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「電気・ガス代支援は嬉しいけれど…」期間は?財源は?気になる疑問

値上げの秋――食料品から何から値上げ続きで、特に電気代・ガス代はどこまで上がるの? という状況だ。政府はこの対策として、来年1月から電気・ガス料金の負担軽減策を決定した。家計が助かるのは確かだが、元サンデー毎日編集長・潟永秀一郎さんは疑問も感じているという。RKBラジオ『立川生志 金サイト』でコメントした。  

補助はいつまでもズルズルと…

最大の疑問はズバリ「出口が見えない」ことです。マイナポイントについて「もらえるものは、きっちりもらいましょう」と言った私が言うのは、天ツバなんですが(笑)、ポイントは1回限りなのに対して、支援は来年1月から9月までです。その間に、原油価格が下がったり、経済が持ち直したりしていればいいですが、そうじゃなかったとき、スッパリ切れるのか。ズルズル続いた時に財政はどうなるのか。先が見通せないんです。

 

改めて、支援策の中身からおさらいします。

 

支援金は各家庭ではなく、供給元の電力・ガス会社に対して支払われます。電気代は、家庭向けで1キロワット時あたり7円、都市ガスは1立方メートルあたり30円で、それぞれ標準的な家庭の場合、電気代は月2,800円、ガス代は900円程度安くなります。

 

これに、今年1月から始まったガソリンや灯油代などの補助も続くので、「1世帯当たり9か月間でおよそ4万5,000円の負担軽減になる」と、西村経済産業大臣は説明しています。

 

これ、確かに家計は助かるんですよ。助かるんですが、私がモヤモヤしていることを説明しますね。

 

まず、最初に言った「期間」です。ガソリン代の補助は、今年1月に始まったときは「3月末まで」の期間限定でした。ところが、ウクライナ危機などでその後も原油高は改善せず、延長に延長を重ねて来年9月まで、です。さすがに補助額は来年1月から1リットル当たり35円から25円に引き下げられますが、3か月のはずが1年半ですよ。補助というのは、残念ながら始めるとそれが当たり前になって、感謝どころか、やめると反発されかねません。特に支持率が低い政権だと、反発を恐れてズルズルになりかねない面があります。電気・ガス代の補助も来年9月で終われるのか、当の経産省からも不安視する声があります。

使えば使うほど補助額が大きい―環境問題的にもおかしい

次に、不公平感です。

 

今回の電気・ガス・燃料費への支援は、使った分に対して支払われます。だから、生活が厳しくて、なるべく電気もガスも使わないようにしているご家庭より、収入があるからそんなことを気にせず、冷暖房も風呂のお湯もバンバン使う家庭のほうが、補助額としては大きくなります。ましてガソリン代は、車を持っていない人には関係ないし、軽自動車より、ガソリンを食う大きな外車を乗り回している人のほうが恩恵は大きくなります。

 

これ、電気・ガスも含めて、環境問題的にもおかしいでしょう。政府は11月1日、冬場の電力需給がひっ迫する恐れがあるとして、国民に節電を呼びかけましたが、だったら節電が進むような補助・支援にすべきじゃないか、とも思うわけです。

次世代へのツケは増える一方

最後に、これが一番大きいんですが、財源の問題です。

 

ガソリン代の補助、今年だけで予算は3兆円を超えます。そして今回発表された、来年1月からの電気・ガス代、燃料費の補助がおよそ6兆円。その財源は基本的に国債、借金です。

 

1兆、2兆って簡単に言いますが、「豆腐じゃない」って誰か言ってましたよね。でもほんと、笑い事じゃないです。でも、政治は与野党問わず、どんどんポピュリズム、大衆迎合というか人気取りに走っている気がします。とにかく「今」を乗り切る政治。結果が、止まらない少子化や、新しい産業が生まれず衰退していく経済じゃないか、と思ってしまいます。

 

言い訳めきますが、マイナポイントにはまだ「行政のデジタル化」という大目的があります。でも、補助や給付のバラマキは、一時的に家計は助かっても、次の世代にツケを回しているという面は、否定できません。ある官僚OBはそれをこんなふうに例えました。

食堂で1,000円のランチを食べて、レジで700円払って出ていこうとする客に、店員が「お客さん、足りませんよ」と言うと、「残りは次の客から取ってくれ」と出ていくようなもんだ――。
国の今年度予算は総額107兆円ですが、その財源のおよそ3割、30兆円は国債、借金だからです。

 

その、国債発行残高はついに今年、1,000兆円を超えました。これを国民総生産(GDP)で割った比率は250%を超え、先進国で断トツの1位です。先日、イギリスではトラス首相が就任からわずか44日で辞任表明に追い込まれましたよね。首相が打ち出した大幅減税策が「財政悪化を招く」と金融市場を混乱させたためですが、そのイギリスの国債発行残高は、対GDP比でおよそ87%。日本の3分の1です。単純には比較できませんが、どちらの国が財政的にも政治的にも健全かと、考えてしまいます。

 

ここまで、電気ガス、燃料費補助について私が思う疑問――ご理解いただけましたでしょうか。繰り返しになりますが、日本の国債発行残高は1,000兆円を超えて、さらに増える見込みです。その背景には、急速な少子高齢化に伴う、社会保障費の増加があります。

 

実は30年前と今年度の一般会計を比べると、新型コロナの対策費5兆円があるのを除けば、社会保障費以外はほとんど増えていません。ただ、その社会保障費が11兆円から36兆円へ、実に3倍以上に増えたために国債の返済費用も増えて、予算が膨らんでいるんです。

 

そしてこのままの状況が続けば、高齢者数がピークに達する20年後には、社会保障費はさらに今の5倍以上、190兆円に達すると、国は試算しています。放っておけば財政が破綻するのは誰の目にも明らかなのに、コロナ禍でさまざまな補助や給付が始まって以降、与野党こぞって「もっと出せ」「もっと配れ」というのはどうなんでしょう。

 

ある財務省OBは「政治が必要だと判断したことに予算を付けるのは当然。ただ、その分の財源はほかを削ってでも確保するのが筋だ。家計でも、増えた支出を借金で賄い続けるなんてありえないでしょう」と言います。私もそう思いますし、耳当たりのいいことばかり言う政治家でなく、本当にこの国の未来を考えているのは誰なのか――という視点で政治を見ようと、今回の経済対策を見て、改めて考えました。

 

私もあと数年で高齢者の仲間入りですが、孫たちの世代に後で「じいちゃんたちはあの時、何を考えていたんだ」と、言われたくはないですもんね。

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