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「これも1つの防災ってやつさ!」落語で広げる災害への心構え 防災施設館長は大学落語研出身

災害への備えや心構えを、「落語」で呼びかける活動をしている男性がいます。「楽しみながら防災について学んでもらおう」という取り組みです。


◆「そんなに言うんだったら、避難してあげましょう」
福岡県筑後市で開かれた落語会。ただ、普通の落語とは少し違います。

「逃げてください逃げてくださいと頭を下げて来たら、そんなに言うんだったら、じゃあ避難してあげましょう。どっこらしょ。ボートに乗って優雅に公民館に連れて行ってもらう。それでいいんじゃないのかい? そんな人様に迷惑をかけることしちゃだめよ! 早め早めに避難をしないといけないの。『率先避難』という言葉があるのよ」

福々亭金太郎こと川嶋睦己さんは、創作落語を通じて防災意識を高める活動を行っています。


◆時に笑いを交えて防災の注意点を
「あなた何? 部屋の壁にハザードマップを貼っているの? 路地の1本1本まで詳しく書いてあるだろう? だからこれはいいねと思って仲間と飲みに行ったお店と『ボトルキープをしていましたよ』という印を付箋に貼っておくと、ボトルが流される心配はいられえのかなと。これも1つの防災ってやつ」

時に笑いを交えながら避難するときの注意点や、災害への備えについて分かりやすく説明します。

「電気、水道、ガス止まりますよね。冷蔵庫が使えなくなっちゃいます。となると使い切りサイズでない2リットルの水って、なかなか不便ですよね。水が悪くなっちゃうかもしれません。ですので、小さい500ミリリットルの使い切りサイズのものをたくさん用意することも大事だと思います」

聴衆「面白かったですね。早め早めの対策をしないといけないと思いました」「上手ですよね。まだ若いのに、感心しました。やっぱり緊急避難は早めにしないといけないと改めて確認しました」

川嶋睦己さん「防災講演会、講座となると、『うーーん』となるけれど、『落語なら聞いちゃろうか』と思っていただけたら、すごくいいな」


◆館長の川嶋睦己さんは福大落研出身
川嶋さんは福岡大学の落語研究会出身で、卒業後も落語を続けてきました。現在は、久留米市にある筑後川防災施設「くるめウス」の館長を務めています。久留米市では、大雨による浸水被害が毎年のように発生しています。

川嶋睦己さん「久留米市内の小学生の児童と一緒に地域を探検して、災害時に水が浸かってしまいそうな場所や、地震が起きた時に倒れそうなブロック塀、そういう危険箇所をチェックして地図を作るという企画もやっています」

川嶋さんは社会科見学で訪れた子供たちに防災の授業を行ったり、川の環境の大切さを伝えたりしています。

川嶋睦己さん「昭和28年(1953年)の大水害の時の記録写真です。筑後川の上流からたくさん水が流れてきまして、橋が流れたり家が浸水したりということがこの辺り一帯で起きたことを知っていただくきっかけにと、写真を展示しています」


◆祖母から聞いた水害の記憶が原点
1953年に起きた西日本大水害。筑後川流域では、147人が亡くなりました。水害を経験した祖母の話を聞いたことが防災を呼びかけるきっかけになった、といいます。

川嶋睦己さん「梅雨の時期は特によく聞かせてくれていて、その時の祖母の『怖かった』という様子が子供ながらに伝わってきて、こういうことがふるさと・地元で起きうるんだとみなさんに伝えていかないと、という思いがありまして」

「今急に地震が起きたり大雨が降ったりするでしょ? だから何かしなきゃいけないなと、それはわかってるんですけど、もう何したらいいかわからねえんですよ」

いつ起きてもおかしくない災害への備え。一人でも多くの人に伝えるため、川嶋さんはこれからも高座に上がり続けます。

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