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「自分だけで避難できない…」災害時に要支援者は地域で守れ 登録勧める自治体 水害教訓に~九州に大雨

災害が起きた際に自力での避難が難しい高齢者や障害者を、地域で守ろうと、事前に情報を共有する取り組みが進められています。


◆もし床上まで水が入ってきたら……
竹中幸生さん(85歳)、チヅ子さん(84歳)が住む久留米市北野町は、これまで度々水害に襲われました。2021年8月の豪雨では竹中さんの自宅も床下浸水の被害に遭いました。

竹中チヅ子さん「(床下収納のドアを)開けて見てみたんです。ちょっと見たらこれくらい上がっていたものですから、『畳まで来るかな』と思ってどきどきしていました」

ハザードマップを見ると、竹中さんの自宅周辺は近くを流れる筑後川が氾濫すると3~5メートルの深さまで浸水する恐れがあります。竹中さんは息子さんと3人暮らし。息子さんが不在の際は、近くに住む娘さんが駆け付けることにしていますが、2人だけの時間に水害に襲われる可能性もあります。


◆老夫婦“万一”の時は「2階に避難するしか」
「(ハザードマップを見ながら)あなたのところはこれくらい浸かりますから早めに避難してください、避難所はここですよって。いよいよ玄関に水が上がってきた時に『わーどうしよう』ってなるよね。そうしたら、もう上に逃げるしかないよね。2階に」

竹中さん夫婦は2人だけで避難することは難しいため、万一の際は2階に避難することにしました。周囲に山や崖が無いので安全にも思えますが、いわゆる「垂直避難」はあくまでも最終手段。久留米市は、事前に安全な場所へ避難することを呼びかけています。

久留米市 佐野理防災対策課長「自宅では想定しないほどの浸水被害に見舞われたり、山手の方に行けば土砂災害は突然起こりますので、避難指示が出た場合には何もなくても命に関わりますので、避難をしていただきたい」


◆支援が必要な人の名簿を作成
避難をするにしても、高齢であったり体に障害があったりして、一人で、あるいは家族だけで避難することが難しい人もいます。こうした避難の際に支援が必要な人を「避難行動要支援者」と言い、自治体には、「避難行動要支援者名簿」を作成することが義務付けられています。
この名簿を使って、自治会や民生委員、消防や警察など、地域で情報を共有し、日ごろの声かけや避難の呼びかけ、安否確認に役立てるのです。


◆支援の仕方を前もって確認し
久留米市で6月に実施された、防災について考える集会には各地区の自治会長などが参加し、名簿をもとに要支援者の確認をしました。名簿には、住所や生年月日、電話番号などに加えて、歩行が困難であることや、持病のため、避難の際も電源が必要であることなど、支援のために必要な情報が記されています。
要支援者は「赤」のシール、支える側の地域の支援者は「緑」のシールなど色分けをしていき、避難場所までの安全なルートを記入していきます。

参加者「情報交換ができますね。『あの人はどうだ?』とか、知らないところも知れますから。床下浸水は経験していますので、それぞれがお互いに助け合いながらやれればいいなと」


◆いざという時「誰に頼ればいいか」
ご近所のどの人が、どんな支援が必要なのかわかっていれば、いち早く声を掛け合い、避難行動に移ることができます。また、支援が必要な人も、いざという時に誰に頼ればいいかわかっていれば、安心にもつながります。

久留米市 藤原誠二地域福祉課長「自分がそこに住んでいることを皆に知っていただき、何かあった時に声をかけていただく。どういう風に避難するか考えるきっかけになるものだと思っていますので、まずは名簿登録を積極的に働きかけていきたい」

「避難行動要支援者名簿」への登録は、「支援が必要だ」と考える人が自ら自治体の窓口に申請しなければなりません。自分の個人情報を周囲の人に知られたくないという人もいるかもしれませんが、「災害の際に身を守るためにも積極的に登録してほしい」と、久留米市は呼びかけています。

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