「カァン‼」。乾いた打球音とともに勢いよく飛んだ白球は、右前方へとスライスした。その軌道を見て「またか…」とうなだれるのが、最近の休日の恒例となっている。
昨年春から、ゴルフ練習場に通い始めた。入社8年目で初めてテレビのゴルフ中継の実況を担当することになったからだ。簡単に見えていた「まっすぐ飛ばすこと」がなかなか難しい。
よく訪れる練習場には各打席に計測機器がついていて、打球の飛距離や軌道が記録される。技術の進歩に驚きつつも結果を確認する度、ため息が出る。運動神経には多少なりの自信があったのだが。
そんな時間を過ごせば過ごすほど「あれだけ正確にプレーをする選手たちは、一体どれほどのボールを打ってきたのだろう」と感じる。ある選手に話を聞くと「何年プロを続けていても、結局は練習量が勝敗を分ける」のだという。
ゴルフ競技そのものの魅力はもちろん、プロの技術やその裏にある努力、輝かしい瞬間までの背景を伝えるのも実況の役割だと思っている。16日から福岡雷山ゴルフ倶楽部(糸島市)で「Sky RKBレディスクラシック」が開催され、その実況中継を務める。練習は噓をつかない。残りの期間、表現の上達に努め、ヒロイン誕生の瞬間を伝えたい。
5月3日(土)毎日新聞掲載
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