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「飲食店で使った植物油を捨てずに燃料にかえて列車を走らせる」そんな取り組みをJR九州が始めました。使用しているのは「バイオディーゼル燃料」軽油に混ぜて列車やバス、船などの交通機関を動かす事例はあるものの、100%使用する例はまだ珍しいといいます。
キハ147形の気動車
福岡県の旧産炭地を走るJR後藤寺線。飯塚市と田川市をキハ147形の気動車が結んでいます。JR九州は、10月4日から、2両編成のうち1両に軽油に代わる燃料として「バイオディーゼル燃料」を100%使用する実証試験を始めました。
1日100キロ走行中
列車やバス、船などにバイオディーゼル燃料を混ぜて使用する例はあるものの、100%使用する例はまだ多くありません。JR九州は、乗客を乗せた営業運転で1日あたり100キロ走行し、燃料消費量やエンジンに問題がないかなどの安全性を確認します。
JR九州ESG推進室 山中菜穂子室長
「JR九州グループでは『2050年CO2排出量実質ゼロを目指す』ということを宣言しています。軽油を使用する気動車のCO2排出量の削減に取り組むということが大変重要であると考えているので今回の取り組みを行いました。実証試験がうまくいけば、他の線区や他の車両に展開していきたいと考えています。
燃料は59店舗からでる廃食用油
実証試験で使うバイオディーゼル燃料は、JR博多駅の駅ビル「JR博多シティ」の飲食店から排出される使用済みの油を活用しています。とんかつ専門の「鹿児島黒カツ亭」もそのひとつ。JR博多シティには飲食店が59店舗あり、毎月7000リットル程度、年間で9万リットルを超える油が捨てられていて、廃棄処理にも多額の費用がかかっています。この廃油を回収し再利用することで、資源循環や廃棄物削減にもつなげたい考えです。
RKB 三浦良介記者
「飲食店から回収された油は水分と不純物を取り除いた後、バイオディーゼル燃料に精製されます」
飲食店から回収された油はどこに?
飲食店から回収された油は、福岡県新宮町にある総合物流会社の西田商運に運ばれます。西田商運では、23年前からバイオディーゼル燃料の精製に取り組み、自社のトラックなどで使用しています。
1日2000リットルの燃料になる
西田商運は使用済みの食用油やラードを飲食店から回収し、工場で1日あたり約2000リットルのバイオディーゼル燃料を製造しています。
西田商運 近藤英明工場長
「回収してきた油はこちらのタンクに入れてメタノールと苛性カリを混ぜ合わせて化学反応を起こします」
工場長の近藤英明さんによると、化学反応によって、油は脂肪酸とグリセリンに分離します。さらに、分離した脂肪酸を蒸留水で洗浄し、水分を除去してろ過するなどの工程を重ねると、純度の高いバイオディーゼル燃料になるといいます。
「次世代にいい環境を残したい」
軽油の価格上昇で、バイオディーゼル燃料の競争力は相対的に高まっています。ただ、西田商運・会長の西田眞壽美さんによると、人件費や設備投資などを含めると、まだ割高だといいます。
西田商運 西田眞壽美会長
「軽油よりもちょっと割高になります。割高になっても、とにかくいい環境を次世代に残したい。CO2削減ができて、カーボンニュートラルになればいいなと思っています」
すべての気動車がバイオディーゼル燃料になったら
軽油やガソリンに変わる代替燃料として注目される植物由来のバイオディーゼル燃料。JR九州は2024年2月までの実証試験の期間(約5か月間)で約65トンのCO2を削減できると試算しています。JR九州が所有する気動車は280両。全てに適用されればかなりのCO2排出量の削減が期待できそうです。
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この記事を書いたひと
三浦良介
1999年入社、テレビ営業部、大阪支社勤務を経て2011年から情報番組のディレクターを務める。2016年から報道記者として政治・経済を中心に取材奮闘中。