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「動かさない方がまし」22億円のポンプは“役立たず”事業計画の甘さ浮き彫りに【R調査班】

22億円もかけて水害対策として整備された排水ポンプが、激甚化する豪雨にその効果を発揮できずにいる。行政側は「失敗ではない」と主張するも、毎年の住宅浸水に住民は納得しない。RKBの調査報道グループ「R調査班」が取材すると、ポンプは所定の性能があるが、近年の雨量に対応できないことがわかった。浮き彫りになったのは事業計画の甘さだ。  

10年前に背丈よりも高い位置まで浸水

福岡県八女市立花町の北山地区。1級河川・矢部川のほとりに約40世帯が暮らす集落がある。矢部川と支流の白木川が合流する場所に、そのポンプ場はあった。情報を寄せてくれたのはこの地区で鍛冶屋を営む近藤輝英さんだ。
近藤輝英さん「10年前ですね、これが発端ですよ水害対策が始まった」
自宅の外壁に手書きされた2012.7.14の黒いライン。背丈よりも高いところまで水が来たことがわかる。

2012年7月に九州北部地方を襲った豪雨で福岡県の5人が死亡し、6800棟を超える住宅が浸水などの被害を受けた。取材班は今年3月まで地元の区長を務めていた古賀晃さんを訪ねた。
古賀晃さん・近藤輝英さん「2012年の災害はもう諦めるしかないです。どこにおっても駄目やから」
2人がそう話すほど大きな被害をもたらした豪雨が問題のポンプ場の整備につながった。

「30センチ以上は浸かりません」説明と食い違う現実

矢部川の支流・白木川には、大倉谷川と小倉谷川という小さな川が合流する。このうち大倉谷川の上流部分から矢部川へ排水する放水路の工事とあわせて約22億円をかけた大がかりな浸水対策が講じられた。

合流地点にあった排水門を閉鎖し川の流れを変えたのだ。元の排水門のすぐ隣には新たな排水門を設け毎秒5トンのポンプを設置、工事は2019年に完了しました。

古賀晃さん「水門ができたら道路から30センチ以上は水は上がりませんっていう話だったんですよね、絶対に。それが、できた途端に毎年浸かるもんやから」

多額の費用をかけ対策を講じたはずなのになぜ被害に見舞われ続けるのか。実は、水を排水するための門は小さくなっていた。かつての排水門が、上下2段であわせて約16㎡だったのに対し、新しい排水門は9.6㎡しかない。
古賀晃さん「旧門は上までものすごい勢いの水量があったわけですよね2段構えやから。水門が変わってから村が浸水するからちょっとおかしいよねって」

RKB小畠健太「広く浸水した地区の対策として設けられたポンプ場は、去年の水害時には稼働すらしてなかったということです」

近藤輝英さん「2020年に稼働させたら排水がうまくいかないことが分かったんですよ。去年はもう最初から動かせませんでした。動かしたら、逆に水害を甚大化させるんで、動かさない方がまだましっちゅうやつです」

雨量が事業計画以上「失敗ではない」

一体、どういうことなのか。調査班は工事の発注元、八女県土整備事務所に向かった。
八女県土整備事務所河川砂防課・織田政彦課長「令和3年8月当時にはですね、2回稼働しております」

Q地元の人からすると、去年はもうほぼ動いてないと
「ほぼ動いていないのは事実でございます。あくまでも白木川本川、外の水位が高いときに自然排水ができなくなりますので、その場合に強制的に水を排水するための施設ですので」
ポンプ場は、白木川の水位が高くなって北山地区にたまった水を流せなくなった時に限り稼働するよう設計されている。その意味で正常に稼働していると行政は説明する。それでは、排水門が小さくなったのはなぜなのか?
八女県土整備事務所河川砂防課・織田政彦課長「上段の排水口は周辺の地盤よりも高い位置にあったのでそもそも排水する機能は下段にあったと思われます。平成24年の大雨の際には、矢部川、白木川の水位が上がり、上段からもどんどん水が入り浸水をさらに助長した」

県土整備事務所の説明によると2012年の豪雨は、排水門の上段から白木川の水が逆流したことで被害が拡大した。そのため、新しい排水門は上段を設けず、下段の面積を従来よりも少し広げたという。では、逆流にも考慮した新たな排水門を設けたにも関わらず、なぜ毎年浸水被害が続いているのだろうか。
八女県土整備事務所河川砂防課・織田政彦課長「大きな要因としてはやはり雨量が事業計画以上であったということでございます。平成24年の九州北部豪雨の総雨量が303ミリでございます。令和3年8月豪が総雨量が915ミリです」

Qポンプ場は失敗だったのでは?
「ないですね。はい」
大きな被害が出た10年前の豪雨よりも去年は、総雨量が3倍になっているため、対策が追いつかない、この説明にも住民は納得がいかない様子だ。
古賀晃さん「もう根本的に門を元に戻せっていう部分がものすごく強いですよ」
今年こそは被害を出さないようにと県土整備事務所は緊急対策として新たな排水口を設置した。今後も住民とも協議しながら対策を進めるという。
八女県土整備事務所河川砂防課・織田政彦課長「地域の方々お話を伺いながら、八女市さんとも協議し検討してまいりたい」

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