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酒蔵がピンチ!!コロナ禍で一升瓶不足の原因とは?

テレビ

映画のヒットで注目の酒蔵「みいの寿」が抱える深刻な出荷困難

福岡県三井郡大刀洗町にある酒蔵「みいの寿」は、大正11年(1922年)に創業し、地元の農家と連携して丹念に作られる純米酒を中心に様々な銘柄の日本酒を生産しています。
その中でも「みいの寿」の純米吟醸+14は、大ヒット漫画『スラムダンク』に登場するキャラクターのユニフォームをモチーフにした特別なラベルが貼られており、2013年の5月に発売。昨年12月に公開された映画の世界的な大ヒットを受けて、中国や韓国でも大ブームが起こり、入手困難な状況になっています。また中国人の中には蔵元まで直接買いに来るほど、需要が高まっているんです。
酒蔵としては注文が殺到していてうれしい悲鳴というところですが、一方で注文の3分の1しか出荷できていないという状況にもあるのだそう。これに対応するために酒蔵では増産したいところですが、原料となるお米・山田錦が不作という問題と同時に別の問題も浮上しています。

一升瓶の出荷本数は10年間で半分以下に減少

「みいの寿」酒蔵の井上宰継さんは「一升瓶の供給が困難になっており、新しい瓶を頼んでも実際には届かなくなっている。東北地方ではお酒を作っても瓶を購入できず、一部の蔵元は酒造りを一時停止している状況だ」と話します。
その理由として、福岡県酒造組合副会長であり「喜多屋」7代目の木下宏太郎さんは、一升瓶の使用量が年々低下しており、特に飲食店での使用が減っていると説明。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大により、一升瓶の使用比率が一層下がっているとのことです。
現在の日本酒市場では一升瓶で出荷されるお酒の割合は全体の約30%であり、年々その割合は減少しているのだそう。
また、日本酒だけでなく、醤油やお酢なども一升瓶からペットボトル入りが主流となっていて、一升瓶の出荷本数も2012年の約1億6千万本から、2021年には約7700万本にまで減少しています。

一升瓶はリターナブル瓶容器であり、ビール瓶と同じく繰り返し使用される「リサイクル認定」を受けた容器ですが、現在その状況が危機的な状況にあると木下さんは話します。
一升瓶のリサイクルについて、「びん商」として知られる専門業者の甲斐田義弘さんに話を聞いたところ、「消費者が使用した一升瓶を酒屋や集団回収などで回収し、在庫として保管する。その後、注文が入った本数を酒屋や醤油メーカーに納品するか、瓶を洗浄して「洗い瓶」として再利用する業者に提供することもある」と説明。回収される一升瓶の約2割は汚れや傷が多く、そのまま再利用できないため、細かく砕かれて再生瓶として生まれ変わるのだそうです。
甲斐田さんは一升瓶の需要がかなり減少しており、危機感を感じていると言います。
エリア別で一升瓶の数を比較したグラフをみると、関東エリアでは多くの消費者がおり空き瓶の発生量が突出している一方、九州では一升瓶の需要が非常に高くなっています。つまり、九州では全国各地からの空き瓶の供給が不可欠な状況にあり、特に九州地方では瓶の不足が深刻な問題となっているのです。
九州が本格焼酎のメッカであるため、鹿児島や宮崎などの地域では瓶不足の問題が生じていて、甲斐田さんたちは福岡からも瓶を鹿児島に持ち込むなど、供給不足を補うための努力をしているんだそうです。

リユース促進で一升瓶は生き残れるか?

また甲斐田さんによると一升瓶のリサイクルが難しくなっているという問題が起きており、その原因のひとつが瓶のラベルの接着剤なんだとか。
瓶の洗浄時にラベルが完全に剥がれず、ラベルの跡が残ってしまうため、メーカーから再利用が許されない場合もあると話します。特にラベルが剥がしにくい状態の場合、再利用が妨げられることになるのです。

また福岡県酒造組合副会長であり「喜多屋」7代目の木下さんは、回収に使用されるプラスチック製の6本入り箱(P箱)についても触れています。
「P箱は一升瓶の回収に不可欠な容器だが、見た目を重視する消費者の要望により段ボール箱に取って代わられ、P箱の需要が減少している。その為段ボール箱の需要が増えるほど回収容器が不足し、結果として一升瓶が回収されにくくなっている」とのこと。
また「ドイツなどではペットボトルを洗浄して再利用。そのため環境負荷が少なく明らかに二酸化炭素(CO2)の発生は少ない。一升瓶は日本酒や本格焼酎の象徴的な容器であるため、環境負荷を少なくするためにも、できるだけ長くリサイクルが継続されることが望まれる」とも話してくれました。

現在この一升瓶不足の問題を受けて、鹿児島などの南九州では焼酎の瓶を主に五合瓶(900ml)入りの瓶でリユースしようという動きがあり、現在ではこの瓶の割合がかなり増えてきているんだとか。
一升瓶をなくさないために、私達も普段からリユースのための返却の意識を持ちたいものです。

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