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東比恵で46年、毎日地元常連客で賑わう小料理屋

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東比恵で創業46年

東比恵交差点近くに創業46年になる「お食事処 政」(まさ)という小料理屋がある。僕が22歳で就職した会社が東比恵にあったので当時数回は行ったことがあったが、まだ地下鉄東比恵駅も出来てない頃の古い話であまり記憶はない。それが35年以上経ってこんなにお気に入りの店になるとは思ってもいなかった。

創業時の大将は左座照吉(ぞうざてるよし)さん。「左座」という名字から熊本県八代市の山奥五家庄にある「左座家」を連想する人もいるだろうが、照吉さんはまさに左座家出身であり、そこで中学生まで暮らしたそうだ。
その後、人吉市の寿司屋で14年間修業した後に福岡市に出て来て老舗料亭「やま根」などで板前としての経験を積んだ。「政」を開業するまでになんと47回も転職したというからいろんな意味ですごい人だ。

お食事処政 創業時の写真 人吉市の寿司屋で修業中の左座照吉さん(奥の右から3番目)

昭和52年寿司屋としてスタートした「政」

照吉さんは、昭和52年に寿司店として現在の場所で「政」を開業した。入れ替わりが激しい店舗物件だったので「この場所で寿司屋とか難しいんじゃないか」と近所の人に言われたそうだ。その後、さすがに寿司専門では難しいだろうという判断で、小料理屋に業態を変えたそうだが、本格的な日本料理店や寿司店での経験を生かした照吉さんの料理はすっかり地元で人気になり、近隣の客に支えられて結局46年間続く店になったのだ。

照吉さんは5年前まで現役で店に立ち続けたそうだが、現在は奥様の順子さんと息子の和吉さんが店を守っている。
「とにかくお父さんは変わった人でした。典型的な昭和の飲む・打つ・買うという人で、そりゃあもう大変でしたよ。ただ、料理の腕だけは一流でしたね」と順子さんはしかめっ面で話してくれた。それは長年連れ添った奥様だから言える愛情表現と受け取れた。

お食事処政の外観

お父さんの引退と2代目への継承

照吉さんが引退された後、調理を任されているのは息子で2代目の和吉(かずよし)さんだ。和吉さんは高校卒業後、福岡市内の日本料理店で働き、23歳から「政」で照吉さんの手伝いを始めたというから、和吉さんでさえ「政」の歴史を刻みだして25年になろうとしている。
和吉さんは笑顔が優しい温和な人である。照吉さんから受け継いだ本格的な和食をしっかり提供し続けている。昼は水曜日以外はランチ営業もしており、夜は18時から22時までの営業。昼も夜も順子さんと和吉さんがスタッフと3人で店を切り盛りしている。
そして順子さんの仕事ぶりがすばらしい。接客から料理の説明から注文の管理、清算までをすべて順子さんがコントロールしている。さらに営業時間中にかかって来る予約の電話対応までこなしているのだ。今回の取材で店の成り立ちや経緯を話してくれたのも順子さんだ。聡明でシャキシャキとしているまさに店の守り神的な女将さん像そのものだ。

お食事処政のランチ 日替わりランチ(800円)

そんな「政」だから毎日予約で賑わっている。「ビジネス街だから土曜日よりも平日のほうが忙しいのよ」と順子さん。確かに予約しようとしたら平日でも予約が取れない時もあった。それでも「新型コロナの頃は近所の会社の人たちが来られないので暇で暇でたまりませんでしたよ。それでもまた常連さんたちが戻って来てくれて有難い限りです」と続ける。
「46年も営業していると、昔は若いサラリーマンだった人が大きな会社の社長さんになられたりして、ありがたいことに今でも来てもらえてるんですよ」と順子さん。さらに「ほぼ毎日単身で来られるお客さんが2人いらっしゃるんですよ」と続ける。「ということは、その2人のお客さん同士は毎日会ってるってことですよね? もうそれって家族以上じゃないですか」とツッコんでしまったが、確かに他の常連客と一緒にカウンターに並んで酒を酌み交わしている2人を僕も目撃したことがある。そんな光景を見ると、まさに「政」は本当に常連客にささえられてるということを肌で感じる。

お食事処政 カウンター

料理のこだわり

「政」の料理が美味しいのは、とにかく本格的な日本料理店などで長年修業して来た先代の味が継承されていることだ。「政」にはメニュー表やお品書きというものがない。大皿に用意されてる料理やネタケースの中の食材を見て、食べたいものや調理方法を店の人に聞きながら注文するスタイル。そこは居酒屋ではなくまさに小料理屋だなと思う。
例えば、ネタケースにある太刀魚を食べたいと言うと、「焼きでも揚げでも煮物でもお好みで調理しますよ」というスタイル。

人気メニューは刺身盛り合わせ、熊本県産の馬刺し、自家製明太子など。常連客が毎日リピートするのはコロッケと串カツだが、和吉さんとしては得意な煮物料理をもっと食べてもらえたら嬉しいそうだ。しっかり食べてそこそこ飲んでも価格は4,000~6,000円とほぼ居酒屋並。自家製明太子は店内でも食べられるが、お土産として持ち帰りもでき、160gで1,000円(7月からは1,100円)という自宅用の切子もありおススメである。

お食事処政の刺身 お食事処政の馬刺し お食事処政の串かつ お食事処政 煮物

今後のこと

ランチタイムは、順子さんと和吉さんの他に、和吉さんの奥様も手伝って家族でやりくりしている。「母が元気なうちはまだまだ頑張ってもらいます。父の時代からの古いお客様がまだまだたくさん来てくださってますから」と和吉さん。
「僕には息子がいるんですけど飲食業界には進まないようなので、3代目誕生は難しそうですね。しかしまだまだ僕も2、30年は頑張れますので、今の常連さんには安心していただきたいと思います」と続ける和吉さん。

お食事処政 店主

そうなると創業60年、70年。その可能性は十分あるし、それだけ末永く続く価値のある地元に愛される「お食事処 政」だと僕は思う。和吉さん、これからも一日でも一皿でもたくさん美味しい料理で、お母様と一緒にお客さんを楽しませてください。これからもずっと応援していきます。

お食事処 政
福岡市博多区東比恵2-17-23
11:30~13:00/18:00~22:00

店舗名:お食事処 政
ジャンル:居酒屋
住所:福岡市博多区東比恵2-17-23
営業時間:11:30~13:00/18:00~22:00
定休日:日曜・祝日・水曜日ランチタイム・不定休あり
席数:カウンター8席、掘りごたつ14席
メニュー:日替わりランチ800円、夜メニューは時価、刺身盛り合わせ、馬刺し、コロッケ、串カツ、自家製明太子、豚足、魚料理、肉料理など
URL:https://tabelog.com/fukuoka/A4001/A400101/40040974

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この記事を書いたひと

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