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衝撃だらけのドイツ旅 2

暮らし
2019年11月、ドイツへ取材に行った大きな目的のひとつは、小学校へ訪問することでした。ドイツの環境教育が進んでいるという情報を得て、コーディネーターさんが探してくれた取材先は、首都ベルリンから北西方向に約325km離れたノイハウスという小さな町の小学校。ここで僕は愚かな演出をしてしまいました。

今回の取材のテーマはプラスチック問題。小学校へ取材に行くなら子どもたちにプレゼントを渡したい、そう思った私は、会社のキャラクターグッズのひとつであるハンドタオルを40枚ほど持って行きました。そのタオルは全てビニールで丁寧に個包装されています。プラスチック問題の取材にあえてビニール製の袋に包まれたものをプレゼントとして持って行く。VTR中に笑いどころがひとつくらいできるかな、と軽く考えていたのです。

いざ、小学校へ。最初にお会いしたのは校長先生でした。そこで僕は「子どもたちへプレゼントを持ってきました」と伝え、ビニールに包まれたハンドタオルを40枚渡しました。校長先生の反応は「ありがとう。全て剥がして子どもたちへ渡します」と優しい笑顔。

僕の狙いはうまくいきました。プレゼントを渡すことで、「一見親切丁寧に感じる個包装という日本の常識が、世界の常識ではない」ことが笑えるシーンとして撮れたなと満足しました。しかし、その後…生徒たちの取材を進めていくうちに、生徒たちのプラスチック問題への真剣さ、ひいてはこれからの未来を生きていく若者たちのメッセージに心を打ちぬかれ、自分がとった行動を深く恥じ、なんと軽い気持ちで取材に臨んでしまったのだろうと猛省しました。

取材を受けてくれたのは小学3、4年生の10名。ノイハウスの小学校では、毎年自らテーマを決め自分の意見を発表するという活動を行っていました。まず、彼らの発表を聞きました。そこで心に残った言葉は2人の女の子の言葉でした。
「私たちは本の付録についてくるプラスチックのおもちゃが必要ではありません」
「遊んだとしても1日か2日で、ごみになってしまうから」

さらに、彼女たちは出版社へ手紙を書いたのです。
「私たちは付録がなくても私たちは十分雑誌を楽しめます」
「あなたたちは私たち子どもがプラスチックに触れないようにサポートすべきです」
「これからの私たちの未来を考えてください」
これは全て小学4年生の言葉です。
私は少し意地悪な質問をしてみました。

Q:今ごみとなっているプラスチックは全て大人が作って、捨てたものなので大人が悪いと思う?
と聞いたところ・・・。
「たしかにそうなんだけど、みんなにプラスチックを作ることをやめるべきだと分かってほしい」
「誰が悪いかよりも、たくさんの人にプラスチックを食べた魚を食べることで健康にも被害が出ていることを知ってほしい」

Q:出版社の人に手紙を書くことであなたたちの気持ちは伝わっていると思う?
「どうだか分からないけど、分かってくれるまで手紙を出し続けます」
「だって本当に大切な問題だから」
ぐうの音も出ません。目を背ける大人が多い中、彼女たちは真っ向から問題に立ち向かって解決しようとしていました。この出会いを無駄にするわけにはいきません。

皆さんはどう感じたでしょうか。正直なところ、子どもたちのまっすぐな正しい気持ちが「自分の行動を責められているようで耳が痛い」と感じるのがまだまだふつうの大人たちではないでしょうか。僕もそのひとりです。

しかし、私たち大人がどんなに現実から目を背けて今のサステイナブルでない生活を維持したいと願っても、その代償を払うのは自分たちだけではなく、僕がドイツで出会った彼女たちや、彼女たちよりももっと若い世代の子どもたちです。

それを思うと、自分の耳が痛いくらいのことはなんてことない、少し不便になっても彼女たちのために自分にできることから変えていかなければいけない…と思っています。

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