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風車の周りを飛行するドローンの正体 九大の「風を読む技術」が大規模洋上風力発電所の建設を後押し

脱炭素社会実現の切り札とされる「洋上風力発電所」。 四方を海に囲まれた日本では、福岡県や佐賀県などで大規模な洋上風力発電所の建設が検討されていますが、課題となっているのが「風車ウエイク」と呼ばれる現象です。九州大学でその実態に迫る研究が進んでいます。

ドローンの特性が実態を解明する

 

九州大学 内田孝紀教授
「ドローンは、4つのローターの回転数を調整しながら少しずつ角度を変えて留まるんですよね。留まっているということは、それなりにその風を受けて留まっているわけですから、風の強さに変換できるということになります。だからこのドローンを使って風を測れるのではないか、という発想ですよね」

 

 

ドローンには風が変化してもその場所に留まろうとする機能があります。内田教授たちは、九州大学にある大型実験施設で、風の強さによってドローンの羽根の回転数と向きがどう変化するか求め、そのデータをもとに風速を逆算する手法を確立しました。さらに内田教授が開発した風を再現できる計算モデルと組み合わせることで風車ウエイクの実態に迫っていくのです。

九州大学 内田孝紀教授研究室
「今この響灘で検証していますが、ここで得られた知見、シミュレーションの方法、条件設定が確立されていくと、別の場所でのシミュレーションの精度も上がっていきます」

海外の研究者も注目する「風車ウエイク」

 

風車ウエイクの問題は、世界的に関心が高まっています。去年12月、九州大学で開かれた洋上風力に関するシンポジウムでも、海外の研究者が言及しました。

 

 

スイス連邦工科大学ローザンヌ校フェルナンド教授
「ウエイクは非常に長い距離まで続きます。これは風力発電所にとって非常に重要です。なぜなら周囲に別の風車が設置されるからです」

日本の風力発電の現状と課題については。

 

 

モンクトン大学ギャニオン教授
「日本には風力資源があります。しかし、設定した目標を達成するためにはできるだけ早く始める必要があります」

脱炭素社会の実現への追い風なるか

 

一刻も早い稼働が求められる大規模な洋上風力発電。大型風車は、ほとんどが海外企業の製品で既に市場を独占しています。九州大学は独自で高効率の国産中型風車の開発を進めています。風を読む技術の進歩が、脱炭素社会の実現への追い風となるのか、注目が高まっています。

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この記事を書いたひと

今林隆史

1976年生まれ 福岡市出身 政治・経済などのニュース取材に加え、ドキュメンタリー番組の制作にも携わる。第58次南極観測隊に同行。JNNソウル特派員として韓国の大統領選挙(2022)などを取材。気象予報士・潜水士の資格を有し、環境問題や防災、水中考古学などをライフワークとして取材する。 番組「黒い樹氷~自然からの警告~」で科学技術映像祭 内閣総理大臣賞(2009)、「甦る元寇の船~神風の正体に迫る~」同映像祭 文部科学大臣賞(2013)など受賞。