目次
【酪農を60年以上営む「江藤牧場」】
福岡県嘉麻市で60年以上続く「江藤牧場」。
父から受け継いだ代表の江藤秀樹さん(63)は、120頭の乳牛をスタッフ6人と飼育している。
一日に出荷する牛乳は合計3200キロにも上る。
父から受け継いだ代表の江藤秀樹さん(63)は、120頭の乳牛をスタッフ6人と飼育している。
一日に出荷する牛乳は合計3200キロにも上る。
【“労働力不足” 外国人研修生は入国できず・・・】
◆江藤秀樹さん
「乳の量が多い牛は、1日50キロ、60キロぐらい出る」
取材を始めてまず、一頭の牛から1日に出る牛乳の量に驚く。
「1か月の量ですか?」と思わず聞き返してしまったほどだ。
それを120頭分、365日搾り続けなくてはならない。
搾らないと、乳房炎という病気にかかってしまうためだ。
江藤牧場では1日2回、午前6時と午後4時半から、それぞれ3時間ずつかけて搾乳する。
昼間の空いた時間は自由とのことだが、変則的な勤務時間に加え「休み」の取りづらさも相まって、求人を出しても応募者が集まらない。
◆江藤秀樹さん
「朝晩365日、コンビニみたいに回していかないといけない。働き方改革でもう一人必要だが、外国人研修生が入国できず・・・」
外国人研修生に頼る牧場も多かったが、新型コロナの影響で入国できない状態に。
確保できない分は、ほかのスタッフがカバーするしかない。
「乳の量が多い牛は、1日50キロ、60キロぐらい出る」
取材を始めてまず、一頭の牛から1日に出る牛乳の量に驚く。
「1か月の量ですか?」と思わず聞き返してしまったほどだ。
それを120頭分、365日搾り続けなくてはならない。
搾らないと、乳房炎という病気にかかってしまうためだ。
江藤牧場では1日2回、午前6時と午後4時半から、それぞれ3時間ずつかけて搾乳する。
昼間の空いた時間は自由とのことだが、変則的な勤務時間に加え「休み」の取りづらさも相まって、求人を出しても応募者が集まらない。
◆江藤秀樹さん
「朝晩365日、コンビニみたいに回していかないといけない。働き方改革でもう一人必要だが、外国人研修生が入国できず・・・」
外国人研修生に頼る牧場も多かったが、新型コロナの影響で入国できない状態に。
確保できない分は、ほかのスタッフがカバーするしかない。
【“飼料高騰”に「巣ごもり需要」の影】
牛の飼育に欠かせない“えさ”の高騰が酪農業の経営にのしかかっている。
その理由は想像もしていないことだった。
◆江藤秀樹さん
「牧草の運賃のランクが低く、Amazonなどの荷物の方が運賃が高いので、そちらを優先的に船に積むもので、牧草輸入用のコンテナがない。牧草が2割から3割、高くなってきている」
巣ごもり需要の高まりで、荷物の運搬量が増え飼料を運ぶためのコンテナの空き枠が不足。
そこに燃料費の高騰も重なって、飼料価格はこの1年で3割近くもはね上がっていた。
その理由は想像もしていないことだった。
◆江藤秀樹さん
「牧草の運賃のランクが低く、Amazonなどの荷物の方が運賃が高いので、そちらを優先的に船に積むもので、牧草輸入用のコンテナがない。牧草が2割から3割、高くなってきている」
巣ごもり需要の高まりで、荷物の運搬量が増え飼料を運ぶためのコンテナの空き枠が不足。
そこに燃料費の高騰も重なって、飼料価格はこの1年で3割近くもはね上がっていた。
【“脱炭素”も飼料高騰に拍車】
飼料の中でも価格上昇が著しいのがトウモロコシ。安いときの倍になっているという。
この上昇には、巣ごもり需要とは別の、世界的な動きが影響していた。
◆江藤秀樹さん
「食料や飼料にも回るが、バイオエタノールを作るとか、エネルギーの方に利用されているので、しばらく高いまま続くのではないかと思っている」
新型コロナの影響にとどまらず、脱炭素の動きまでが関係しているとは想像もしていなかった。
飼料の大部分を輸入に頼っているため、為替変動も含めて様々な要因に価格が左右される。
安定的な経営のために江藤牧場では、焼酎や醤油の搾りかす、おからなどの「未利用資源」を混ぜることでコストカットを図っているが、飼料価格の上昇分をカバーできるほどではなく、えさ代が経営を圧迫している。
今年から稲作農家と契約して牧草を作ってもらい購入する試みを、行政とも協力しながら始めることにしている。
牧草の産地であるアメリカなどの国で、熱波やハリケーンによる被害が頻発するようになり、そのリスクを回避するための取り組みも始まっている。
この上昇には、巣ごもり需要とは別の、世界的な動きが影響していた。
◆江藤秀樹さん
「食料や飼料にも回るが、バイオエタノールを作るとか、エネルギーの方に利用されているので、しばらく高いまま続くのではないかと思っている」
新型コロナの影響にとどまらず、脱炭素の動きまでが関係しているとは想像もしていなかった。
飼料の大部分を輸入に頼っているため、為替変動も含めて様々な要因に価格が左右される。
安定的な経営のために江藤牧場では、焼酎や醤油の搾りかす、おからなどの「未利用資源」を混ぜることでコストカットを図っているが、飼料価格の上昇分をカバーできるほどではなく、えさ代が経営を圧迫している。
今年から稲作農家と契約して牧草を作ってもらい購入する試みを、行政とも協力しながら始めることにしている。
牧草の産地であるアメリカなどの国で、熱波やハリケーンによる被害が頻発するようになり、そのリスクを回避するための取り組みも始まっている。
【コロナ禍 “廃業”決める酪農家も】
生きものを相手に仕事をする酪農業。24時間365日、誰かが世話をしなくてはいけない。
休みの取りづらさなどから、元々後継者不足に悩んでいた業界だが、新型コロナによる厳しい経営環境が追い打ちとなり、廃業を決める業者も出てきている。
江藤牧場では5年前に、息子・健太郎さん(25)が牧場を継ぐことを決意した。
◆江藤秀樹さん
「今の状況からみると、果たして後継者として息子を迎えて良かったのかなと思うほど、今の状況は悪い」
◆江藤健太郎さん
「自分が戻ってきたときは、ある意味一番状況がよかった。子牛の値段もよく、飼料もめちゃくちゃ高くはなくて安定していた。やっていけるなって思っていたが、ここにきてガクンときている」
休みの取りづらさなどから、元々後継者不足に悩んでいた業界だが、新型コロナによる厳しい経営環境が追い打ちとなり、廃業を決める業者も出てきている。
江藤牧場では5年前に、息子・健太郎さん(25)が牧場を継ぐことを決意した。
◆江藤秀樹さん
「今の状況からみると、果たして後継者として息子を迎えて良かったのかなと思うほど、今の状況は悪い」
◆江藤健太郎さん
「自分が戻ってきたときは、ある意味一番状況がよかった。子牛の値段もよく、飼料もめちゃくちゃ高くはなくて安定していた。やっていけるなって思っていたが、ここにきてガクンときている」
【江藤さんの願い「廃棄しなくてすむように・・・」】
新型コロナ感染拡大で、小学校などの休校が相次ぐ中、再び“処理不可能乳”が出ることが危惧されている。
生産現場でも、お産を控えた牛を休ませる期間を長くとるなど、生産量を抑えるための精一杯の取り組みをしているという。
経営環境の厳しさはあるが、追い込まれているのは酪農業だけではない。
精魂込めた牛乳が廃棄されないよう、江藤さんは少しずつでいいので、消費を増やすことで応援してほしいと話す。
◆江藤秀樹さん
「私たちだけがコロナの影響を受けているわけではない。コップ一杯でも、料理にコップ一杯でも入れて、飲んだり、食べたりして応援していただきたい」
生産現場でも、お産を控えた牛を休ませる期間を長くとるなど、生産量を抑えるための精一杯の取り組みをしているという。
経営環境の厳しさはあるが、追い込まれているのは酪農業だけではない。
精魂込めた牛乳が廃棄されないよう、江藤さんは少しずつでいいので、消費を増やすことで応援してほしいと話す。
◆江藤秀樹さん
「私たちだけがコロナの影響を受けているわけではない。コップ一杯でも、料理にコップ一杯でも入れて、飲んだり、食べたりして応援していただきたい」
【取材後記】
小学校などで休校が相次ぐ中、給食用の牛乳が出ず、酪農家が困っているのではないか?そんな思いつきから始めた取材だった。実際に取材してみると、休校だけではない様々な要因が重なり、経営を圧迫している実態が明らかになった。
「牛乳が余るなら牛を減らせばいい」と考える人もいるかもしれないが、牛の数を減らしてしまうと元に戻すまでに3年から5年はかかるという。
取材中、江藤さんが牛のことを「この子たち」と家族のように呼ぶ姿が印象的だった。地域の豊かな食を支えるためにも、消費を増やす形で応援したいと心から思った。
取材:小畠健太
「牛乳が余るなら牛を減らせばいい」と考える人もいるかもしれないが、牛の数を減らしてしまうと元に戻すまでに3年から5年はかかるという。
取材中、江藤さんが牛のことを「この子たち」と家族のように呼ぶ姿が印象的だった。地域の豊かな食を支えるためにも、消費を増やす形で応援したいと心から思った。
取材:小畠健太
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