ハンドソープ 容器に詰め替えができない医療現場の事情 「もったいないけど仕方がない」のか
待ったなしの温暖化対策が求められる今、リサイクルの機運が年々高まっています。しかし、高度な衛生環境を求められる医療の現場では、その特性からリサイクルが難しい現状があります。ハンドソープの容器を1か月に350個廃棄していた福岡県内の中規模病院が、「捨てない」実験を始めました。
新型コロナ禍に使用量が増えたハンドソープ
感染対策として欠かせないハンドソープ。福岡県北九州市にある八幡病院には、スタッフが出入りする場所や休憩室、病室などにハンドソープが置かれています。特によく使うのが看護師です。
看護師「一回一回処置ごとに手を洗っているので、多い日には、30~40回ぐらい使いますね。新型コロナが流行してから洗う習慣はもっと増えました」
1か月に350個を捨てている
病床数350の八幡病院で1か月間に使うハンドソープの数は350個。家庭のように中身を詰め替えることができず、すべて捨ててしまわざるを得ないといいます。
八幡病院感染管理担当 中川祐子担当係長
「洗って乾燥させずにそのまま詰めかえてしまうと中で菌が繁殖することもあるので、病院ではそういうリスクをつくりたくない。捨てる際に『ああもったいないな』という気持ちは確かにあります」
「もったいない」を解消する実証実験
長年感じてきた『もったいない』をなんとか解消する方法はないか。病院は、ハンドソープを製造する企業、そしてリサイクルを手がける企業を協定を結び、使用済みの容器を回収して新しい容器に作り直す実証実験に参加することにしました。
病院で使い終わった容器は回収され佐賀県神埼市にある工場に運ばれます。洗浄し、細かく砕いた後プラスチックの原料となるペレットにします。この工場では、容器の成形からラベルの印刷まで行う予定で、ハンドソープを詰めれば商品が完成します。容器回収から再び商品になるまでにかかる時間は約1か月です。
食品に使用できるレベルまで洗浄
リサイクルをてがける BEAUTYCLE
杉山大祐社長
「高温のアルカリ水で洗浄するという工程があります。食品に使っても大丈夫な品質レベルまできれいにした上で、またその原料を使ってもう一度成形し直すという形です」
リサイクルの過程を見学した八幡病院の岡本好司院長は、「感染リスクを考えると、医療の現場というのは、リサイクルがなかなかしづらいんです。実際にリサイクルの現場をみて、これなら衛生面で安心できると感じました。また生まれ変わって使えることは大事だと考えていますので、こうした取り組みが広がってほしいと思います」
将来は他の病院にも広げたい
感染対策から廃棄せざるを得なかったプラスチック容器を再利用する取り組み。ハンドソープを作る「シャボン玉石けん」とボトルをリサイクルする「BEAUTYCLE」は、1年間実証実験を行ったあと、他の病院とも連携して進めていきたいと話しています。
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この記事を書いたひと
浅上旺太郎
山口県出身。九州大学法学部卒。2015年入社。本社報道部、現在の情報番組部を経て2022年6月から北九州報道制作部。福岡県警・北九州市政などを担当。最も印象に残る取材は2017年7月の九州北部豪雨。