「18日間地下壕にいて足が真っ赤に…」福岡の薬剤師教授 ウクライナ隣国で医薬品を処方 心の傷に向き合った1か月間

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって3か月が経ち、国外へ避難した人は600万人にのぼります。避難先の一つ、モルドバに、先月から福岡大学の教授が入りました。薬剤師として現地で医薬品の調達や処方などにあたり帰国した教授に、現地の医療の現状や避難民が必要とする支援について聞きました。
(現地写真はピースウィンズ・ジャパン提供)

ウクライナの隣国モルドバでの支援活動から帰国した福岡大学薬学部の江川孝教授は、先月中旬から約1か月間、NGO「ピースウィンズ・ジャパン」のメンバーとして、首都キシナウの仮設診療所で薬の調達や処方などにあたりました。

(Q1か月間活動されてどのように感じましたか)
福岡大学薬学部・江川孝教授「やっぱり戦争の傷跡と言いますか、心に傷を負ったというか、精神的に参っている方が多かったです。日々の生活がある日突然壊されると、家族の方ともバラバラになるなんかすごい不条理に感じますね」

ロシアによる軍事侵攻でウクライナから国外に避難した人は約600万人。そのうち、約46万人がモルドバに避難し、現在も9万人近くが滞在しているとされています。江川教授が勤務した診療所にも、1日あたり20人から25人の避難民が患者として訪れました。

江川教授「ハルキウとかミコライウ、特に激戦地だったところから来られた患者さんは2週間以上、中には18日間、地下の防空壕に避難していたと。だから、いつ逃げてもいいようにブーツを履いたままなんですよね足が真っ赤っかに腫れ上がって炎症を起こしていました」

日本の医薬品を持ち込んで処方することはできないため、現地にあるものを調達しなければなりません。さらに言葉の壁もあります。江川教授はポータブル型の翻訳機を通じて意思疎通をはかりました。また、どういった症状の時にどの薬をいつ飲めば良いのかをわかりやすく伝えおうとイラストを用意しました。

「モルドバはルーマニア語、ロシア語、そして英語も使われています。イラストは非常に役に立ちました」

患者「いつも使っている薬はなくなってしまいました。なぜか涙が止まらないんです」
江川教授 “One tablet for 3 days. Take care of yourself”(1回1錠を3日分です、お大事に)

「(避難について)こちらから積極的にどうでしたかというようなことは聞きませんでした。むしろどちらから来られましたか?程度にとどめて。そうすると被災者の方は堰を切ったようにしゃべり出すんですよね。急に泣き出されることもありますし、チームの看護師さんの提案でラベンダーの香り袋をお薬と一緒に渡すようにしていました」

診察した避難民の女性からお礼にもらったミルクキャンディーです。ずっと握りしめてきたのでしょうか形が変わっています。

「ミコライウから避難してきたおばあちゃんです。よほど大切にこうやって持ってたと思うんですよね。ありがとうって言われてこれを食べてくれと。ちょっと食べられなくて今でも飾っています」

子供がくれたタンポポの花は、ドライフラワーにして持ち帰りました。

「お薬もらって良くなったよという感じで持ってきました。やっぱり嬉しかったですね」

江川教授は帰国してからも避難民の支援を続けたいと、医薬品の在庫管理をリモートで手伝っています。

「これがお薬の在庫システムで薬名があります。在庫数がゼロになったところは赤いアラートが出るようになってます」

支援活動には、指導する臨床薬学研究室災害班の学生たちも協力しています。

福岡大学薬学部臨床薬学研究室災害班・松隈喜久乃さん(21)「モルドバで使用されていた医薬品を分かりやすくスマホとかで見られるように」

教授が現地で調達した約60種類の医薬品を対応する症状別にまとめ、服用の仕方などを英語に翻訳しました。

福岡大学薬学部臨床薬学研究室災害班・小松優佳さん(23)「正確に安全に使っていただくためにはやはり添付文書をきちんと読む必要があるんですけど、その整備がされていなかったのでアプリを開発しようと」
災害班・森崎愛夢さん(23)「時差だったりとか予期してなかったセキュリティ上の問題とかもあったんですけど、なんとか現地の方に届けることができて良かったです」
災害班・山村想世花さん(21)「戦争はどうしてもどの国の誰かが悪いということが注目されがちだけど、ロシアとかウクライナとか関係なく本当に困っている人たちのために使って欲しい」

江川教授「帰国する3日前からこういうアプリができて、いま現地にいる医療スタッフに引き継いで帰ることができました。現場に行って薬の問題点とか、どういうことをやればいいかというのが見えて来たような気がします。リモートでできることを研究室の学生と一緒に支援していきたいなと思っています」

まだ終わりが見えないロシア軍のウクライナ侵攻。戦禍から逃れ国外で生活を送る人たちにいま何が必要なのか。避難民の実情を理解しその思いに寄り添った支援をしていくことが必要だと、江川教授は話しています。

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