アラームで目を覚ますと、顔を洗い、軽装に着替えてスニーカーを履く。午前5時の福岡は、この時期まだ真っ暗だ。装着したイヤホンからは、ラジオの音声が聞こえてくる。
夜明け前に起きてみよう。そう思い立ったのは担当番組が変わったからだ。夜明け前の路地裏は静寂(しじま)の世界だ。イヤホンの音量も小さくて心地よいし、自分の足音もよく聞こえる。散歩初日は車3台とすれ違った他は誰にも会わなかった。車が近づくとイヤホンからのラジオの音がかき消される。車の走行音がやたらと大きいことに驚く。その音は時速40キロだと70デシベル。電話のベルやセミの鳴き声と同じ音量だという。日中は気にもとめないので、日常生活がいかに騒音に囲まれているかを思い知る。
数えてみると、20軒に1軒程度は部屋の明かりがついている。中の様子を想像する。身支度したり弁当を作ったり「朝活」をしたりしている人もいるのだろうか。世界が目覚める前に動き出している人たちがそこにいる。親近感が湧いてくる。イヤホンから流れるラジオはこう始まる。「しじまのなかに朝の気配が混じりはじめました。世界が目覚めを待つ中、この声に耳を傾けているあなたへ……」「ようこそニュー・デイ」(月~金曜午前5時)。4月から私が担当している。
4月25日(土)毎日新聞掲載
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