所有者の「思い入れ」に正面から向き合い“活用”を模索
持ち主にとってもリスク。周辺にも脅威。空き屋を減らさなければいけないことは自明だ。資源として活用しようという動きもある。古民家や団地の再生などに取り組むH&Abrothersの半田満さんは今、木造住宅を手がけている。持ち主は関東に住んでおり、草も生え放題だ。築40年近くたち、直近の約10年は空き家だった。しかし、思いのほか状態がよい部屋も多く、ほとんどはそのまま使えるという。総合大学から徒歩5分という立地にも目を付け、学生のシェアハウスにリノベーションすることを決めた。
半田さん「学生同士や、学生と社会人のつながりを作れたらいい。所有者はずっと住んでいたので、思い入れがあってすぐには壊したくない。なんとか活用できる提案をする。見に来た学生には『校長室みたい』と好評でした。ある程度壁を作って、仕上げは入居者と一緒にDIYで好きな色にする。空き家は増えてもまだまだ使える家は多いと思う。時間がたつと柱が腐り、シロアリが出て使えなくなる」
家賃は共益費込みで約4万5000円。水道・光熱費とWi-Fiは無料で使えるようにする。1室は居住者以外も会費を払えば自由に使える部屋にするという。
“売るに忍びない問題”マッチング不足が課題に
誰もが住み慣れた家には特別な感情を抱くようになる。家族や大切な人と過ごした時間など、苦楽はあるにせよ家とともに刻まれた記憶が「思い入れ」となる。空き家無料相談会にいた高齢の女性も、親から相続した戸建て住宅をこの先どのように維持するか悩んでいた。「思い入れ」が判断を難しくする。
「売ることは今考えられていない?」「親も住んでいたので・・・」
売るに忍びなく賃貸に出しているものの、長い間、借り手はいない。司法書士からは「お母さんが許せる範囲で、千円しか下げられないのであれば千円でもいい」と家賃の値下げを提案された。
高齢女性「やぶれかぶれって言ったらおかしいけど、子供もいないから、誰でもいいから見てもらえたらと思っています」
福岡県建築住宅センターの中島宏典さんは、空き家がさらに増えることに危機感を募らせている。
「高齢者の1人暮らしが増えているので、その方が亡くなればどっと空き家が増えると思っています。他の方に使ってもらうか処分を早めに決断して頂くのが一番です」
各地で増え続ける空き家。2030年には全国で2000万軒になると推計されている。空き家の管理に悩む所有者と再活用する動きをどのように結びつけていくかが課題だ。
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この記事を書いたひと
野島裕輝
1990年生まれ 北海道出身。NHK仙台放送局などで約7年間記者として事件・事故や行政、東日本大震災などの取材を担当。その後、家族の事情で福岡に移住し、福岡県庁に転職。今年2月からRKBに入社。