PageTopButton

サメ肌でつかむ“究極のピンセット”

外科手術用のピンセットを鑷子(せっし)といいます。医師が執刀する際、医師の手となり基本でもあり最も重要でもある医療器具です。機能として求められるのは臓器を傷つけないこと、そしてしっかりつかむこと。相反する機能が求められる鑷子は普段我々がふれるピンセットとは全く次元が違う高度な工業製品でもあります。

 

その鑷子の中で究極の機能を持ったものが長崎県で作られたことをご存じでしょうか。しかもこの開発、カギとなった生き物がいました。それはサメ。「究極のピンセット」作成に中心となって取り組んだのは外科医でもある長崎大学の永安武学長(62)です。

 

ポイントは先端に施す加工でした。高い摩擦があり使いやすい模様とは?永安さんが目を付けたのは特殊な性質をもつサメ肌でした。サメ肌は細かい歯のようなうろこでおおわれていてある方向には高い摩擦力を生み出す一方その反対向きにはほとんど摩擦がないことで知られています。

 

つまりしっかりつかむ、優しく滑らせることが可能なのです。そして、そのサメ肌の複雑な表面形状を金属面に刻むには長崎で展開するモノづくりの技術も決め手となっていました。究極のピンセットサメ肌鑷子。その開発物語です。

団体名:長崎大学
住 所:〒852-8521 長崎市文教町1-14
電 話:広報戦略本部 095-819-2868
ホームページ:https://www.nagasaki-u.ac.jp/

 

製造会社:KTX株式会社
住 所:〒483-8111 愛知県江南市安良町地蔵51番地
電 話:0587-95-5231
ホームページ:https://www.ktx.co.jp/company/

営業所:長崎平戸ラボラトリーズ
住 所:〒859-4811 平戸市田平町古梶免11番地11
電 話:0950-29-9400
 

販売会社:株式会社アステム
【福岡本社】
住 所:〒812-0007 福岡市博多区東比恵3-1-2 東比恵ビジネスセンター10F
ホームページ:https://www.astemf.jp/

取材後記

2024年初め、なじみの寿司店で大将から「こげんと知っとるね?」と見せられたのが“サメ肌ピンセット”の簡易型だった。製作者は長崎大学の永安武学長。作ったのはKTX長崎平戸ラボラトリーズという事業所。長崎発の逸品として取材者としての針が一気に触れたのを覚えている。

 

長崎大学とKTX双方に取材交渉をはじめて感じたことは時期的にも地域的にもかなりの偶然が重なって製作が可能になったということだった。長崎大学で進めていた医学部と工学部の連携プロジェクト。「サメ肌」ということがば出たのはその中のちょっとした提案の中だったそうだ。

 

そして製作者となるKTXも平戸の事業所を設置したばかりだった。何かがずれてたら形になっていなかったかもしれない。二回ほど現物をお借りして触りまくっていたが、何より驚くのはそのグリップ力と道具としてのバランスの良さ。残念なのは手術用医療器具なので一般にはあまり触れることができないことであること。しかし、長崎発の逸品としてステイタスの高さにも惚れ込めるものでした。

 

(NBC長崎放送/長 征爾)

この記事はいかがでしたか?
リアクションで支援しよう