六本松から別府橋を渡った城南区鳥飼の住宅街に、以前から福岡の日本酒ファンに知られていた地酒専門の「松尾酒店」があります。近所に住んでいる筆者は時々このあたりを通るので、数年前にビルの建て替え工事をしているのは知っていました。しばらくして新装開店したばかりの酒屋の隣に、白い暖簾が掛かっているのを発見したのが1年ほど前。何とそこには「鮨 松尾」と書かれているではありませんか。ずっと気になっていた寿司屋でしたがなかなか機会に恵まれず、今回やっと訪問を果たすことができました。
L字形カウンターに7席のみの店内は、いたってシンプルな造り。無駄な装飾や張り紙などが一切ないのも潔く、好感が持てます。つけ場に立つ大将の松尾隆範さんに聞けば、やはり隣は実家が営む酒屋だそう。高校を卒業してすぐに家を出て博多寿司の名店「高玉」で修業に入り、20年以上にわたって寿司職人としての腕を磨いてきたといいます。実家の店舗を建て直すことになったの機に地元の鳥飼に戻り、自分の店を構えて独立することになりました。
料理は6,600円、8,800円、11,000円のコースのみ。小鉢、刺身3種、つまみ、焼き物、蒸し物、にぎり10貫という構成は同じで、食材などの内容が変わるということで、今回は真ん中のコースを注文しました。
この日の小鉢は地ダコを柔らかく炊いた「煮ダコ」で、刺身をはさんだつまみはピリッと辛い山椒の実がアクセントの「あん肝」。派手さはないものの安定感のある味で、実直な仕事ぶりに職人としての腕の確かさがうかがえます。
毎朝柳橋連合市場で買い付ける魚は地物が中心で、にぎりのスタートは白身から。この日は熊本・不知火海の名産であるタチウオで、ほんのりと桜色をした淡白な味わい。春先に親イカの旬を迎えるアオリイカには細かい包丁が入れられ、口の中でトロリととろけるような食感でした。
昆布締めにしたサヨリは上品な味わいで、昆布との相乗効果で旨味をさらに高めています。サワラは皮目をサッと炙ることによって香りを立たせ、脂からも旨味を引き出しています。
と、ここまで食べて気がついたのが、ネタによってシャリが違うこと。大将に聞くと、「淡白な魚にはあっさりとした米酢、味の強い魚には赤酢のシャリを合わせて、ネタによって2種類のシャリを使い分けています」とのこと。また、多くのネタに煮切り醤油か塩をしているので、指先でつまんでパクリとそのまま食べられます。
ネタによっては遠方から取り寄せるものもあります。脂がのったキンメダイは千葉県産で、数日間熟成をかけることによって旨味をさらにアップグレード。ねっとりとした舌ざわりが堪りません。赤酢のシャリに合わせた鳥取産のイワシには細かく包丁を入れて骨を切り、青魚のランクを数段上げているようです。
隣接する実家が地酒専門の酒屋だけあって、そのセレクトと品揃えは言わずもがな。地元・福岡や佐賀の銘酒を傍らに、丁寧な仕事をした料理と寿司を心ゆくまで堪能することができます。
ジャンル:寿司
住所:福岡市城南区鳥飼5-13-28-1F
電話番号:092-836-9190
営業時間:17:00~OS21:00
定休日:不定
席数:カウンター7席
個室:なし
メニュー:おまかせコース6,600円、8,800円、11,000円
URL:https://tabelog.com/fukuoka/A4001/A400105/40059804/
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