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【高校ラグビー】東福岡、花園連覇逃すも優勝と紙一重の準優勝!少年ラガーの目を引き付けたプレーを分析

第103回全国高校ラグビー大会は、神奈川・桐蔭学園の3大会ぶりの優勝、連覇を目論んだ東福岡の準優勝で幕を閉じた。お互い1トライずつを取り合い、スコアは8-5。決勝戦でともに得点が一桁に終わったのは、67回大会の秋田工9-4神奈川・相模台工以来のこと。当時はトライによる得点が4点だった時代だ。お互い鍛え抜かれたディフェンス力のぶつかり合いは見事の一言。ロースコアながら見応えたっぷりの好試合だった―。


◆前半はパスがうまく繋がらずトライ奪われる
東福岡が花園の決勝戦で敗れたのは、86回大会以来。前回までの7度の優勝は、87回大会以降で出場した決勝戦7試合を6勝1分けで成し遂げたもの。すっかり全国のラグビーファンにモスグリーンのジャージーの強さがお馴染みとなった。振り返れば、東福岡黄金時代到来を告げたのは87回大会での花園初制覇。強い東福岡を一から作り上げた谷崎重幸前監督。途中、川内鉄心監督代行の落ち着きのあるラグビーがアレンジされ、12シーズンを終えようとしている藤田雄一郎現監督が、特にディフェンスを強化するなどスケールアップさせて今日に至る。今回の桐蔭学園との決勝戦。東福岡サイドから見れば、前半に奪われたトライは、ハンドリングエラーの少ないチームには珍しく、パスがうまく繋がらなかったところからのもので、悔いが残るかもしれない。相手ディフェンスの圧力に誘発されたとも言える。


◆目立つ県外出身者「ヒガシに憧れていた」
逆に後半に返したトライは、得意のアタックでボールが面白いように幾人もの選手の手に渡る、これぞ東福岡という絵に描いたようなトライ。スタンドからは、ファンの何とも言えない感嘆の声が漏れ、明らかに観衆を魅了していた。しかし、黄金期真っ只中の東福岡は、年毎にメンバーは移ろいながらも毎度そんなシーンをどこかで見せてくれている。今回のメンバーをよく見ると、県外出身者がかなりの割合。フッカー田中とフランカー三木は熊本、ナンバー8で主将の高比良は長崎、ウイング西浦は兵庫、深田衣咲は滋賀、センター村上は岐阜、フルバック隅田に至ってはラグビー王国の大阪だ。加えて控えのメンバーにも県外出身者は多い。選手たちに聞いてみると一様にこのような答えが返ってくる。「ヒガシのラグビーに子供の頃から憧れていた」中には少年時代に東福岡の優勝を花園で見ていたという選手も。また、ある選手からは、「東福岡の選手はトライを決めてもあまり派手に喜ばない。それがカッコイイと思った」強い東福岡のラグビー。その攻撃面は極めてシンプルで、自陣からでも確実なパスと速いランでトライまで持っていく。花園で初優勝したのが16年前。この間、東福岡の試合を目の当たりにした全国の数多くの少年ラガーが、東福岡の戦いぶりに魅了され、やがて東福岡ラグビー部の門をたたく。今、まさにそんな時代に突入しているのだ。この連鎖こそが、強さを揺るぎないものにしているとも言える。


◆高校ラグビーを超越?見ていてワクワクする戦いぶり
今回の決勝は、確かに桐蔭学園の分厚い壁の前にあと一歩及ばなかったにせよ、内容は相手に勝るとも劣らないもので、らしさは発揮できていた。決勝戦の東福岡のプレー一つ一つが、全国の少年ラガーの目を引き付け、心に刻まれたに違いない。そのような少年たちの中から、何人かが数年後に福岡行きを志すことになる。今回は準優勝に終わったが、その試合内容に大きな意味があったのだ。また、接戦が多かった今大会は、東福岡のみならず、九州・沖縄勢が例年以上に存在感を示すことができた。佐賀工は準優勝した80回大会以来23大会ぶりのベスト4。Aシードとしての責任を果たした。準決勝ではライバル東福岡にこそ及ばなかったが、井上・服部のハーフバックスが再三見せた高精度で意図を感じさせるキックは、高校ラグビーのレベルを遥かに超越したプレーで、見ていてワクワクする戦いぶりだった。1回戦の山梨学院戦で、追いつ追われつの6度の逆転劇を経て熱戦を制した長崎南山。長崎大会決勝戦は、後半に14点差を追いついて抽選で花園出場を決めるなど、リードされている状態でのゲームマネジメントに優れていた。大分東明は4回目の出場にして初のシード。3回戦ではディフェンス力の高い茨城・茗溪学園と接戦を演じ、明らかにステップアップした感がある。3回戦で東福岡にはノートライで屈したものの終盤見せ場を作り、2回戦の徳島・城東戦では落ち着いた試合運びを見せ、成長を伺わせた沖縄・名護など、九州・沖縄勢の健闘は印象に残った。すでに新チームによる大会が始まっている地域もある。次年度の九州・沖縄の戦力地図が、また新たに形作られていく。楽しみは尽きない。

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