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福岡市郊外に残る正月のハロウィン「祝うたぁ」でお菓子もらう子供

新年最初の日曜日、福岡市西区今津では毎年、法被姿の若衆たちが担いだ神輿が町内をまわる「十一日祭り」が開かれる。子供たちは山車を引いて町内を練り歩き、家々でお菓子のふるまいを受ける。7キロに渡って子供たちに同行したRKB毎日放送の神戸金史解説委員長が、16日に出演したRKBラジオ『田畑竜介Grooooow Up』で古くから伝わる新春の行事を伝えた。

福岡市指定の無形民俗文化財

福岡市西区今津で、まるでハロウィーンのような「十一日祭り」が開かれています。毎年1月の成人の日前後に行われていて、町内ごとに青年たちが小さな神輿を担いで町内を練り歩き、家々を訪れる無礼講の祭りです。浜辺で清めた海の砂「お潮井」を採って、「祝うたー、祝うたー」と言って配っていきます。子供たちは、博多人形を飾り付けた山車を曳き、町を練り歩きます。

この山車を曳いて歩く

男性:みんな、家に行く時は「祝うおうたー」やろ、分かっとう? 1人で行かんように。必ず2人以上で。

子供たち:祝うたー! 祝うたー! 祝うたー!

女性:はい、どうぞ。

子供:ありがとうございました!

子供:おいしいです!

神戸:楽しそうですね、みんな。

女性:そうですね、「今津のハロウィーン」と呼ばれています、ほかの地域から。

神戸:今津のハロウィーン!?

女性:はい、個々の地域でしかしていないので。今津でも。

♪矢櫓に矢射かけて、的矢の矢!♪

「今津のハロウィーン」に参加しているのは小学生で、数十人がそれぞれに「祝うた-」と言いながら家々に飛び込んで、町中を走り回っています。「今津」は、今津湾に面した農村地区で、古い地域です。祭りは福岡市指定の無形民俗文化財になっています。

今津は農村地区

神戸:けっこう寒いですねー。

母親:本当ですね、歌を歌いながら歩いたら、けっこうあったまると思うんですけど。

神戸:あ、歌を歌うんですか?

山車曳きの歌「若い年のならわしごとに 山車出して 社前に奉載だ 奉載だに出る子 矢櫓に矢射かけて 的矢の矢」

神戸:どういう意味なんですか?

中村:これは、ちゃんと意味があるんです。順番を決めるのに、矢を射止めて、4町内で決めたんです。矢が一番いいところに当たった町内が先頭で行く。今はない。1台だから。そういう歌です。

「若い年のならわしごとに 山車出して 社前に奉載だ」「奉戴」は、うやうやしく「押し戴く」という意味ですね。「社前に奉載だ」。その「奉戴だ」に出る子が、「矢櫓に矢射かけて 的矢の矢!」と言っている伝統的な囃子言葉です。

この言葉を、おじいちゃんたちも、おばあちゃんたちも、子供の頃に歌いながらお菓子をもらいに町内を巡り歩いたそうです。

古い町並みを歩く

最後にお話ししていただいたのは、「今津人形芝居保存会」恵比須座の代表、中村隆暢さんです。今津の人形芝居も、福岡県の無形民俗文化財。子供会は、人形芝居の稽古も受け、古い町に残る伝統芸能を引き継いでいこうとしています。

子供たちを歓迎する笹が軒々に

家の門前に、色紙で飾り付けられた七夕のような笹が飾られています。この笹が、お菓子のサインなんです。

お菓子の在処を示す笹

父親:ほら、向こうにも笹があるけんねー。

子供:次、こっち!

神戸:笹があるお宅には入っていいんですか?

父親:そうです、笹がある家には「祝うたー」と言って入っていって、お菓子をもらう。大人たちは振る舞いがあったり、お酒飲んだりとか。海で砂を取ってきて、若衆たちは各家に配って回る。子供たちはお菓子ばっかりですが。

神輿の若衆:わっしょい、わっしょい、……祝う-たー!

神戸:こうやって家々を回るんですか。

迎える男性:自分の町内を一軒一軒回ります。

神戸:お正月の恒例行事なんですね。

迎える男性:恒例行事です。4年ぶり。コロナが明けて、久しぶりです。

神戸:毎年お祭りをする時は、お菓子と、男衆用のあてを用意するのですか?

迎える男性:そうです。子供さんがお菓子で。うち、店をしているから、いろいろいっぱい。お寿司を取ったりとか。

御神酒を注がれる神戸:じゃあ、縁起物ということでいただきます。おめでとうございます。あ、沁みる!

もてなしを用意した家

男衆はこんな感じで、無礼講のお祭りをしながら、神輿を担いで。お酒を浴びたり、浴びせかけられたり。だんだんヘロヘロになってきていましたけど。

増えている子供たち

子供たちは本当に元気で、もう走り回って笹の家を見つけると、飛び込んでいました。一軒家が多いからこそ、こういうお祭りが残っているのかなと思います。もらったお菓子は袋に入れて山車に載せ、歌を歌って曳きます。「子供も減ってきてさぞ大変だろう」と思ったら、今津地域は子供は増えてきているというのです。ぐるっと回って、ゴールに近づきます。

子供たち:「……的矢の矢!」

男性:お疲れさんでしたー!

女性:最後まで引っ張ってー!

神戸:けっこう歩きますもんね。

男性:距離がありますよ。7キロくらい。

神戸:でも途中からだいぶ飲みすぎて、ペースが変わっていましたね。

大人:今年、寒かったですよ。

女性:はい、みんな朝からお疲れさまでした。たくさんお菓子をもらって。大切に食べてください。みんなで元気にごあいさつしてください。

子供:ありがとうございました-!

大人:来年も頑張りますか?

子供:はーい!

神戸:きょうはどうやった?

子供:楽しかった。

神戸:すごい量だね、このお菓子。あ、(お父さんに)1個取られた。

子供:いいよ、食べていいよ。

神戸:これだけあればね。1個くらいあげるよね。これどうするの? 食べられないよ。

子供:食べる。

神戸:食べる?! 全部? 持つのにやっとな量なのに?

楽しかったですよ。昔から残っている伝統的なこと、私は大好きなんです。子供たちが歌いながら歩いているし、走り回っているし。少子化と言われて子供の顔が見えなくなってきている地域が増えていますが、こういうことが残っている地域は「いいなー」といつも思います。唄がすっかり耳に残りました。

「奉載だに出る子 矢櫓に矢射かけて 的矢の矢」

いろいろないいお祭りがあったら、私は覗きに行きたいのでご連絡ください。今津のみなさん、ありがとうございました。

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この記事を書いたひと

神戸金史

報道局解説委員長

1967年、群馬県生まれ。毎日新聞に入社直後、雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。東京報道部時代に「やまゆり園」障害者殺傷事件を取材してラジオドキュメンタリー『SCRATCH 差別と平成』やテレビ『イントレランスの時代』を制作した。現在、報道局で解説委員長。