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SOSと位置情報を同時送信~海難から漁師を守れ 福岡のベンチャーが救命装置を開発

福岡市のベンチャー企業が開発したSOS救助装置が、漁業関係者の間で支持されている。首からぶらさげたボタンを押すだけで、助けが必要なことがGPSの位置情報と一緒に送信される仕組み。場所が分かるため救助までの時間が短縮でき、海難事故による犠牲者が減ることが期待されている。
福岡市中央区の伊崎漁港では、毎日約30隻の船が博多湾へ漁に出る。漁師になって今年で14年目となる森穣司さんを訪ねた。北海道・知床半島の観光船事故を受けて、改めて海の恐ろしさを感じたという。
漁師・森穣司さん「どんだけライフジャケット着ていても、携帯電話を持っていても、ああいう状況だと人間パニックになり落ち着いて行動できるかが生死の境になると思う」
森さんが漁に出る際、必ず首から下げているものがある。救命装置の「ヨビモリ」だ。海に転落したり船が遭難したりするなどの緊急事態にボタンを押すと、近くの漁師や家族にSOSが発信され遭難場所を知らせる。口コミで拡がり、伊崎漁港の漁師は全員この「ヨビモリ」を身につけている。
伊崎漁港の漁師「何かあった時にまわりの仲間が助けに来てくれる安心感がある。自分だけでなく周りも身につけていたら何かあった時に助けに迎える」
「ヨビモリ」を開発したのは、福岡市のベンチャー企業だ。代表を務める千葉佳祐さんは、救助時間を大幅に短縮する効果があると話す。使い方はシンプルに設計されていた。

開発企業・千葉佳祐さん「トラブルが発生した時に真ん中のボタンを3秒押します。すると点滅してSOSを発信するモードに切り替わります」

SOSモードに移行してわずか1分後には、スマホの専用アプリに登録している仲間の漁師や家族に大きな音を伴う通知とSOSの発信元を示す位置情報が表示された。SOSの近くにいた漁師はすぐに現場へ向かい、地上で連絡を受けた人も速やかに海上保安庁などに通報できる。命を救う確率は格段に上がるという。
「ヨビモリ」は漁師の協力のもと、海難事故に備えて開発された。そこには千葉さんの強い思いが込められていた。

開発企業・千葉佳祐さん「自分が北海道の紋別市出身でおじいちゃんが羅臼とか知床の方で漁師をやっているときに海難事故で亡くなって遺体があがってない」
千葉さんの祖父はイカ漁の最中に連絡がとれなくなり、海で亡くなったとされる。事故の原因は分からず遺体も見つらないままだ。残された遺族の悲しみを知る千葉さんは、海の死亡事故を少しでも減らすために「ヨビモリ」を活用して欲しいと考えている。

開発企業・千葉佳祐さん「海に行く方全員が普遍的に抱えるリスクに備え「ヨビモリ」を持ってもらう、それがあたリ前に、シートベルトみたいな感覚になるようにやっていきたい」
知床半島沖の観光船事故は、乗客が散り散りとなり捜索が難航した。千葉さんは言う。船だけでなく個人にも紐付いたSOS発信装置があれば結果は違ったかもしれないと。

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