高齢化や人手不足が進む、日本の農業。なかでも、山の斜面に作られた棚田は、大型の機械を入れることは難しく、除草や田植えなどは手作業に頼る部分が多いため、担い手の減少が深刻な課題。全国各地で棚田は荒廃の危機に直面している。
そんな棚田を守りたいと、画期的なロボットを開発したのが熊本県立大学環境共生学部の松添直隆教授(65)だ。松添教授は、棚田で米作りをする農家の負担軽減を目指して、5年前から熊本高専などと連携し、除草作業を省力化する「球体除草ロボット」の研究開発を進めてきた。
直径約25センチ、重さ3キロほどの小型「球体除草ロボット」は、田植え後の水田内を回転しながら自律走行し、球体の表面のくぼみで、土壌の雑草をかき出す仕組み。これまで夏の炎天下に手作業で行っていた除草作業の大幅な労働時間の削減が期待できるとあって、農家から熱い視線が注がれている。
さらに松添教授は、栗の産地を守るため、自動で栗を拾う「栗収穫ロボット」の開発にも着手。自律走行しながら、地面に落ちている実やいがぐりを同時に拾い集める独自技術を考案し、特許も取得。数年内の製品化を目指している。
農業の未来と日本の原風景を守る、ロボット開発を追った。
熊本県立大学 環境共生学部
住所:熊本市東区月出3丁目1番100号
電話:096-321-6708(松添研究室)
HP:「球体除草ロボット」 https://suiden-robo.com/
「栗収穫ロボット」 https://kuri-robo.com/
代表者:松添直隆教授
取材後記
棚田を守る取り組みといえば、「棚田オーナー制度」が有名です。都市住民や企業などが棚田の一区画を借りてオーナーとなり、年に数回来訪して、地元農家と一緒に田植えや稲刈りなどの農作業を体験し、棚田を保全するというものです。
ところが、今回の主人公・松添直隆教授の着眼点はユニークなものでした。「棚田を守るためには、まずは除草作業が大事」それは、農業の現場に出向き、長年にわたって農家さんの声を聞いてきた松添教授だからこその発想に違いありません。
夏場の除草作業は、本当に過酷で大変なのです。その負担を軽減する「球体除草ロボット」が開発されました。数年内の製品化を目指して、まだまだ改良を続けていくと話す松添教授。ゆくゆくは、農家さんのコスト負担を最小限に抑えるため、「販売」ではなく「レンタル」で提供できればと考えているそうです。
このロボットが実用化されれば、高齢者や女性など多様な人材が農業に参入してくれるかもしれないと松添教授は期待しています。そんな松添教授は、栗収穫ロボットに続き、すでに熊本特産のミカンの自動収穫ロボットも構想中とのこと。熊本発の農業ロボットが続々と誕生し、現場で活躍する・・・
そんな未来を考えるとワクワクします!
(RKK熊本放送/岡田治美)
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