九州北部(山口県を含む)が梅雨明けから取り残されています。例年は梅雨前線の北上とともに梅雨明けするので、沖縄や奄美、九州南部に次いで梅雨明けするはずが、今年は一番北の東北地方も先に梅雨明け。全国で唯一「九州北部」が梅雨のままです(梅雨のない北海道を除く)。なぜこんなことに?気象予報士は「防災」上の理由で気象庁が慎重になっている可能性もあると解説します。
複数の要素を総合的に判断して、気象庁が「判断」する
実は、梅雨明けを決めるのは梅雨前線だけではありません。梅雨明けの条件は、主に(1)梅雨前線がかからなくなる、(2)夏の太平洋高気圧に覆われる(3)防災上の危険が無くなるの3つがあります。(1)については、すでに天気図上から梅雨前線はなくなっているので全国的に満たしていますが、ポイントは(2)(3)です。(2)の夏の高気圧はいわゆる太平洋高気圧です。エルニーニョ現象などの影響で今年は中心部は強いものの、北と西への張り出しが弱いのが特徴です。そのため、今年の梅雨明けはとても変則的でした。日本列島の中心、近畿・東海地方などで梅雨明けした後、やっと高気圧が西と北に張り出しを強め、四国や関東・東北地方で梅雨明けし、最後に九州が残りました。23日には九州南部が梅雨明けし、九州北部だけが取り残された形です。
梅雨明けは単に「大雨の時季終了」の宣言ではない
ではなぜ、九州南部が先に梅雨明けしたのか?九州北部の方が南部より上空の寒気や湿った空気で不安定な天気になりやすい予想だったというのも理由の一つです。ですがもう一つ、(3)防災上の意味合いもあると思われます。「梅雨明け」は、単に大雨の時季の終了を宣言するだけでなく、大雨災害に関する安心情報でもあるのです。今年も大雨災害に見舞われた九州北部では今も猛暑の中、復興活動が続いています。少しの雨でも二次災害のおそれがあるため、ほかの地方以上に梅雨明けの発表に慎重になっている可能性もあります。
龍山康朗=RKB気象予報士・防災士
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