先日、小学6年生の娘の運動会があった。小学校最後の運動会。胸に迫るものがあった。
ここ数年、運動会は開催方法が多様化している。熱中症対策、教員児童の負担軽減などの理由で、午前中で終わる学校もある。娘の学校もそうだった。早朝に起きて弁当を準備する必要がなくなったのにはほっとしたが、ふと自分の子供時代を振り返ると、運動会の一番の思い出は昼ご飯の時間だった。隣の市に住む祖母が、毎年必ずサクランボを手に駆けつけてくれた。祖母とテントの中で「おいしいね」と言い合って笑いながら食べたサクランボと母の弁当は、世界一おいしかった。
今でもサクランボを見ると、あの時の祖母の笑顔が浮かぶ。友達とおかずを交換したり、おにぎりを何個食べたと比べあったり。娘には今年その時間がなかったなと思うと少し寂しい気もした。しかし、時代の変化とともに変わることはある。変えるべきこともある。開催方法は変わっても、仲間を必死に応援する子、かけっこで転んでも諦めないでゴールを目指す子、その子にそっと駆け寄る子、輝く表情で踊る子。そんな姿を見ていると、時代を超えても変わることのない大切なものがそこにはあると、実感した。
娘は30年後、この日のどのシーンを思い出すのだろうか。
6月1日(土)毎日新聞掲載
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