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「撤回された“圧力発言”よりグルメサイト通じた密告の方が問題大きい」明治大・飯田泰之准教授が指摘

新型コロナ対策をめぐって、西村経済再生担当大臣が先週発表した飲食店への“圧力発言”は、今週になって政府が相次いで撤回する事態になりました。西村大臣には閣内や与党からも批判が続出。現場には怒りと困惑が広がっています。 しかし、政府の「間接的な監視」で問題となっているのはこれだけではありません。7月13日にRKBラジオの朝の情報番組『櫻井浩二インサイト』に出演した、明治大学准教授・飯田泰之さんは「グルメサイトの口コミ」を挙げています。 櫻井浩二アナウンサー(以下、櫻井):西村大臣の発言は撤回されましたけれども、お酒の提供の自粛、それから営業時間短縮に応じない飲食店は、取引がある金融機関経由で働きかける、という発言がありまして、金融業界はもちろん、国民からも反発の声が上がりました。 飯田泰之さん(以下、飯田):はい。非常に問題の大きい措置だと思います。金融機関を通じた働きかけは撤回されましたが、もうひとつ、酒類の卸売業者に対して、飲食店にお酒を卸さないように要請した(のちに撤回)。これらの措置は法的根拠がなく、これに応じなかった場合のペナルティもないと。つまり何なのかよくわからない要請なんですよね。 飯田:しかし、飲食店にとって問題なのは、むしろ、その前に提案されている「グルメサイト」を通じた、通告・密告の奨励の方なんです。もともとこの各種大手グルメサイトは一昨年来、公正取引委員会から、その表示等がちゃんと正当なものであるのかについて調査等を受けていて、(口コミは)大いに参考にはなる一方で、そのレーティングとか、一部のクレームが大きくクローズアップされてしまう、といった問題も指摘されています。こういったネットでのクレームというのは、もともとコロナ以前から、飲食店の経営者にとって非常に大きな悩みであったり、心理的負担だったんですね。それを政府側でむしろ助長していくということになる。今、飲食店の経営環境は非常に厳しい中で、コロナ対策のガイドラインを100%完全に守っていられるかどうかはわかりません。例えば「1m離れていなければならない」と言われても、客がちょっとイスをずらして1m以内になっているかも知れない。それをたまたま見咎めた、その店舗にあまり良い印象を持っていない客が通告するかもしれません。 櫻井:あと、ライバル店がわざと(評価を)落とそうと思って、誹謗中傷のコメントを載せる可能性だってないとも言えないですよね。 飯田:もちろん政府側は「そういった部分は精査します」というかもしれないんですが、「うちの店が(誹謗中傷の)標的にされるかもしれない」という(心理的)負担は残ります。実際、緊急事態宣言下の東京には、店を開けても全然儲かっていない飲食店が多いです。ただ「来てくれる客がいるから」とか「ずっと店を開けないっていうのも落ち着かない」といった、ある意味、気持ちの部分で続けている店が多いんですね。そういった気持ちの部分で何とか経営を継続して頑張っている、廃業を思いとどまっている事業主の、ある意味心を折りにくる政策になっていると。 飯田:①非常に心理的な負担が大きいグルメサイト問題、②法的根拠が全くない卸売業者への提案、③金融機関にとっては独占禁止法に違反するおそれもあるし、さらには自分の顧客に対して、つまり貸し出し先に対して、わざわざ返済を難しくするような提案をしてくれという、ここのところ、場当たり的で短絡的な要請命令が続いている印象です。 櫻井:緊急事態宣言というものの効果がもうだいぶ薄れてしまって、政府も相当危機感を感じていることの裏返しでもあるんじゃないんですかね。 飯田:緊急事態宣言で、そもそも何が変わったかというと、飲食店で7時ラストオーダー、営業は8時まで。アルコールの提供がなくなった以外は、何も変わっていないんです。緊急事態宣言をなぜこのタイミングで出したのか、というのも含めて検証していかなければならないですし、時には批判していく必要もあるんじゃないんでしょうか。

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