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生理・更年期など女性特有の課題を解決「フェムテック」普及に壁

生理や妊娠、出産、更年期など、女性の身体に関わるテーマがいま、ものづくりの世界で注目を集め、「フェムテック」ということばが生まれている。フェムテックとは、英語の「Female(女性)」と「Technology(技術)」を合わせた言葉で、「女性の心身の健康に関わる課題を解決する技術」という意味だ。
 
これまでは、タブー視されてきた話題であったり、製造業やエンジニアに女性があまりいなかったりしたことが原因で、なかなか光が当たらなかった分野だ。それが、近年のジェンダー意識の高まりや、ベンチャー企業を中心に女性の経営者が増えたこと、晩婚化や少子化などで変化してきているという。
 
RKBラジオの朝の情報番組『櫻井浩二インサイト』でレギュラーコメンテーターを務め、科学や環境問題を分かりやすく解説している毎日新聞論説委員の元村有希子さんが、7月1日の放送で「フェムテック」の現状について伝えた。
 
まずこの「フェムテック」ということばが、まだ日本では浸透していない。認知度は2%だ。だが、2020年は「フェムテック元年」と言われており、消費者が「こんな商品が欲しい」と発言しやすくなり、フェムテック関連にどんどん投資する人も増えてきたという。
 
そのひとつの成果ともいえるのが、「生理の貧困」問題をきっかけとして誕生した、ナプキンが要らない生理用のショーツだ。ところが、日本ではある法律がその普及の壁となっているという。60年もの間、改正されることがなかったという医薬品医療機器法(薬機法)だ。「生理用品は白色でなければならない」「使い捨てでなければならない」などが定められており、それらを満たしていれば「医薬部外品」として販売でき、「漏れない」「吸収する」などの効能を表現できる。だが、繰り返し洗って使える生理用ショーツは、薬機法が求める要件からは外れてしまうため、「雑品」という扱いになり、効能を謳うことはできない。
 
当然、商品開発者たちからは、法改正を求める声が上がっている。その声を受けて、国会議員たちによる「フェムテック議連」が誕生し、実態に合わせて法律を見直す動きがある。実現すれば、さまざまな新商品が出てきて、女性の生活の質も向上し、資金が集めやすくなるだろう。
 
実際、海外ではすでに、お腹に電磁波を発生させるものを貼って生理痛を和らげるものや、体内に挿入する経血カップをIT機器と連動させ、経血をモニタリングして、婦人病の早期発見につながるものなどが商品化されている。その他にも、子宮頸がんを60秒で診断する装置や、「ホッとフラッシュ」とよばれる、大量の汗をかく更年期特有の症状を即座に緩和してくれる機器などが次々と開発されている。
 
これらも、日本では“薬機法の壁”で、輸入・販売されず、宣伝することもできない。また、日本ならではの風潮である「まず安全性を確認しなければ」という考え方や「効能を過大に信用して、受診すべき患者が病院にかからなくなるのではないか」といった意見もある。
 
元村さんは「フェムテックという言葉が生まれたことや、頑張って開発している経営者がいることを考えると、社会の変化と切り離せないこの問題は、女性が快適に生活するために、もっと柔軟に議論されてもいいのではないか」と締めくくった。

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