田んぼから消えた「トノサマガエル」絶滅危惧種を探して研究員と記者が“大捜索”
かつてよく見かけていたトノサマガエル。20年ほど前に絶滅危惧種となり、近年はほとんど見られなくなりました。姿を消しているのは、トノサマガエルだけではなく、専門家は、このままでは私たちの食文化が失われることにもつながりかねないと警鐘を鳴らしています。
あだ名もヘビ、無類のは虫類好きのメンバー
「この子は丸くてまんじゅうみたいなところがかわいい。プニプニしています」「1匹1匹お腹の色や模様が違って筋肉質」
カエルやサンショウウオをキラキラした目で愛でる高校生たち。福岡第一高校と第一薬科大学付属高校の水中生物研究会の生徒です。2019年に発足し、主に絶滅危惧種や外来種などの研究を行っています。は虫類が大好きだという元村さんは、自宅ではトカゲやヘビを飼っています。2年生の桃谷さんのあだ名は「カナヘビ」です。
2年生・桃谷春花さん「ラインのアイコンもカナヘビ。家では日本カナヘビの“ふよちゃん”を飼っています」
顧問が住宅街で「トノサマガエル」を発見
そんな生き物好きな生徒たちを率いるのが顧問の太田喜視教諭。先月、福岡県篠栗町の住宅街で見つけたのが2001年に福岡県のレッドデータブックで絶滅危惧種に選定されたトノサマガエルでした。20年ほど前には、山あいを除いて絶滅状態となっていましたが、1時間以上探し回れば、2匹は見つかっていました。それが今では探し当てるのが極めて難しくなっていて、水中生物研究会のメンバーも顧問の太田教諭以外は見つけたことがありません。トノサマガエルが姿を消した原因について専門家は、農地や河川の改修工事などによって自然環境が変わったためだと指摘します。
福岡県保健環境研究所・中島淳専門研究員「福岡市周辺の平野部では田んぼがなくなってしまっている。三面コンクリートの側溝とかに落ちて登れないとか、トノサマガエルの生息に適した状況じゃないと」
トノサマガエルを一目みたい!記者も一緒に“捜索“
「実物のトノサマガエルを生徒たちにも見てほしい」とこの日も山に調査に入ります。記者も一緒に水路や田んぼを探しますが一向に見つかりません。草が生い茂る別の場所に移動して探してみるものの、見つかるのは他の生き物ばかり。粘りに粘って3時間半ほど探しましたが、結局トノサマガエルを見つけることはできませんでした。
桃谷春花さん「残念ですけど、また機会があったら」
三角桃葉さん「見てみたいのでまた探していきたいと思います」
食文化の喪失?専門家が警鐘
姿を消したのはトノサマガエルだけではありません。ドジョウやタガメなどの水中生物も見かけることはほとんどなくなりました。専門家は、一種一種の生物が減るのを放置していると私たちの食文化を失うことにもつながりかねないと警鐘を鳴らします。
中島淳専門研究員「うなぎは絶滅危惧種になっていますし、福岡県のレッドデータブックでアユやトラフグも準絶滅危惧種に入っています。ハマグリも絶滅が今後危惧される状況にあります。たとえば公園の池にそういう生き物が住めるビオトープを作るとか、河川敷に湿地を再生するとか。田んぼの代わりになる環境を河川や公園内、あるいは庭に少しずつ作っていくのが保全対策として重要です」
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