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「10年前東京にいなかったムシがいる」昆虫の世界から見える環境変化と地球温暖化

漂着ゴミやマイクロプラスチックといった、海の環境問題について広く世界に発信する「宗像国際環境会議」が世界遺産「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群の構成遺産のひとつ、宗像大社を舞台に、10月8日から3日間の日程で開かれる。この会議に登壇するパネリストのひとり、昆虫研究家の伊藤弥寿彦さんがRKBラジオ『櫻井浩二インサイト』に出演し、昆虫と環境の変化について語った。
櫻井浩二アナウンサー(以下、櫻井):伊藤さんはいつからムシに興味を持ったんですか?

 

伊藤弥寿彦さん(以下、伊藤):物心ついてから、最初は石が好きで、それ以外にも貝など、硬質でつるつるしていて、触り心地のよさそうなきれいなものに惹かれました。それが転じて、ムシの中でもカブトムシやクワガタムシ、テントウムシなどの甲虫に興味を持ち、最終的にはカミキリムシが専門になりました。

 

櫻井:え!?カミキリムシですか?

 

伊藤:驚かれる方が多いんですが、ムシの世界ではカミキリムシは大変人気があって、チョウの次に集めている人が多いと思います。実はカミキリムシだけで日本に800種類ぐらいいて、北は北海道から南は沖縄まで、生態も違います。

 

櫻井:カミキリムシがそんなに人気なんですか?

 

伊藤:かっこいいっていうのもあるんですが、魅力は多様性ですね。一番大きなものは6cm近くあって、小さいものでは2mmぐらいのものまでさまざまなんです。食べる植物が違うため、その植物を知らなければならないし、その場所の地形や環境を頭に入れていないと出会えないんです。

 

櫻井:ムシの世界からみて、気候変動や地球温暖化の影響で何か変化がありますか?

 

伊藤:私は東京に住んでいるんですが、20~30年前にいなかった昆虫がごく普通にいたりします。例えば「ツマグロヒョウモン」というチョウですね。これも数十年前はいなかったのに、今普通に飛んでいます。あ、今ちょうど僕の部屋にカメムシがいるのですが、これも「キマグロカメムシ」で、これは10年前いなかったと思います。どういう形で広まったか分かりませんが、人間が持ち込んだものも多いですね。東京・品川では数十年前いなかった昆虫「だらけ」といったところです。

 

櫻井:伊藤さんは「神社と昆虫」というテーマでも研究しているんですよね?

 

伊藤:神社は「神授の森」と言われており、周りが開発されても神社の周りだけは自然が残っていることが多いんです。神社は日本に8万社あると言われており、人間の手が加わらないままその土地固有の生態系が残っているんです。もうなくなってしまった自然が、神社の森にタイムカプセルのように残されていることが割とあります。昆虫ではありませんが、その代表例は「カタツムリ」で、移動が難しいのでその土地で進化していくことが多く、大変興味深いんです。

 

櫻井:宗像国際環境会議では、どのようなことを伝えたいと思っていますか?

 

伊藤:私の専門は「昆虫」で、海とはちょっと離れていますが、実は海と森というのはつながっているんです。森の栄養分が川に運ばれて、そこでプランクトンが発生し、豊かな栄養のある水ができます。豊かな森がなければ、豊かな海もないと思っています。

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