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松尾潔のブルーノ・マーズ評「音楽キャリアがそのままトレンドに」

ハワイが生んだスーパースター、ブルーノ・マーズ。ロックからR&B、ヒップホップなどを網羅し、「まるで人間ジュークボックス」と評するのは音楽プロデューサーの松尾潔さんだ。キャリアがそのまま音楽のトレンドになっていく稀代のヒットメーカーが誕生した背景を、RKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で解説した。

ハワイが生んだスーパースター

1959年8月21日、それまで州に次ぐ「準州」という位置づけだったハワイが、州に昇格しました。つまり、ハワイがアメリカで50番目の州になって、きょう(8月21日)でちょうど64年です。ということで、このハワイが生んだ最大の音楽ヒーロー、ブルーノ・マーズの話をします。

ブルーノ・マーズは来年1月に大規模な来日公演を行うことで話題になっています。東京ドームで1月11日から21日までの間に、追加公演を含めて7回。そんなに開催するのにチケットが手に入らない。まさに名実ともに最も人気と集客力がある外タレじゃないでしょうか。

世界中でハワイブーム

ブルーノ・マーズはよく知られている通りハワイの出身です。父親はプエルトリコと東ヨーロッパ系ユダヤ人とのハーフで、ニューヨーク・ブルックリンからハワイに移住したミュージシャン。母親はフィリピン出身で、歌を歌ったり、ダンスをしたりしています。こういった彼の多様性に富んだ出自は極めて現代的だと言われています。

ところで、ハワイが州になった1959年、世界中でハワイブームが起きました。日本ではTBS系列で日曜朝『兼高かおる世界の旅』という紀行番組が始まったのが1959年。パンナム(パンアジア航空)がスポンサーでした。

この番組、海外旅行の自由化を見据えて始まりました。実際に日本政府が海外旅行、海外渡航の自由化をすすめたのは1964年です。日本から海外への扉がバーっと広がりましたが、「海外旅行は、まずハワイから」という感じが当時ありました。

同じころ、アメリカでも1961年に『ブルーハワイ』という映画がエルヴィス・プレスリー主演で作られました。「ハワイとプレスリー」という組み合わせで、ハワイのいいイメージが作られていきます。

子どものころは“ミニ・エルヴィス”

観光地にはエンターテイメントが必要です。そこで興行系、エンタメ系の人たちがたくさんハワイに集まりました。ブルーノ・マーズの両親もそうやってハワイに移り住んだ人たちなんです。

ブルーノ・マーズは子供の頃から、ハワイのホテルなどで催されるディナーショーで、「ミニ・エルヴィス」と呼ばれ、エルヴィス・プレスリーのものまね披露していました。これも実は、ハワイが59年に州に昇格したというところからの流れなんです。「ハワイといえばエルヴィス・プレスリー」という図式が、この頃から始まったと考えていいと思います。

キャリアがそのままトレンドに

プレスリーのコピーをするところから始まったブルーノ・マーズの音楽人生ですが、だんだんレゲエやR&B、ヒップホップの方に接近していって、それが彼の音楽性の魅力になっています。ロックンロールとR&B、ヒップホップを1人で全て持っている。まるで「人間ジュークボックス」みたいな存在です。

2010年にデビューアルバムを出した頃は、まだロック色も結構残っていましたが、やがてヒップホップがアメリカで音楽の覇権を握っていくのと同じように、彼の音楽もブラックフィーリングを増していきました。

ラッパーとの共演も多い彼は、R&Bやヒップホップといった今の時代の音楽の最先端も取り入れたうえで、そのルーツともいえるソウルミュージックに回帰していくんですね。

彼のこの音楽キャリアが、そのままアメリカで音楽のトレンドみたいになっています。その集大成ともいえるものが、アンダーソン・パークとユニットを組んで展開している「シルク・ソニック」です。世界的ヒットの「Leave The Door Open」を聴いていると、ジャンルや時代を超えた存在になったという印象です。

異端からメインストリームに

彼が2018年にグラミー賞7部門をかっさらったことがありましたね。あのとき会場に僕もいたんですが、全員がスタンディングして、惜しみなく喝采を送っていました。アジアで生まれ育った一人として、またずっとR&Bを聴いていた立場として、僕も感極まるようなとこがありました。

「アメリカの中といっても(辺境の)ハワイ」、「R&Bだけど(アフリカ系ではなく)アジア系」という、異端から始まってメインストリームになっていく。彼に限らず、時代を変えるのはいつも主流ではない人なのかな、ということまで感じさせます。我々の予備知識だとか偏見とかを破ってくれるような存在。それがブルーノ・マーズだということです。

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