることも増えてきました。『居場所があるって本当に大切なことだな』と感謝しています」
自信を失っている子供たちの個性を認める
月に2回の課外学習の時間。この日は、子供たちは陶芸を体験しました。
高校2年「丸くなる気がしないね」
陶芸の先生「意外と固いのよ」
小田さん「柔らかく見えるけどね」
箱崎自由学舎えすぺらんさ 小田哲也さん「出来ない人も、出来る人もいる。出来る人が教えていくことで、うまくみんなが出来上がっていくといいな」
学校という環境に合わず自信を失っていた子供たちの個性を認め、自信をつけさせることで自主性を育てるのが「えすぺらんさ」の教育方針です。
箱崎自由学舎えすぺらんさ 小田哲也さん「学校には行かないけどいろいろないいところを持っている人が堂々と胸を張っていけるような、次のステップに行けるパワーをつけるような場所になってもらえるといいと思います。それをみなさんにわかってもらえて、広がっていけば。何かあった時に寄れる場所になってくれればいい」
「過去よりも今を大切に」
「えすぺらんさ」とは、スペイン語で夢や希望という意味です。学校に通えなくなった子供たちが夢や希望をもって次のステップに進むための手助けをしたい、という小田さんの願いが込められています。
小田さんたちは子供たちに、「えすぺらんさになぜ来たのか」と理由を聞くことはしません。「過去よりも今を大切にして前に進んでほしい」と願っているから、ということです。
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この記事を書いたひと
若松康志
1999年生まれ、鹿児島県出身