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老舗譲りの創作寿司を振る舞う、モダンな空間が中洲エリアに登場

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注目店の出店が相次ぐ福岡の寿司界に、またも期待のニューカマーが加わりました。昨年12月20日、キャナルシティ博多の真向かいにできた「鮨 蒼天」です。昼は7,000円、夜は18,000円のコースが生む満悦は、早くもじわりと拡散中。老舗「たつみ寿司」出身の店主による創作寿司も気になるところ……というわけで、開店まもない1月某夜、真新しい店内に足を踏み入れました。

蒼天外観 蒼天店内

まずはスタイリッシュな店の造りに感心。長めのアプローチの先にはモダンなカウンター席があり、どの寿司屋にもない独特の洗練に心をつかまれます。「普段は美術館などを手がける著名建築家の方にお願いしたんです」と、ヒバのカウンターの向こうから泉龍希さんが教えてくれました。魚の仲買人だった父の影響で、自身も20歳まで長浜の市場で働き、その後この世界に飛び込んだ51歳の大将です。「信頼して間違いなし」と確信させる落ち着いた物腰は、ひたむきに寿司と対峙した歳月が与えたものでしょう。

蒼天一品 蒼天刺身 蒼天焼魚

そんな素敵な空間で始まる夜のコースは、小さな丼、一品料理、刺身、焼物、茶碗蒸し、寿司14貫、味噌汁という構成です。今宵の一品料理はボリューミーに盛られた毛蟹で、土佐酢ジュレ添えというのがなかなか小粋。刺身は20kg級の上級品を使ったアラと、気仙沼の中トロ、銚子のイワシが振る舞われました。歯応え豊かなネタは脂の乗りも完璧で、泉さんの優れた目利きぶりを窺わせます。焼物は、刺身と同じアラのカマの塩焼きで、スッと溶けて流れるような脂が実に上品です。

蒼天海老 蒼天馬

そして、いよいよ待望の“寿司の時間”が開幕。「その日最上のものだけを提供したくて」と、鮮魚は必ず泉さんが毎朝長浜で選ぶそうです。そんな渾身の1貫目は天草の車海老。活きた状態を客に見せた後にボイルし、ねっとり感を極めた歯触りを楽しませてくれます。
これに続く変化球の馬にぎりも絶品でした。極上の霜降りですが、シャリに潜めた柚子胡椒のおかげで後味爽快!

また、それらを乗せる小石原焼の皿も印象的です。紺碧の深い美しさが、寿司の味をより高めるような──。泉さんいわく「青はこの店のテーマなんです。玄界灘の色であり、常に高みを目指すべき天の色であり、嘘をつかない心を表す色。そうしたものを〈蒼天〉の名にも込めました」

蒼天店主

その言葉通り「仕事にもお客様にも正直でありたい」という泉さん。30歳で一度は自分の寿司店を構えつつ、10年後にそれを畳んで「たつみ寿司」に入門したのも、さらなる鍛錬を求めたからです。
「職人の心はもちろん、創作寿司の面白さを教わった〈たつみ寿司〉には感謝しかありません」。料理長も任された9年間の修業を終え、新たに「蒼天」を開いた今も、泉さんは「勉強と成長の毎日にワクワクしています」。ここの寿司に感じる“楽しさ”の正体は、そんな純朴な情熱なのかもしれません。

蒼天大トロ 蒼天アラ

「温かいままでどうぞ」と手渡されたのは炙った大トロ。シャリも温かく、口の中に快い波動が広がります。ワイン醤油に漬けたニンニクも効果絶大で、瞬時にふくよかな香りの渦が立ち昇りました。
3度目の登場となるアラも、皮目を炙ることで新たな魅惑が前面に。香ばしさに加え、脂のうまさも格段に引き立ちます。

蒼天うに 蒼天中トロ

北海道のバフンウニは塩と柑橘で賞味。素材の甘味を増幅させるシャリの塩梅も見事で、これは赤酢にみりんや昆布出汁などを合わせた苦心作だそうです。
さて、インパクトで言えば、このイタリア産トリュフを乗せた中トロが出色でしょう。高級素材に高級素材をぶつけた「蒼天」名物は、想像以上のご馳走感で舌に至福をもたらしました。

そして、気づけば14貫もの寿司を綺麗に完食。シャリが小さめで、さっぱり系の寿司も適度に挟まれるため、驚くほど食べ心地が軽いのです。
当然仕込みは大変でしょうが、「どんな苦労もお客様の満足げな笑顔で報われます」と泉さん。「だから僕も常に進化し続けたいし、その先には“寿司道を極める”という積年の夢がありますからね」。一点の曇りもない「蒼」を目指す職人の旅は、まだ始まったばかりです。

《鮨 蒼天》
福岡市博多区住吉1-6-9杉原商店ビル1F
092-262-9333 要予約

店舗名:鮨 蒼天
ジャンル:寿司
住所:福岡市博多区住吉1-6-9杉原商店ビル1F
電話番号:092-262-9333 要予約
営業時間:11:30~OS 13:30/17:30~OS21:00
定休日:日・祝日
席数:カウンター8席
個室:なし
メニュー:蒼天おまかせコース 昼:7,000円、夜:18,000円
URL:https://www.instagram.com/sushi_soten/

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