佐賀県が、約60年かけて開発した新品種の杉があります。「サガンスギ」というのですが、成長の早さ、強度、花粉の少なさから、次世代の杉として期待されています。
佐賀県の山の中です。伐採されているのは、佐賀県が約60年かけて開発した新品種の杉「サガンスギ」です。このサガンスギ、次世代の杉として期待されていますが、その最大の理由は、成長の早さです。
植栽して2年が経過したものです。従来の品種は1.8メートル程度なのに対し、サガンスギは3メートル以上あります。
RKB小松久里子「こちらが、現在普及している従来の杉の木です。そしてこちらが、佐賀県が新しく開発したサガンスギです。比べて見ると成長のスピードの差は一目瞭然です」
植栽して2年が経過したものです。従来の品種は1.8メートル程度なのに対し、サガンスギは3メートル以上あります。
佐賀県林業試験場 江島淳特別研究員「これが植えてから33年経ったサガンスギです。だいたい樹高が22メートルほどあります」
植栽して33年の木で幹を比べてみても、サガンスギは1.5倍の太さがあります。杉の木は、苗木から育て木材として出荷できるよう成長させるのに、約50年かかるとされてきました。それに対し、サガンスギは30年程度で出荷できるといいます。
佐賀県林業試験場 江島淳特別研究員「例えば、お父さんが植えた木を子供が使うとか、おじいさんが植えた木を孫が使うと、そういう長いスパンが当たり前だったんですけど、成長の早いサガンスギを使うことで、自分で植えて自分で収穫できるというのも可能」
サガンスギの開発が始まったのは、今から57年前の1965年。当時、県の職員だった原信義さんが中心となり、交配を繰り返して5年かけて1万3000本の苗木を育てました。
その後、10年かけて成長を見守り、質の良い109本に絞り込みます。さらに、県内の試験林で30年以上かけて強度や高さを調査した結果、4品種のサガンスギが誕生したのです。
その後、10年かけて成長を見守り、質の良い109本に絞り込みます。さらに、県内の試験林で30年以上かけて強度や高さを調査した結果、4品種のサガンスギが誕生したのです。
佐賀県林業試験場 江島淳特別研究員「これは苗木を作るための挿し付けという作業です」
佐賀県林業試験場 緒方義廣技術員「真っ直ぐ立ててあげると、自立して真っ直ぐたくましく育つ。注目されると嬉しいですね、やりがいがあるし」
これは、佐賀県の杉の植林状況を示したグラフです。伐採時期とされる50年を超える多くの杉が残っていることがわかります。生産者の高齢化などが原因でいわゆる「切り控え」が起きているためです。50年という生産スパンが30年に短縮されれば、生産者の負担やコストも軽減され、林業が循環されるのではと期待が高まっています。
佐賀県林業試験場 江島淳特別研究員「せっかく資源として使えるものが山にあるのに、なかなか使えていないという現状がありますので、それをしっかり利用しながら、新しく若い山に作り替えていく」
次世代の杉といわれる2つ目の理由は、強度にあります。力を加えたときのたわみを測定してみると、従来の品種が5.53に対して、サガンスギは8.22と大きく上回りました。これまでの研究で、従来の品種に比べて1.5倍の強度があり、しかも軽いことがわかっています。
佐賀県林業試験場 江島淳特別研究員「品種間の差がとても大きいということが分かってきていまして、品種によって木材の中の組織、繊維とか、そういったものの違いがその木材の強度とのかかわりが強いといわれています」
また、花粉症の人にも朗報です。花粉の量の指標となる雄花の数を5年かけて調査した結果、サガンスギの花粉の量は、一般的な杉に比べ半分以下であることがわかりました。成長が早い、強度が高い、花粉が少ない、三拍子そろったサガンスギ。すでに新しく植林しようという生産者も決まっていて、今年度は1万本以上の出荷を目標にしています。
佐賀県林業試験場 江島淳特別研究員「サガンスギが普及することで、佐賀の山全体に関わる人にも元気を与えられる。新しくサガンスギを植えて、二酸化炭素を吸収してどんどん大きくなってもらうことが、山の元気とか、そういうのに繋がっていくんじゃないかと考えています」
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