九州の“ご当地アイス”を「宇宙に打ち上げたい!」なぜ? どうやって? 本気で挑戦
九州の子供たちならみんな食べているご当地アイス、ブラックモンブラン。誕生から55年を迎えるのを前にさらなる飛躍を願い、「スペースモンブランプロジェクト」が実施されました。何と「アイス」と「地球」を2ショットで撮影しようというのです。
目次
夢とアイスを乗せて成層圏へ
「3、2、1、0!」。かけ声と共に勢いよく上昇する気球。平均時速25キロのスピードで、上空30キロメートルを目指します。気球につながれた箱の中には、宇宙への夢が詰まっていました。9月25日、福島県相馬市から打ち上げられました。
竹下製菓(本社・佐賀県小城市)は、九州のご当地アイス「ブラックモンブラン」を1日に最大30万本作っています。5代目の竹下真由社長がオンライン会議に出ています。「宇宙空間で」「空気はほとんどないので」「地球と宇宙が半々になって」……。
竹下製菓 竹下真由社長「スペースモンブランプロジェクトの打ち合わせです」
Q.宇宙に行くんですか?
竹下製菓 竹下真由社長「はい、宇宙に行きます!」
アイスの「宇宙打ち上げ」その目的は?
ブラックモンブランを空高く打ち上げる、その名も「スペースモンブランプロジェクト」。上空30キロほどの成層圏を目指します(国際航空連盟は「高度100キロから上」を宇宙と定義する)。
ゴム気球に取り付けた箱にブラックモンブランを入れ、気球にヘリウムガスを充てんします。上昇中にヘリウムが膨張して気球が割れ、その後、地上に落ちてきた箱を回収します。
竹下真由社長「そもそも私は“宇宙好き”で、『宇宙に行って見たいな』という思いがずっとあって、ケネディ宇宙センターを見に行ったりしていたんです。自分が宇宙に行けるようになるのはもうちょっと先。ブラックモンブランだったら私よりも前に宇宙に代わりに行ってくれるんじゃないかな」
竹下社長は今回、「青い地球とブラックモンブランが写る写真を撮影すること」「上空に打ち上げたブラックモンブランを食べること」の2つを、ミッションに掲げています。
竹下真由社長「宇宙に行ってきたアイスを食べた人って、なかなかいなくないですか? もしかしたら世界初かもしれないですよね」
プロジェクトに小学生から高校生までが参加
打ち上げる箱の中身を作るのは、全国から集まった小学生から高校生までの約10人です。8月には合宿を開き、身近で手に入る物を使って手作りで作業を進めてきました。
福岡市から参加する小学5年生「板を挟んで入れて、アクリル用の接着剤で止めた」
ブラックモンブランの模型を配置し、箱の中に入れたカメラで、地球との2ショットを狙います。
ブラックモンブランをおいしく食べるには、熱を発する電子機器の中でマイナス18度を5時間ほど保たなければなりません。
当初使用を想定していたドライアイスは、気体になり爆発するおそれがあるため断念しました。さらに上空は空気が少なく温度が伝わりにくいため、アイスと保冷剤が接する面積を増やす必要があることも分かりました。
高校生「保冷剤を冷やした状態でぶっこわして、めちゃくちゃ冷えてるものを中にという形で冷やす」
一発勝負の打ち上げ
打ち上げ当日。弱い西風が吹く、気球の打ち上げに適した天候となりました。
「始めまーす」。泣いても笑っても、一発勝負です。前日に確認した手順の通り、アイスもカメラも一つ一つ確実に準備を進めます。
子供たち「緊張しています」「うまく行くと思います、ちゃんと準備したので」
「3、2、1、0!」
竹下真由社長「すごい勢いで上がっていきましたね、無事に地球を見てきてほしい」
地球に帰還した「箱」を回収するとそこには…
打ち上げてから海に落下するまで約1時間半。箱に取り付けたGPS信号を頼りに船を走らせて、回収に向かいます。福島県南相馬市の漁港から、沖合30キロの太平洋上で…。
「あった!あった!」「カメラは無事ですね」「……おー、すごい!」
青い地球とブラックモンブラン、そして白く輝く太陽が映っていました。
竹下真由社長「思っていた以上にきれい。ブラックモンブランが宇宙に行った。私も行きたいです」
高校生は「すごい感動ですね、自分の子供みたいな感じ」「まさかCGみたいな映像が現実で撮れるとは思ってもいなくて」
“宇宙”に行ったブラックモンブラン
気になるアイスの状況は――。ブラックモンブランは全部で4本が打ち上げられました。3本はかなり溶けていましたが、1本だけは良い状態でした。
竹下真由社長「ちょっと溶けているな、形は維持しているけど。“宇宙に行ったブラックモンブラン”、いただきます! …ちゃんと冷たい。周りのクランチがちょっと湿気っちゃってますけど、アイスクリームとしては成立しています」
竹下真由社長「いつかは宇宙で最高のブラックモンブランをデザートとして出すというのをやってみたいです」
MEMO
*このプロジェクトは東京女子学園・芝国際中学校高等学校とe-kagakuの共同プロジェクトです
東京女子学園 https://www.tokyo-joshi.ac.jp
芝国際中学校高等学校 https://www.shiba-kokusai.ed.jp
e-kagaku https://e-kagaku.com
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この記事を書いたひと
浅上旺太郎
山口県出身。九州大学法学部卒。2015年入社。本社報道部、現在の情報番組部を経て2022年6月から北九州報道制作部。福岡県警・北九州市政などを担当。最も印象に残る取材は2017年7月の九州北部豪雨。