すすぎゼロでも使える洗濯洗剤(前編)

すすぎゼロでも使える洗濯洗剤(前編)

“すすぎがいらない洗濯洗剤”

これは、にわかには信じがたい言葉です。その情報に僕が出会ったのは約2年前、製造販売している会社に伺ったときのことです。そこで出会った社長は、超ブッ飛んだキャラクターの“きむちん”こと木村正宏社長(63歳)。お話を伺っているうちに僕は、すっかり“すすぎゼロでも使える洗剤”『海へ…Step』の虜になっていました。
洗剤『海へ…Step』を製造・販売しているのは大手メーカーではなく、福岡のローカルな会社『がんこ本舗』(福岡県・新宮町)です。開発者でもある“きむちん”は社名の通り、「がんこ」な社長かと思いきや、普段は温和な性格。しかし、海を守る環境活動について考え、話している時だけは「がんこ」な一面をのぞかせます。
“きむちん”は、環境汚染が世界的な社会問題として注目を集めるよりはるか昔、45年も前から環境活動に取り組んでいます。また、自身が経営する会社も、環境活動に通じるビジネスを行っているため、「商売よりも海の環境を守るための提案」という感覚だそうです。
「この“きむちん”の考えを多くの人に知ってもらいたい」。そう思い、取材を重ねて、2022年1月9日「世界一の九州が始まる!」(https://rkb.jp/article/56492/)でこの洗剤について放送しました。取材の中で、特に印象に残っている一言があります。それは、
「本来は人の暮らしに洗剤は必要ない。でも困ったときにはこれがあるよ」という言葉です。
洗剤を作って売っている会社の社長なのに、「洗剤はなくてもいい」という言葉に、“きむちん”の本気を感じました。

すすぎゼロの効果は?

すすぎゼロで洗濯することのメリットは大きく3つです。

  1. 大切な資源である水の使用量が半減すること
  2. 時間を短縮できること
  3. マイクロプラスチックの排出を抑制できること

一般的な洗濯は【洗い1回、すすぎが1〜2回】だと思います。これを、すすぎゼロにすることで水の使用量が大幅に減らせることは容易に想像できますが、それに伴い、時間が短縮できるのも大きなメリットです。ちなみに、すすぎゼロだと1回の洗濯で「洗い」が5分、「脱水」が3分。水を入れたり、排水したりする時間を加味しても、わずか約15分で洗濯が終わります。
そして3つ目にある「マイクロプラスチック排出の抑制」がこの洗剤の大きなポイントです。洗濯機で「洗い」「すすぎ」を行うと、どうしても衣類は傷み、最終的に海へ化学繊維などが流れ出てしまうのだそうです。昨今話題となっている海洋マイクロプラスチックのうち約35%が化学繊維(出典:国際自然保護連合)と言われています。そこには「洗濯」も大きく関わっているというのです。そのような問題を解決しようとしたら、ビーチクリーンや脱プラ生活も大切ですが、まずは日常生活で行っている「洗濯」を見直すことが重要だと“きむちん”は提案しているのです。

すすぎゼロ実現のポイント

1%の〇〇〇オイル

“きむちん”は、長年研究を続けた結果、洗剤の成分にエッセンシャルオイルを配合しました。エッセンシャルオイルは、アロマオイルに使われることでもお馴染みのため、「良い香りがするオイル」というイメージしかない方も多いのではないでしょうか。確かに、『海へ…Step』にはラベンダーのエッセンシャルオイルが使われているので、容器の蓋を開けるととても良い香りがします。しかしエッセンシャルオイルの力はそれだけではないのです。油汚れを落とすことに関して物凄い力を発揮するのです。どうして油汚れを落とすことができるのか?それは、エッセンシャルオイルが「良い香りがする」という事実に密接な繋がりがあります。

【エッセンシャルオイルの特長】
良い香りがする = 揮発性が高い = オイルの粒子が細かい

つまり、その細かい粒子が衣類の隙間に入り込み、油汚れを引き剥がすのです。しかも、その量は洗剤の全体の1%。他の成分は16%が泡の成分(界面活性剤)、それ以外の80%以上が「水」です。一般的な洗剤は泡の成分が50%以上といいますから、それと同等以上の力がわずか1%のエッセンシャルオイルにあるというわけです。ではなぜ洗剤の大手メーカーはそのような洗剤を販売しないのでしょう? それは水に、揮発性が高いエッセンシャルオイルを混ぜる技術がないからだそうです。
これが実現できたのは、“きむちん”が科学者でもあるからです。環境にやさしく、海を守ることができる洗剤を作りたい一心で諦めることなく研究を続け、この技術を実現し、製品化にこぎつけました。
「環境活動と同じで、洗剤の開発も諦めたら終わり。続けていけば必ず解決できるタイミングがくる」と語る“きむちん”に、大手メーカーは技術協力を求めたそうです。その際に提示された金額は○億円。そんなメーカーに対して“きむちん”は問いました。「あなたの会社の製品を全て環境に良いもので揃えられますか?全て揃えられるのなら技術を提供します」。そう言われた大手メーカーは手を引いたそうです。

『海へ…Step』は高額なのですが、洗剤の量が少なくて済む、香りが良いので柔軟剤がいりません。さらに、水の使用量を減らせること加味すると、一般的な洗剤を使うよりも経済的になります。

自然由来の再付着防止材

すすぎゼロを実現できた理由は、もう一つあります。それは自然由来の成分で作った「再付着防止材」が入っていることです。写真をご覧ください。

『海へ…Step』が入った水と何も入ってない水に、油汚れを再現するためごま油を垂らし、コットンを漬け込んで混ぜた結果の比較です。「再付着防止材」の効果は一目瞭然です。
エッセンシャルオイルと「再付着防止材」の作用により、すすぎゼロが実現したのです。

松ぼっくり由来!地域限定洗剤

“きむちん”の野望はとどまることはありません。『がんこ本舗』があるのは福岡県糟屋郡新宮町。新宮は海に面していて海岸線には松林があります。“きむちん”は、その松林の管理団体と連携して保全活動も取り組んでいるのですが、そこで回収している松葉や松ぼっくりには着火剤に匹敵するオイルが含まれていることに着目。松ぼっくりから抽出したオイルを使った洗剤を開発し、2021年に販売し始めました。
しかもこの洗剤は「新宮町」での限定販売。『がんこ本舗』の社内に、松ぼっくり課をつくるほどの力の入れようです。地域にある原料を使い、地域で消費する製品を作ることで、小さなエリアで資源を循環できる社会を目指しているのです。

“きむちん”の言葉を支えに

環境問題は、「問題が大きすぎて、それを解決するために、自分が何をしたらいいかが分からない」という声をよく耳にします。そんな時は、“きむちん”が言った次の言葉を思い出してみてください。
「問題解決のために毎日何かの行動をするとしたら、毎日行っていることを少しだけ変えてみるといい」

日常生活で欠かせない「洗濯」から、皆さんも環境活動を始めてみませんか?僕は早速取り入れてみました!
“きむちん”の魅力はまだまだ書ききれていないので、次回、また続編で紹介させてもらいます。
» すすぎゼロでも使える洗濯洗剤(後編)

★きむちんこと木村正宏社長のプロフィール★

小学生の時すでに高校の数学の問題を解いていたという根っからの理系人間。63歳(2022年1月現在)にして3歳のお子さんがいる。もともとは登山家でエベレストなど世界有数の山を制覇。山頂から山を埋めつくす氷を見たときに「この氷が溶けたら海に流れ出すんだ」と思い、海と山が繋がっているという意識を持ち始める。自然に人間は生かされていると実感し、それ以降、環境活動を行う。そんな考えや行動から、7年前に富士山の8号目にある神社の神主に任命され、今も夏季はその神社でお務めしている。

THE WRITER

松井聡史 / RKBテレビ制作部ディレクター
松井聡史 / RKBテレビ制作部ディレクター
カメラやパソコンよりも土を触ってる時間の方が圧倒的に長いRKB農園部(自称)。最近の仕事は、生ごみのコンポスト、畑の水やり、除草作業、野菜の販売、そして時々、番組企画書の作成。RKBラジオよなおし堂ではレギュラーでコーナーを持ち、SDGsを発信している。

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