四季の恵みこそ最良のご馳走──。誰に教わるでもなく、肌身でそれを知る日本人の感性って素敵だなと思います。そして、その幸せにいつでも浸れる和食店が周りにあることも。今回訪れた「赤坂 藤田」も、そんな“幸せリスト”に載るべき一軒なのは間違いありません。
大正通りと並行に走る道沿いに、「弁護士ビル」という風格あるビルが立っています。「赤坂 藤田」の看板は、その1階に控えめに掛かっていました。
ここが以前「赤坂 あきちゃん」だったと記憶する方も多いでしょう。アラカルト主体の和食店でしたが、昨年1月にリニューアルを断行。現在は15,400円の「おまかせコース」を提供し、変わらぬ人気を博しています。
店内はカウンター9席のみですが、窮屈さはまるでなく、むしろ温かい親密さで大人の時間を彩ります。水曜と日曜には昼営業も行っていますが、ムードが増す夜の雰囲気はやはり格別ですね。
もちろん、心地よさの理由は店舗だけにあらず。ここを切り盛りする店主・藤田愛士(あきひと)さんの、実直で明るい人柄が影響大だと思うのです。元は会社員でしたが、「自力で生計を立てたい」と一念発起し料理界へ転身。独学で腕を磨き、ひたむきに理想の味を追う38歳の職人です。
29歳の頃、藤田さんは早良区に開いた「焼鳥 あきちゃん」で独立を果たしますが、当時は経営に必死で料理の質に気を配る余裕もなかったそう。しかし勉強のために食べ歩くなか、「世間にはこんな美味しいものがあるのか」「自分でもあんな料理を出したい」という“作り手の意地”が目覚めます。
その後も暇があれば東京や関西の名店を食べ歩き、限りない試作を重ねて研鑽に没頭。やがて「想いを形にする場」として、2018年、現在の場所に「赤坂 あきちゃん」を構えました。丁寧な仕事にひと匙の創意を添えた料理は、徐々に評判となり人気店に成長。そんな努力の人である藤田さんが、次のステージとしたのが「赤坂 藤田」なのです。
「あきちゃん」との最大の違いは、メニューをコースのみに絞ったこと。「アラカルトはお客様の好みが優先なので、頼み方が偏りがちですよね。でも普段は苦手に感じても、旬にはとても美味しくなる食材が多い。コースなら、そうした発見の機会をもっと増やせると思うんです」
日本の四季の感動を、料理を通して客と分かち合いたい──そんな情熱が満載のコースは全10品。3品目に供されたヒラメとあん肝のペーストは、舌が踊りだすような滋味でした。抜かりない下ごしらえから生まれる、塩味と甘味のバランスの妙がたまりません。
5品目は、魚の頭や骨で炊いた出汁に浸ったおかゆ。小さく刻んで忍ばせた、木の芽の食感が絶妙のアクセントです。旨味ある水分が弾け飛ぶ、茹でたてのホタルイカも存在感抜群!
赤酒に漬け込んだボタンエビは、焼きナスのピューレ、萩産の紫ウニ、海老の出汁で仕立てたジュレとともに。食材同士が魅惑を高め合う、香りの渦に思わずため息が漏れます。
メインには、ワサビの花の醤油漬けを巻いて食す鹿児島産「のざき牛」の冷しゃぶが登場。脂の甘みとワサビの辛さが優美な絡む、これも技ありの逸品でした。
そして、この雅なコースは季節の土鍋ご飯で大団円を迎えます。今宵は採れたての合馬の筍を加え、鰹出汁で炊きあげたご飯に、香ばしい地鶏の炙りを乗せたもの。地鶏は、自ら生産者に直談判して仕入れている滋賀県産・淡海(たんかい)地鶏だそうです。「とても脂が甘く、中毒性の高い鶏ですよ」と藤田さんが絶賛するとおり、これがずば抜けた極上素材でした。これに会えただけでも来た甲斐があった……と思えるほどに。
十三代柿右衛門や九谷焼、バカラなどの見応えある器に盛られた、旬特有の輝き溢れる料理たち。それらが最後にもたらしたのは、甘美な余韻と深い癒しでした。なんと毎月国外から来店する常連もいるという「赤坂 藤田」。その愛されぶりも頷ける、心和む滞在がここには待っています。
この記事は積水ハウス グランドメゾンの提供でお届けしました。
ジャンル:日本料理
住所:福岡市中央区赤坂1-7-23 弁護士ビル1F
電話番号:050-3627-5543 完全予約制
営業時間:12:00一斉スタート(水・日曜のみ)/18:00または19:00スタート
定休日:不定
席数:カウンター9席
個室:なし
メニュー:おまかせコース15,400円
URL:https://www.instagram.com/akihito__fujita/
この記事はいかがでしたか?
リアクションで支援しよう