ランウェイを歩くモデルが身を包むのは古着でできた衣装だけ。今の時代に合うように新たなデザインを施され、「リクローズ」(もう一度服に)されたものです。仕掛けたのは、中古本大手の「ブックオフ」。年1000万着を超える服を買い取る同社が開催したファッションショーは、大量生産され、大量廃棄される“服”のあり方を問題提起しています。入社以来、古着の販売に携わってきた担当者は「形を変えてどうにか消費者に届けたい」と訴えます。ショーには、全国の服飾学科に通う生徒や学生たちのデザインした39作品がエントリー。50着以上の古着を裁断した素材を縫い合わせ、色鮮やかな服に仕上げた作品がグランプリに輝きました。
店舗で販売されていた古着を生地に使った
個性的な衣装でランウェイを歩くモデルたち。29日に福岡国際会議場で開かれたファッションショー「ReclothesCup」。衣装はすべて古着から作られています。
来場者「ほとんどのものが最初古着でここまで新しいものに作り上げるのは本当にすごい」
来場者「すべての作品が自分の作る作品にはないものばかりですごかった」
ファッションショーを企画したのは、中古品買い取り販売大手のブックオフコーポレーションです。本やCDのイメージがあるブックオフですが、服の買い取りも年間1000万着を超えています。モデルの服はすべて店舗で販売されていた古着を生地に使っています。
来場者「すごく古着に興味が湧いてきて、来年も開催されるのであれば自分も古着を使った洋服作りに挑戦してみたい」「前あった洋服をまた今の時代に合うようなデザインにできたらいいなという考えはあります」
服飾学科の学生に「作品発表」の機会を提供する目的も
ファッションショーを取り仕切るのはブックオフで働く山田美有さんです。環境省によると、国内でごみとして焼却や埋め立て処分されている服は1日あたり1200トン。大型トラック120台分にものぼります。入社以来、古着の販売に携わっていた山田さんも、売れ残った服が大量に廃棄されることに問題意識を持つようになったそうです。
山田さん「洋服としてまだ着られるのにもったいない。形を変えてどうにか消費者に届けたいと思った」
そのような中、アルバイトで働いていた服飾学科の専門学校の学生たちが、コロナ禍で作品発表会が開催できないという悩みを抱えていると聞きます。そこで、古着を「素材」として使うファッションショーを企画しました。
山田さん「作品は作るのがすごく大変なんです。学生は1年がかりくらいで大作を作るんですけど、1年かかって作ったものが人に見られないのはすごく悲しい。単純にその作品を見る側としてもっとこんな作品を見られる場所が増えたら面白いという思いがすごくあった」
作り直した服は“一点もの”そこに価値がある
今年のファッションショーには、全国の服飾学科に通う生徒や学生たちがデザインした39作品がエントリーしました。古着を10枚ほど使ったオーバーサイズのジャケットや、デニムをつなぎ合わせて作った服などの工夫を凝らした衣装が披露されました。
作った人「古いとかちょっと汚いとかあんまり好きじゃない人もいると思うんですけど、見方を変えることで新品同様にリメイクし、新しい服として見られる。伸びる素材にデニムを叩きつけたり、オーバーサイズで作ってみたり、ウエストは紐で縛ったり、誰でもどんな体形の人でも着られるデニム服を作りました」
グランプリを受賞したのは、東京の専門学校に通う山口空叶夢さんの作品です。50着以上の古着を裁断した素材を縫い合わせ、色鮮やかな服に仕上げたことが高く評価されました。
受賞した山口さん「服以外の用途でも古着を使ったものを作っていけたら。それを誰かが見て、古着や廃棄されている服がある現状を知ってもらえる」
山田さんは、古着を活用したファッションに触れることで環境問題について関心を持ち、新たな服の価値を見出してほしいといいます。
山田さん「アップサイクルで服を生地にしなおして作り直したものは一点しか存在しない。そういったところに他とは違う価値を自分自身は感じている。5年後、10年後、このコンテストで賞をとった子たちが有名になって審査員として帰ってきてくれたら嬉しいなと思います」
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