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6月はLGBTQプライドマンス~男性カップルとのシェアハウス生活から考える

6月は世界各国でLGBTQへの理解を深め、権利を啓発する「プライドマンス」だ。性的マイノリティに対して、世界で最も理解が進む地域の一つアメリカ・カリフォルニア州で暮らす、スタンフォード大学客員研究員の尾川真一さんにRKBラジオ『立川生志 金サイト』で話を聞いた。

行政も企業も大々的に支援

サンフランシスコには、カストロストリートというLGBTQの方々が集まる通りがあります。プライドマンスに合わせ、6月は毎週大規模なイベントが行われています。

行政や企業も大々的にプライドマンスを支援しています。例えば、カリフォルニア州の州都サクラメントの庁舎には、運動の象徴でもある虹色の旗が国旗や州旗とともに掲げられています。
 

(サクラメント州庁舎のレインボーフラッグ)

メジャーリーグ、サンフランシスコジャイアンツの試合会場では、虹色の旗に加え、トランスジェンダーの旗が掲げられていたほか、ジャイアンツのロゴは虹色仕様になっていました。このほかにも、SNSなどで企業のアイコンが虹色になっているのを見かけます。

男性用トイレにも生理用品

日本では最近、新宿のジェンダーレストイレが話題になっていたと思いますが、私の住む地域では、空港や大学などいたるところにジェンダーレストイレがあります。すべてが新しく設置されたわけではなく、元々は男子トイレ、女子トイレと分かれていたものを改装してジェンダーレストイレにしている場所もあります。

中はすべて個室になっているのですが、その扉を開けると男性用の小便器がそのまま設置されていて驚きました。

当然、街のすべてのトイレがジェンダーレスになっているわけではなく、男女で分かれている場所もたくさんあります。ただ、男子トイレにも、トランスジェンダーの方向けに無料の生理用品が設置されている場所があります。

男性カップルとの共同生活

現在、私はバイセクシャルの男性カップルと一緒にシェアハウスで生活しています。2人とも、女性とも交際経験があり、現在は男性同士で交際しています。傍から見ると、仲の良い親友同士のように見えるかもしれません。

とてもオープンで“バイセクシャルジョーク”も言ったりします。私が車で道案内をしているときに、「次の信号を直進で」というと、「ごめん無理だ。バイセクシャルはストレートじゃないから真っ直ぐには行けない」といった具合です。お互いに、好きなタイプの話もしています。「トランスジェンダーのことの人を好きになったことある?」みたいな会話もしていました。

ただ、彼らはもともとアメリカの東海岸の出身で、カリフォルニアに引っ越すまでは自分がバイセクシャルだということを、家族や友人にカミングアウトしていなかったそうです。一方、西海岸のカリフォルニア州はとても理解が進んでいる場所で、すでに生活に溶け込んでいます。

象徴的な例として、ワイフ(妻)やハズバンド(夫)といった単語はあまり使いません。代わりにパートナーという単語を使います。「奥さんは? 旦那さんは?」「彼氏、彼女いますか?」とは聞かずに「パートナーはいますか?」と尋ねる感じです。

もしそこで女性が「ワイフがいる」と答えたら、「あ、女性が好きな方なんだ」と分かります。大々的なカミングアウトというよりは、こうした何気ない会話の中で「気づく」ことが多いと思います。

しかし、アメリカ全体で見れば、最高裁の判例を受けて、ようやく昨年12月に同性婚が法制化されたぐらいなので、まだまだ理解には時間がかかると思います。

日本語の「~さん」はとても便利

最近、SNSなどで自分の名前の後ろに(he/him)や(she/her)をつけている人を見かけたことがあるかもしれません。これは、自分の性自認を示すものです。つまり、he(彼)と呼んでほしいか、she(彼女)と呼んでほしいかを意思表示しています。これは、LGBTQの人に限らず、ビジネスシーンなどでも多く見られます。

この点、日本語の「~さん」という表現は、性別に関係なく使えるのでとても便利です。英語ではMr./Ms.をつけるのが通常ですが、Mr.Ogawa ではなく、Ogawa-sanとすれば、相手の性別や性自認を気にする必要がなくなるので、広まればよいなと思っています。
 

(スタンフォード大学客員研究員・尾川真一さん)

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