知っているようで知らない「長周期地震動」 “免震マンション”で安心するのは早い
長周期地震動とは、地震の揺れが1往復するのにかかる時間が長くゆっくりとした揺れのことで、高層階になるほど揺れが大きいのが特徴。緊急地震速報の対象にも加えられた長周期地震動、どのように対応すべきなのでしょうか。
遠くまで届く「長周期地震動」
南海トラフ地震によって長周期地震動が発生したという想定で行われた実験映では、ゆっくりとした揺れが続き、食器棚や冷蔵庫が激しく倒れました。
長周期地震動とは、地震の揺れが1往復するのにかかる時間が長くゆっくりとした揺れのことで、ビルやマンションなどの高層階になるほど揺れが大きいのが特徴です。
福岡管区気象台 高橋冬樹・地震津波防災官「高いビルを長時間にわたって大きく揺らします。また、遠くまで伝わりやすいという性質があります」
2011年の東日本大震災では、震源から遠く離れた東京や大阪の高層ビルも長周期地震動によって大きく揺れました。長いところでは揺れが10分以上続き、大阪・南港のビルではエレベーターが停止して人が中に閉じ込められました。
福岡管区気象台 高橋冬樹・地震津波防災官「揺れの影響は、震源から離れていても無視することはできない。熊本地震の時は、福岡県の筑後地方で長周期地震動の階級3を観測しています」
長周期地震動には4つの「階級」が
気象庁は2月から、長周期地震動の予測も緊急地震速報に加えました。長周期地震動には4つの階級があります。
【階級1】ブラインドなど吊り下げたものが揺れる
【階級2】大きな揺れを感じものにつかまりたいと思う
【階級3】立っていることが困難で、キャスター付きの家具などが大きく動く
【階級4】はわないと動けないほど揺れに翻弄され、固定していないほとんどの物が移動して倒れる
緊急地震速報の対象となるのは、【階級3】と【階級4】です。5月5日、石川県で最大震度6強を観測した地震の際、気象庁は初めて【階級3】と【階級4】を予測し、緊急地震速報を出しました。では、速報が出た場合、どのように対応すべきなのでしょうか?
福岡管区気象台 高橋冬樹・地震津波防災官「直ちに身を守る行動を取ること。机の下に潜る、エレベーターに乗っている時はすぐにボタンを押して最寄りの階で降りるなど」
影響を受けやすい高層ビルの上階
近年高層ビルが増え、長周期地震動の影響を受ける可能性は高くなっています。
RKB三浦良介「福岡市東区のアイランドシティでも、高層マンションの建設が相次いでいます。長周期地震動への対策はますます重要になってきます」
福岡市内の高層マンションで、妻ともうすぐ5歳になる娘と3人で暮らしている比嘉友彦さんです。
比嘉友彦さん「食器棚はすでに備え付けられていて倒れる心配はないようになっています。ただ扉はそんなに強力ではないので、中から滑り出てくる可能性はもちろんあるかな。この建物自体が免震構造になっているようですし、制震装置もついているらしいので、あまり心配はしていない」
食器棚や本棚は壁に固定されていますが、大きな揺れが来た場合は棚の扉が開いて、食器や本などが落下するおそれがあります。また、固定していないテレビも危険です。
比嘉友彦さん「テレビは壁につけられるようになっているので、ちゃんとしようかなと思っています。今のところ大きな揺れは経験していないんですが、『いつ地震が来るかわからない』という危機感を持ちながら、すぐに避難できる対策は常にしておこうかなと」
免震構造はビルの倒壊を防ぐのに効果を発揮する一方、長周期地震動とは相性が悪いとも言われています。
福岡管区気象台 高橋冬樹・地震津波防災官「免震構造は、長周期地震動で大きく揺れてしまう可能性があります。免震だから大丈夫と思わずに、家具の耐震固定であったり、家具の配置の見直しは大事になってきます」
高層ビルが続々建設中の都心部では
2005年3月に起きた福岡県西方沖地震。天神の「福ビル」では窓ガラスが割れて散乱する被害が出ました。あれから18年――。災害に強いビルに建て替えようと再開発が進む福岡市都心部の高層ビルには、高性能な免震・耐震・制震設備が導入されています。高級ホテルリッツ・カールトンも入居する高さ111メートル、地上25階のオフィスビルには、地震エネルギーを吸収する制震構造が採用されています。
積水ハウス企画開発課 岩崎幹子さん「こちらが福岡大名ガーデンシティに導入しているオイルダンパーです。車のサスペンションのように、油圧のシリンダーを伸縮することによって建物の揺れを軽減する装置です。もう一つが鋼材ダンパーです。地震のエネルギーを吸収することによって、ビルの変形を防ぎます」
長周期地震動ではビルが10分以上揺れることもありますが、2種類のダンパーを使用することで揺れを早期に収束できるとしています。
積水ハウス企画開発課 岩崎幹子さん「福岡は、東京に比べると地震も少ないと言われていて、本社機能の移転などもご相談をいただいています。とは言え、福岡もいつ地震が起こってもおかしくないので、こちらのビルでは制震構造を取り入れることで、オフィスで働くみなさまが安心して働ける場を提供したい」
「自分たちでできる備えを」
福岡市役所15階にある「災害対策本部室」のオペレーションルームです。一般の家庭やオフィスでもできそうな対策が、部屋中に施されています。
福岡市防災推進課 岩倉りえ課長「テーブルは固定しています。キャスター付きで稼働式のものなので、ベルトでつないで床に固定し、必要な時にすぐ動かせるようにしています」
また、コピー機にはストッパーをつけているほか、テーブルの上のパソコンや電話機なども、ジェル状の滑り止めで固定してあります。
オフィスでこのような対策を行っていなければ、コピー機は激しく動き、本棚やキャビネットが倒れてきてしまいます。
福岡市防災推進課 岩倉りえ課長「自然災害はいつ起こるか分かりませんので、自分たちでできる備えをしっかりとしていただきたい」
この記事はいかがでしたか?
リアクションで支援しよう
この記事を書いたひと
三浦良介
1999年入社、テレビ営業部、大阪支社勤務を経て2011年から情報番組のディレクターを務める。2016年から報道記者として政治・経済を中心に取材奮闘中。