PageTopButton

笑顔のがん治療 テーラーメイド型のワクチン療法

7月1日にオープンした久留米大学の付属研究所である「がんワクチンセンター」。 ここは、外科手術、抗がん剤、放射線治療に続く「第4のがん治療法」とされているワクチンを用いた免疫療法の研究および治療などを1カ所に集約した世界でも類をみない施設です。

患者の免疫力を高めてがん細胞を抑制するワクチン療法ですが、久留米大学が取り組んでいるのは、がんの種類ごとではなく、選び抜かれた31種類の異なるワクチンの中から、それぞれの患者ごとに高い効果が見込まれる3~4種類のワクチンを選んで投与するという革新的な「テーラーメイド型」ワクチン療法。

抗がん剤などで問題となっている副作用もほとんどないこのワクチン療法は、患者のQOL(生活の質)を損なうことなく治療ができるということで、闘病に苦しみ悩む世界中の患者とその家族に新たな選択肢と希望を与えています。
センター長の伊東恭悟教授(64)率いるがんワクチンセンターが目指すのは医薬品としての承認。革新的な治療法だけに、そのハードルも高く、険しいものですが、伊東先生はひとつの秘策を考案するのです。

世界最先端の技術を集めたセンターの全貌を、笑顔を取り戻した患者さんの声も交えながら紹介します。

久留米大学がんワクチンセンター
福岡県久留米市国分町155-1
電話:0942-27-5210
その他の情報 http://www.med.kurume-u.ac.jp/med/cvc/
九州国際重粒子線がん治療センター (サガハイマット)
佐賀県鳥栖市原古賀町415番地
電話:0942-50-8812
その他の情報 http://www.saga-himat.jp/

取材後記

医療関係の取材、特に「がん」という重い病気にまつわるものは取材する側にとっても正直、ヘビーなものです。患者さんの思い、ご家族の思い、もちろんプライバシーの問題も大きく、通常の取材以上に神経を使ってしまいます。

しかし今回のこの取材においては、これまでのがん患者さんたちの取材に比較すると、誤解を恐れずに素直に書くと「とても楽しい」ものになりました。

なぜなら、お会いする患者さんたちが明るいのです。その一番の理由は、やはり「希望」でしょうか?人間が本来もっている自己治癒力=免疫を高めることによってがんの猛威に立ち向かうという「ペプチドワクチン療法」は、絶望的な状況だった患者さんたちに明日への希望を与えるものでした。

副作用による苦痛がない、QOL(生活の質)を下げることなく普通の生活が出来る、などなど色んなメリットがあるこの治療法ですが、今回取材させたいただいた江副さん、浅海さんは、ご家族ふくめてみなさんが、センター長である伊東先生の人柄のおかげだと口をそろえておっしゃっていました。

明るく笑顔で患者さんの話を聞き、その患者さんに一番適した治療や食事などをアドバイスする伊東先生。テーラーメイド型というのはワクチンの種類だけでなく、実際の問診についても一貫しているんですね。もちろん、伊東先生だけでなく副センター長の由谷先生、野口先生、熱い思いを語ってくれた脳腫瘍医師の寺崎先生、私がお話をうがった全ての先生方が同じ思いで患者さんに接していらっしゃるのが印象的でした。

免疫を上げることは、ワクチンの力もさることながら、こうした信頼関係から生まれる生きる希望も大きいのだと思います。

元々は外科医で、がんを切って治す治療を目指していた伊東先生が免疫治療を始めたきっかけは、「がん治療で亡くなる」というケースが数多かったからだといいます。がんを撃退するためにはより強力な薬や放射線を使うため、がんを撲滅する前に身体がまいってしまうんです。さらに外科手術で完全に切れたと思ったがんでも、目に見えない部分に原発(がんの元)があって再発する・・・などこれまでのがん治療に限界を感じていた伊東先生がたどりついたのが、患者一人ひとりの自己治癒力を最大限にいかすワクチン治療だったのです。しかも従来の画一的な治療ではなく、個別の治療という革新的な方法で。

「どんながんでも治せる夢の治療法」などありませんが、少なくとも久留米大のテーラーメイド型ペプチドワクチン療法は、がんと闘う患者さんたちにとって希望ある選択肢となることは間違いありません。

一日も早く保険適用ができ、全国で、そして世界中でその選択肢が選べるようになればと切に願っています。
担当 RKB毎日放送 三宅 淳二

この記事はいかがでしたか?
リアクションで支援しよう

radiko 防災ムービー「いつでも、どこでも、安心を手のひらに。」
radiko 防災ムービー「あなたのスマホを、防災ラジオに。」