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SDGs "母なる川"に異変~メコン川がピンチ タイ・バンコク支局報告


<リード>

6月はRKB70周年を記念した「カラフルマンス」として、SDGs=持続可能な開発目標への様々な取り組みを紹介しています。

今回は15番「陸の豊かさも守ろう」です。

全長約4900キロ、東南アジアを流れるメコン川。

周辺流域には約6000万人が暮らし、生活に大きく関わってきたことから「母なるメコン」と呼ばれています。

その世界有数の大河が近年、大幅な水位の低下に見舞われ、人々の暮らしに深刻な影響が出始めています。

RKBバンコク支局からの報告です。

<VTR>

「母なる川・メコン」。

チベット高原に源流を持ち、中国、ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、そしてベトナムを通って南シナ海に注ぐ、全長約4900キロ、世界有数の大河です。

古くから漁業や農業、物流や交通など、沿岸部に住む人たちの暮らしや文化を育んできました。

しかし近年、この恵みの川が危機に瀕しています。

これは今年3月、タイ東北部ノーンカーイ県で撮影された映像です。

川は干上がり、広大な川床が露わになっています。

メコン川流域の4か国で作る国際機関「メコン川委員会」の調査では、水位が過去の平均を大きく下回る地点も多く、「この50年で最悪」と警鐘を鳴らします。

異変は水位だけではありません。普段は茶褐色の川が、澄んだ色に変わっているのです。

水産学が専門のタイ・ウボンラチャタニ-大学のトゥアトン教授は、この異変の原因を次のように指摘します。

インタビュー

原因は、少雨などの天候不順だけではありません。

度々指摘されているのが、上流にある中国やラオスが建てたダムの存在です。

流域のタイの7つの県で構成される環境団体のオームブーン代表は「水力発電用のダムが、水の流れを制限している」と主張しています。

インタビュー

生態系のバランスが崩れて藻の塊が増え、世界最大規模の内陸漁業を支えてきたメコン川の漁獲量は、激減しました。

さらに、ダムからの放水が不規則に繰り返されることから、コメや野菜も不作が続いています。

タイ中部のナコーンパトム県の農家は「土壌の質が悪くなり、イモが育たなくなった」と訴えています。

一方、名指しされた形の中国は、ダムの干ばつへの影響を否定してきましたが、今年1月にはタイなどの要請を受け、ダムの放水量を増やし下流域の水量を改善させるなど、これまでの姿勢を修正する動きも見せています。

インタビュー

発電の恩恵を受ける人がいる一方で、豊かな大河は疲弊し、近い将来の深刻な食糧危機の恐れも、現実味を帯びています。

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