中国から輸入したアサリを熊本県産と偽って販売していた問題を受け、消費者庁は3月末からアサリの産地表示を厳格化した。この問題とは別に、産地の表示がわかりにくいという理由から表示ルールが見直される食材がある。それが「シイタケ」だ。いまは「国産」と表示されているものの中には「中国産」と表示変更されるものが出てくる。どういうことなのか?シイタケの生産現場を訪ねた。
福岡市西区のスーパーマーケット。
「店頭に並んでいるシイタケは、福岡県産や宮崎県産と書かれています」(RKB高田佳明)シイタケを栽培する際に使う「菌床」。海外から輸入しているケースは少なくない。実はシイタケの産地表示は、輸入菌床を使っていても日本で栽培すれば「国産」と表示できることになっている。
「なになに産みたいな表示だけ見てる。菌床の産地がどこかまでは考えたことがなかった」(スーパーの客)専門家によると、国産の菌床で栽培されるシイタケと海外産の菌床で栽培されるシイタケは見た目や味に大きな差はない。一方で、海外から菌床を輸入すれば人件費などを含めた製造コストは3分の1から4分の1程度に抑えられるという。
「外国産と味も変わらないかもしれないけれど、できればシイタケに関わらずちゃんとした表記が書いてあるものを買いますね」(スーパーの客)
海外の菌床を使っていても日本で栽培すれば国産と表示しているのが現在の産地表示だ。国は現状では消費者の誤解を招くとして今年3月末にルールを見直した。
これまでのルールでは、海外で菌を植え付けた菌床を輸入し国内でシイタケを栽培した場合、原産地を「A県」としていた。菌を植え付けた場所を表示する必要はなかった。ルール見直し後は菌を植え付けた場所を原産地「B国」として表示することが義務付けられた。そして収穫地を「A県」などと記すことになった。適正に表示しない場合、食品表示法違反で罰則が科せられる可能性もある。
福岡県宮若市に中国から輸入した「菌床」を使ってシイタケを生産する会社がある。
「中国から輸入したものをまず棚にのせてその日1日はずっとミストで水をかけます」(シイタケ生産会社クレセント・村田会長)
中国で種菌を植え付けた菌床は、現地で1か月ほど培養した後に輸入される。この会社は廃校となった小学校を活用し、温度や湿度が管理された16棟のハウスで年に約350トンを栽培。県内133か所のスーパーやドラッグストアなどにいまは「福岡県産」として出荷している。
「消費者の方が国産を選ばれるというのは、安心安全品質が良いというところが国産と思うんですよね」(シイタケ生産会社クレセント・村田武博会長)
海外から輸入されるシイタケの菌床は10年間で約5倍に急増し、去年3万7000トンを超えた。その大半が中国産だ。この会社が中国からシイタケの菌床を輸入し始めたのは3年前。理由のひとつは、国内で作る菌床に比べて調達コストを安く抑えられるためだった。食品問題などに詳しい専門家は、今回のルール改正について消費者にわかりやすくなったことに加えて、国内の菌床を使った生産者の苦しい現状が背景にあると指摘します。
「輸入の菌床が増え価格が段々下がってきた。自然と価格の方も生産者からすれば国産ということで高く売れると。国産の原料を使って栽培される方にとっては非常に意義がある」(菌興椎茸協同組合九州本部・笹山儀継本部長)宮若市の会社は表示ルールの変更を受けて、原産地を「中国」と記し、福岡県で採取したことを指す表示を新たに追加することを検討している。
「表示は決められた通り表示しますし、しいたけの品質が変わるわけではないですし、今の品質を保っていけば安心安全いいものだと思っています」(シイタケ生産会社クレセント・村田会長)これまで消費者にわかりにくかったシイタケの産地表示。半年間の経過措置を経て今年10月から全面的に切り替えが義務化される見通しだ。
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