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『るるるるーるるガーデン』のはじまり 【SDGs「循環型社会」への気づき】

今の僕は、1日の中でカメラやパソコンを触るより、土を触る時間の方が圧倒的に長くなっています。3年前、いや1年前でさえ、そんな自分の姿は想像していませんでした。
かつての自分と今の自分。その間、僕に変化をもたらしたものを考えると、それは「環境問題を知ったこと」「それに対して行動を始めたこと」という2点につきます。しかもそれは、「知る」→「行動する」の一方通行ではなく、「行動する」→「知る」という双方向の気づきが多かったのです。環境活動を始めて3年経ちましたが、いまだにその好奇心が落ち着く気配はありません。

社員食堂の生ごみから堆肥を作り、野菜を栽培

ここ3年間で継続的に「行動したこと」は大きく2つあります。それは「ビーチクリーン」と「コンポスト」です。そして、今の僕に大きく影響しているのは「コンポスト」です。
コンポストとは、生ごみを捨てずに堆肥に変えることを言います。RKBの社員食堂の生ごみを2020年4月2日から今現在(2021年11月)まで1gも捨てることなくコンポストし、堆肥を作る活動を続けています。約1年半で回収した生ごみの総量は2トンを超えます。コンポスト開始から2カ月後、出来上がった堆肥を使って野菜を栽培し、収穫したら食堂に食材として戻すという社内の「循環」活動も始めました。これがRKBオンラインでも配信している『るるるる~るるガーデン』です!
 

循環生活研究所・たいら由以子さんとの出会い

コンポストを始めたきっかけは、NPO法人循環生活研究所のたいら由以子さんとの出会いでした。たいらさんに初めてお会いしたのは2019年の8月頃。当時の僕のライフワークは「ビーチクリーン」で、頭の中はプラスチック問題でいっぱいでした。それを番組として形にしようとリサーチをしていた時、前回のコラムで触れたボーダレス・ジャパンの広報担当の方に「プラスチックの事業を行っている方に会いたい」と相談したところ、2人の方を紹介してくださったのです。
僕は、今考えていること、そしてどんな番組を作りたいかをお2人に熱く伝えました。すると2人のうちの1人が、「日本のプラスチックごみが海外へ資源という名目で輸出されていること」「しかし現状はごみの処理を押し付けているような状況であること」など、興味深い話をたくさん教えてくださりました。初めて知る情報に満足し、時間も予定の1時間を過ぎようとしていたので、そろそろお開きかと思っていた時、急にもう1人の方が堰を切ったように喋り始めたのです。その人物が、たいら由以子さんです。
話の内容は「生ごみ」と「土」についてでした。失礼ながら初めは「プラスチックのリサーチなのに、何でこの人はそんな話をしているんだろう」と思いながら伺っていたのですが、事業を始めて25年という経験からくる圧倒的な内容に、僕は一気に引き込まれてしまいました。たいらさんの話は「土」から「食」へ、そして今と昔の生活を比較しながら、分かりやすく「循環」の話へと広がっていきました。初めて聞く話ばかりで、聞いているだけで脳の思考領域をグイグイ広げられていく感覚でした。その話を聞いて、僕は「プラスチックの次は『食』だ!」と決意したのです。この出会いが、剛力彩芽さんにナビゲーターを務めてもらった番組「食が変われば地球が変わる」(2020年12月に全国放送)を作るきっかけにもなりました。

「社員食堂でコンポスト」の取り組みが始動

翌日、心に火がついたままの僕は、当時の上司にたいらさんとの出会いを報告しました。その会話の中で上司から提案されたのが『るるるる~るるガーデン』の原案「社員食堂でコンポスト」の取り組みです。
コンポストはやったこともないし、生ごみには抵抗があったはずなのに、ネガティブな思考は一切生まれず、「面白そう!」と思ったことを覚えています。無意識でしたが、今思えば新しい取り組みを始めて会社が変わっていく瞬間に立ち会っている喜びを感じていた気がします。話が決まってからは、食堂の調理師さんに1日どれくらいのごみが出ているのかを聞いたり、設置場所を総務部に相談したり、とんとん拍子で物事が進んでいきました。
コンポストを開始して1週間後。段ボール箱の中で、微生物が活動を始めた合図となる温度の上昇が始まりました。箱の中に手を入れると優しい温もりを感じ、そこに“生命”を感じました。段ボール箱の中身に命が宿った感覚です。感動と共に、「昔はこの現象が自然界で起きていたはずなのに、今は段ボール箱を使って人間の手で行う時代」というたいらさんの話がよみがえってきました。

食の輪を循環させるということ

コンポストを作る段ボールの中は地球の縮図だと思っています。「生ごみ」が土の中で分解され「養分」となり、その養分で「野菜」が育ち、その野菜を人間が「食べる」。しかし、その「循環」をそこで終わらせてはいけません。食べ物の輪を循環させるには、最終工程である「食べる」側の人間がアクションを起こす必要があるのです。そうしなければ、生産から消費へという「一方通行」の社会になってしまいますから。

次回はコンポストについて詳しく解説します。

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