ジャニーズ性加害問題「メディアの風向き変わった」松尾潔が評価
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前検事総長の林真琴氏や精神科医などで構成する、故・ジャニー喜多川氏の性加害疑惑を調査する、外部専門家による再発防止特別チームが6月12日に記者会見を開いた。この日を境に、新聞やテレビの報道番組が「ジャニーズ性加害問題」に切り込んでいる。同月26日に、RKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』に出演した音楽プロデューサー・松尾潔さんは、メディアの姿勢の変化を評価しつつ、改めて「膿を出そう」と提言した。
ジャニーズの再発防止特別チームが会見
ジャニーズ性加害問題について、前回この番組でコメントしたのが5月22日ですから、ほぼひと月経ちました。その間の動きも含めて、関わりがある業界に身を置く私の視点から、改めてお話します。
なぜ今なのかというと、6月12日にジャニーズの再発防止特別チームが記者会見を開きました。出席したのは元検事総長と精神科医の二人でした。もちろん、このチームが発足した意義を感じましたし、会見が開かれたことは前進だと思います。
チームはジャニーズのコントロール下?
ただ、ポイントをうまくかわされたかなという気はします。この会見、5月に発表された、藤島ジュリー景子社長の謝罪動画や文書では不十分ではないかという、世の中の声に応えるために開かれたという側面があると思います。
しかしこの会見に藤島ジュリー社長は、出席していません。また、座長の林元検事総長はこう述べています。
「(第三者委員会という名前ではないが)私たちは第三者委員会であると受け取ってもらっても差し支えない」
「なんだろうな、この言い方は?」って思います。独立性の高い第三者委員会だと言っているようで、「実はジャニーズのコントロール下に置かれたチームである」ということも物語っているわけですね。
林氏の言葉をそのまま引用するならば、「ジャニーズ事務所が設置したものなので(報酬も事務所から)いただく」と。そして調査結果をいつ、どんな形で公表するかについても、ジャニーズ事務所にイニシアティブ(主導)があるということです。
そういうところが問題ではないのでしょうか? そして、なぜ社長が同席しないのでしょうか? 企業ガバナンスとして、社会的に影響の大きい組織であれば、当然やっていることでしょう。
ジャニーズ事務所の本業は順調
一方で、ジャニーズ事務所の本業の方は順調のようで、この土日に福岡PayPayドームで開かれたSnow Manの4大ドームツアーも大成功だったと聞いています。そういう状況だからなおさら「性加害問題のことも、一応、やっていますよ」という印象を与えてしまうような会見だったと思います。そういう見方をしているのは、僕一人ではないでしょう。
朝日新聞の社説「十分な調査は可能なのか」
朝日新聞の6月16日の紙面で「ジャニーズ 十分な調査 可能なのか」という社説が出ました。
(社説)ジャニーズ 十分な調査 可能なのか【朝日新聞デジタル】
かなり本質的なことを言っていましたね。「経営陣が沈黙する一方で、矢面に立っているのが所属するタレントたちだ」と。タレントファーストという視点で、そこは僕も非常に共感を覚えました。
特別チームは意義のある調査ができるのか、ということを朝日新聞も言っています。そして、「(一般的な)手順を踏まないまま特別チームに検証を丸投げしただけでは、納得がえられるはずはない。性犯罪対策をどう強化するか、政府も検討を始める事態になっている。ジャニーズ事務所に記者会見を開くことをあらためて求める」と締めくくっています。まるで、ひと月前と同じことを、また口にしているようですが。
「文春」側弁護士も会見
一方、ジャニー喜多川さんによる性加害問題を報じ、喜多川さんとジャニーズ事務所から名誉棄損で訴えられた裁判で、文藝春秋側の代理人を務めた喜田村洋一弁護士が6月14日、日本記者クラブで会見しました。
文春とジャニーズとは20年以上前に裁判で争って、文春側が勝っています。この会見、ちょっと長いですが大変見応え、聞き応えがある内容です。YouTubeで公開されています。
TBSテレビ『報道特集』がメディアの責任に言及
そして何と言っても決定的だったのは、6月17日のTBSテレビ『報道特集』です。僕はかなりのインパクトを受けました。メディアの責任に言及し、TBSも含めて日本のほとんどのメディアが、先述した文春との裁判を報じなかった反省が強くにじみ出ていました。
テレビも新聞も「ジャニーズとずっと仕事をしたいから、そういうことを報じるのはやめてくれよ」というような声が社内にあることを生々しく語っていました。
雑誌の元編集長でフリージャーナリストの浜田敬子さんが、この番組のインタビューで「編集長時代に自らが関わった雑誌で、企画会議や編集部でジャニーズの性加害問題が大きな議論になったという記憶がない」と話していました。
なぜ大きな議論をしなかったのかを考えると、一つには男性に対する性加害の知識が少なく、軽視していたこと。これが女性だったら、あるいは異性間のことだったら話は違ったのかもしれません。
もう一つは、芸能界のできごとということで、裁判の結果でさえ大きな問題として報じなかったこと。つまり、「問題とか事件というよりも、ゴシップ的に見ていた」という、自分たちの報じる姿勢に甘い部分があったのではないか、という反省を述べていました。
それと、ジャニーズタレントが起用されるカレンダーを大手出版社が持ち回りで作っていて、そのことによる言論封殺があるとも触れていました。自社メディアではジャニーズのスキャンダルは扱わないという不文律があったことにも踏み込んでいます。
結構、僕にはショッキングとも言えるインタビューで、この『報道特集』もTVerで見られるので、確かめてみてください。
きょうの結論としては「やっぱり、改めて膿を出しましょうよ」ということです。1か月前と同じことをまた言いますが、そうしないと、才能のある若い人たちが、僕の愛するこのエンターテインメントビジネスに、もう寄ってこなくなるのではないでしょうか。大変、危惧しています。
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