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九州の旬魚に仕事を施した江戸前寿司のコースを姪浜駅前で

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日本屈指の漁場である玄界灘に面した福岡では、獲れたての魚介をそのまま提供する「博多前寿司」ともいわれるスタイルが主流でした。一方で「江戸前寿司」は、その名のとおり江戸の前(東京湾)で獲れた魚介を使ったにぎり寿司のルーツともいわれ、冷蔵技術がなかった時代に酢や昆布で絞めたり、醤油で漬けにする技法が生まれました。

現在では福岡でも江戸前の寿司を食べられる店が増え、そのうちの一軒が姪浜駅南口近くにある「鮨 囃子」です。大将の林康寛さんが独学で習得したという江戸前寿司を、昼夜ともにコースで提供しています。

鮨囃子_暖簾 鮨囃子_大将

マンションの1階にある店の入口に掲げられている白い暖簾の「丸に剣方喰紋」は林家の家紋で、キリッと端正な雰囲気です。林さんは長く和食の修行をした料理人で、以前は薬院駅近くで海鮮居酒屋を営んでいました。ところがある時東京で江戸前寿司を食べて、衝撃を受けたといいます。
「それまでは新鮮な魚をそのまま提供するのが一番と思っていましたが、熟成や仕事を施すことで旨味を引き出す食文化があることを知りました」。折りしもコロナ禍で休業を余儀なくされた時期でもあり、思い切って業態変更を決意。その間独学で江戸前寿司を勉強し、2020年11月に姪浜に移転して「鮨 囃子」をオープンしました。

鮨囃子_料理1 鮨囃子_料理2

今回注文したのは12,100円のおまかせコースで、季節の食材を使ったつまみ4~5品に、にぎり11貫、玉子、赤出汁といった構成です。
最初に出てきたのは、「毛ガニと菜の花のオイル和え」。爽やかな柚子の香りが添えられて、さっぱりとした味つけです。続いて小呂島産の「甘鯛の松葉焼き」は、うって変わって鯛の白子を濾したソースが敷かれた濃厚な味わい。熟練の和食職人ならではの緩急のつけ方が、さすがです。

鮨囃子_にぎり1 鮨囃子_にぎり2

にぎりはまず、白身からスタートします。この日は長崎産の春子鯛(カスゴダイ)で、ネタの上には黄身おぼろが乗せられ、春らしい装いが施されていました。
トロは豊洲市場から取り寄せた千葉・銚子産の本マグロを、およそ1ヵ月ほど寝かせて熟成させたもの。指先でつまんでパクリといけばねっとりとした食感に旨味が凝縮され、これぞ口福というものでしょう。

鮨囃子_にぎり3

そして、この時期に欠かせないネタといえば、江戸前の煮蛤(ハマグリ)です。大ぶりな千葉産の蛤を醤油、みりん、砂糖などで煮上げてシャリに乗せた姿は、春の江戸前寿司の白眉ともいえる一貫。福岡でこれほど見事な煮蛤にお目にかかったのは、初めての経験でした。

鮨囃子_にぎり4 鮨囃子_にぎり5

酢で締めたコハダは、あえてコースの終盤に登場します。本マグロのトロや煮蛤、脂の乗ったノドグロなど、濃厚な味のネタの後に一旦口中をサッパリとしてくれる嬉しいアクセントです。
そして最後は、やはり江戸前寿司に欠かすことのできない煮穴子でフィニッシュ。対馬産の穴子をふっくらと柔らかく炊き上げた身は、一瞬にして口の中で溶けていくようなトロトロ感......。いやはや最初から最後まで、とても独学とは思えない本格的な江戸前寿司を堪能することができました。

鮨囃子_店内

地下鉄姪浜駅南口から徒歩2分という好立地にあり、天神や博多駅の都心からでもわざわざ訪れる価値のある一軒です。

店舗名:鮨 囃子
ジャンル:寿司
住所:福岡市西区姪浜駅南1-4-15-1F
電話番号:092-883-1350
営業時間:11:30~13:00/17:00~22:00
定休日:不定
席数:カウンター7席、テーブル8席
個室:なし
メニュー:昼:握り寿司ランチコース3,520円、おまかせコース6,600円~/夜:おまかせコース8,800円、12,100円
URL:https://www.instagram.com/sushihayashi_meinohama/

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この記事を書いたひと

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