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食通の街、福岡を支える立役者⑩「そいさぼ」「ちょいさぼ」経営する田端慎二さん

暮らし福岡を支える立役者
飲食店がひしめき、全国の食通が注目する街・福岡。この街で、食を通して人々に笑顔を与えている、料理人やソムリエたちがいます。彼らをゲストに迎え、ここ10年でのべ1万軒外食している弓削聞平と、世界中の食を語れるアナウンサーになりたい田中みずきの2人が、その情熱の源に迫ります。
~RKBラジオ 弓削聞平スマイルディッシュ(2021年3月に終了)より~

新型コロナウィルス感染症で海外旅行もままならなくなり、「旅好きにはかなり辛い」と嘆く田中アナ。「せめて家で食事を作るときに、旅先で食べた現地の味を再現して、旅行気分を味わっています」
「確かに!」と弓削さんも共感します。

今回のゲストはアジアン食堂「そいさぼ」(福岡市中央区薬院)と東洋大衆文化酒場「ちょいさぼ」(中央区渡辺通)の2店舗を経営している田端慎治さん。1号店「そいさぼ」のオープンは11年前。タイと沖縄が大好きで、なにかと縁が重なったそうです。

「田端さんが好きなものをドッキングさせたようなお店なんですね」と田中アナ。
「はい。昔から沖縄楽しそうだなぁってイメージがあったんですが、行ってみてますます好きになりました。そしてタイも大好き。料理も人もエネルギッシュだなぁと思います。

気候も似ているから食材も結構共通していて。例えばタイ料理にもゴーヤを使いますし、沖縄おでんに空芯菜を入れることもあります」
どちらの料理も気軽に楽しんでもらいたいと、専門店ではなく居酒屋スタイルにしたそうです。

「ふらっと立ち寄れる居酒屋が大好きなんですよ。だから皆さんの日課にも居酒屋を取り入れてほしいと思ってるくらいで(笑)。気を張らずに入れる、分かりやすくて接しやすい沖縄料理、タイ料理をやってます!」

「水餃子がうまいんですよ」と弓削さん、こちらの店の常連です。水餃子には具材にもオイスターソースやナンプラーを使っているのだそう。

「もともとタイの東北地方で使われるお肉料理のタレがありまして、それを皆さんに食べてもらいたくて作りました」
「本格的ですねー! タイ北部の料理はバンコクとはまた全然違うんでしょうね」と旅好きの田中アナも興味津々です。
「そうなんです。東北地方の料理は日本人の口に一番合う味と言われているんですよ」と田端さんは言います。

弓削さんのお気に入りは他にもいろいろありますが、『手羽中のレモングラス揚げ』は店の名物料理です。フレッシュのレモングラスを細かく刻んで肉にまぶし、ハーブの風味を移して揚げています。「揚げものだけどレモングラスの香りでさっぱりしてるので、何個でもいけちゃうんですよ」と、弓削さんも毎回注文するそうです。やみつきになる味です。

2年に一度はタイへ出向き、現地の味と店で出している味の違いをチェックします。そしてさらに美味しい料理を探して帰る、このこだわりはオープン当初からずっと続いています(今はコロナ禍で休止)。

「沖縄からは毎日空輸で食材を届けてもらってます。それを福岡の人たちが親しみやすい味にアレンジするんです。沖縄料理専門店ではないからこそできる味付けを考えながら、お客さまに喜ばれる料理を目指しています」

田端さんが大切にしている言葉は「笑顔に勝る力なし」その言葉に込められた思いを聞きました。

「自分が独立する前、10年間修行させてもらったアカチチグループ(琉球居酒屋/福岡市)の後藤栄治さんからいただいた言葉です。この言葉で、自分も笑顔を大事にしなくちゃと気付かせてもらいました。何か行動を起こすにも、相手を笑顔にしたいという思いが原動力になります。また、自分が笑顔でいることで、誰かの力にもなれると思うんです。何より、そういう気持ちを大事にしてると、なんか良い出会いばっかりだなぁと、いつも感じるんです」

また、1日の終わりに反省するポイントもそこ。「今日はちょっと笑顔が足りなかったかなぁとか思ったりします」と田端さん。
「えっ。毎日寝る前に1日を振り返るんですか?」という田中アナの問いかけに「酔い潰れてない時はですね(笑)」
終始ユーモアを交えて話す田端さん。周りに人が集まるのも分かりますね。

2号店の「ちょいさぼ」は、博多の屋台文化も取り入れカウンター越しに客との会話も楽しめる、わいわい賑やかな酒場というイメージの店です。
「タイや沖縄は私がちょっとサボりに行く場所でもあります。そこでちょっと疲れを癒したり、エネルギーを蓄えたりするんです。そんな感じでお客さまがちょっとサボりにくる店。そんな風に立ち寄ってほしいなという意味で『ちょいさぼ』です」

そもそも、1号店の「そいさぼ」は田端さんの20年来のニックネーム「さぼ」と、タイ語の「ソイ」(通りという意味)をくっつけた造語です。
「同じ『さぼ』でも1号店と2号店で意味が違ったんだぁ!」と新たな発見にびっくりの弓削さん、やはり2号店にも通っているのだそう。

「1人でふらっと行って、カウンターでサクッと飲んで帰れるような気軽なお店ですね。トムヤムおでんが美味しいんですよ」と言います。
「トムヤムってトムヤムクンですか!?  世界三大スープの??  私大好なんですけど!」と田中アナの声も弾みます。実は弓削さんはトムヤムクンの酸っぱくて辛いのが、あんまり得意じゃないのだそう。

「でもここのトムヤムおでんは大好き。辛味の刺激も強すぎず、全体的にマイルドなお味なんです」と弓削さん。
「うちのおでんは、厚揚げに島豆腐を使ったりハーブの風味を効かせたり、ひと味違うと思います。トムヤムクンが好きな人にも苦手な人にも人気です。それと『パクちくわ』! ちくわの中にパクチーを詰め込んだパクチー好きにはたまらないんです!」

学生時代から前述のアカチチグループでアルバイトをし、多くを学んだ田端さんですが、一度はスーツを着て営業職に就いたのだそう。ところが商品が売れても全く嬉しくない。それどころか、なぜか相手を騙しているような感覚になり、明るい田端さんから笑顔が消えていったのだそうです。

「そんなとき、飲食店で働いていたときのお客さまの笑顔を思い出したんです。お客さまから『ありがとう』とか『楽しかったよ』とか言ってもらえたこと。それがとてもうれしかったこと。あの頃は笑顔と笑顔で心の会話ができてたんだなって」

それを機に転職し、修行を積んで独立。しかし、当時店長として働いていたことと、自分が店のオーナーになって経営に携わることは、全く違うことだったと実感することになります。

「お店でどういうことをやりたいのか。どこに向かっていくのか。めざす店の形、メニュー構成などなど、お客さまにそれをどう伝えるか。そういう、はっきりとしたコンセプト、気持ちを持って、スタッフみんなで同じ方向を向いて行動していく。当時はそれを店長としてやっていたつもりだったんです。けれどオーナーとして向き合うとこれが難しい。あの頃、自分ではなく、オーナーがしてくれていたことが大きかったんだなと気づかされました」

「いわゆる社員教育というんですかね。同じ思いで、同じスピードで、同じ方向で一致団結っていうのは、なかなか簡単なことではないですよね」と田中アナ。今もまだまだも勉強中だと話す田端さんに田中アナから最後の質問です。

「飲食店経営を目指しているという人だけではなく、自分は何がやりたいんだろうと迷ってる人たちへ田端さんからアドバイスしてあげられるとしたら、どういうことを伝えたいですか?」

「楽しいなって思ったこと、興味あるなっていうことに対して、まずはそこに飛び込んでほしいです。それでもし失敗したとしても、後々5年10年と経ったときに必ず気付きがありますよ。頭でっかちになるのが一番良くないと思うんです。とにかく行動してほしい」

どんなことも自分で判断して、挑戦し続けてきた田端さんから、勇気が出るメッセージをいただきました。

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