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東アジア情勢に詳しい、元RKB解説委員長で福岡女子大学副理事長の飯田和郎さんが、1月26日放送のRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』に出演。明日、日本から中国へ返還される双子のパンダ「シャオシャオ」と「レイレイ」の話題を入り口に、冷え切った日中関係と「パンダ外交」の今後について解説しました。
インパクトの大きい「パンダ不在」の景色
東京・上野動物園の双子のパンダ、シャオシャオ(暁暁)とレイレイ(蕾蕾)は昨日25日、多くのファンに惜しまれながら公開を終了しました。2頭は明日27日、日本を出発して中国へ向かいます。
これにより、1972年の日中国交正常化以来、約54年ぶりに日本からパンダがいなくなることになります。半世紀もの間、上野の象徴として愛されてきた人気者が消える。この景色が変わるインパクトは非常に大きく、日中関係がかつてないほど凍りついている現状を改めて突きつける出来事です。
「見に来てください」という中国外務省の含み
先週21日、中国外務省の会見でパンダの返還について質問が出た際、スポークスマンは「日本の方々が中国にパンダを見に来ることを歓迎します」と述べました。
しかし、今後の新たな貸し出し見通しについては「関係部門に聞いてください」と、明言を避けました。これは中国外務省がよく使う、説明を回避したい時の決まり文句です。
そもそも「中国に見に来て」と言われても、現在の中国は、日本の学者が「スパイ容疑で拘束される恐れがある」と渡航を躊躇するほど、不透明な状況です。気軽に行ける場所ではなくなっているのが現実です。
「世界で最も有能な外交官」パンダの起用先
ジャイアントパンダは、中国外交において極めて強力な「道具」として機能してきました。これを象徴するのが先月のフランス・マクロン大統領の訪中です。
習近平主席はマクロン氏を異例の厚遇でもてなし、「新たなパンダ保護の協力を展開する」として、2027年につがいを貸し出すと発表しました。アメリカ・トランプ政権を睨み、中仏の友好を世界にアピールするためにパンダという「有能な外交官」を起用したのです。
日本のパンダ舎は当面、空っぽのままか
では、日本のパンダ舎に次いつ新しいペアが来るのか。私の予想は非常に厳しいものです。「上野のパンダ舎は当面、空っぽのままになる」と考えざるを得ません。
理由は大きく2つあります。
衆院選と高市政権の継続:明日27日に公示される衆院選で与党が過半数を維持し、高市政権が継続すれば、中国が態度を軟化させる材料がありません。台湾有事に関する高市総理の発言(存立危機事態への言及)に対し、中国は「核心的利益の中の核心」を侵されたとして強く反発しており、この状況でパンダを貸し出すことは「譲歩」とみなされるからです。
米中関係の優先順位:トランプ大統領と習主席は今年、最大4回の会談が予定されています。米中関係の安定化に力が注がれる中、日本との関係改善は後回しになるでしょう。ちなみにアメリカも2023年に一度パンダがゼロになりましたが、米中関係のカードとして、わずか7ヶ月の空白で新たな貸し出しが実現しました。
問われる日中の「メンツ」と歩み寄り
高市発言に対する報復として、中国はレアアースの輸出規制や訪日観光の制限などを行っており、対する日本の世論も硬化しています。双方が「メンツ」を保ちながら歩み寄るきっかけがない限り、パンダの貸し出し交渉すら始まらないのが実情です。
日中首脳が顔を合わせる機会も、秋の国際会議まで予定されていません。パンダ不在の静かな動物園が、この国の外交の現在地を物語ることになりそうです。
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この記事を書いたひと

飯田和郎
1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。2025年4月から福岡女子大学副理事長を務める。





















