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伝統の手仕事が生む 金色の椿油

熊本県玉名市に全国から注文が入る、最高級の椿油がある。平安時代からヘアケアやスキンケア、食用などに使われてきた椿油を「“100%天然”にこだわり、身を削る思いで作っている」と話すのが東製油の3代目、東 裕之(ひがし ひろゆき)さん(54)だ。

 

その徹底ぶりは、原料集めから。使用するのは栽培したものではなく、九州一円から集めた、自生する椿の実のみ。殻を割って取り出した種子を天日干しで乾燥させた後、潰す、蒸すなど熟練の経験に裏打ちされた昔ながらの製法で抽出していく。

 

なかでも重要なのが、全国でも数軒しか行っていない、“玉締め”と呼ばれる工程。粉砕して蒸した椿の実を入れた臼を機械で持ち上げ、上部に固定された御影石にゆっくり、垂直に押し付けて搾りだす製法だ。現在は主流の“絞る”製法に比べ手間がかかり、生産量も大幅に少なくなるが「時間をかけることで品質・風味が損なわれない」と話す東さん。

 

金色に輝く濁りのない椿油。大分で老舗のつげ櫛工房は「木への馴染みがよく毎日使いたくなる」と絶賛する。去年からは「販路を広げ、椿の実の確保にもつなげたい」とインターネット販売を開始した東さん。伝統を守り、次世代に残していこうと奮闘する、三代目を追った。

企業名:東製油

代表者:東 裕之さん
住 所:熊本県玉名市宮原648
電 話:0968-72-3449
ホームページ:https://higashiseiyu.myshopify.com/


企業名:別府つげ工房
住 所:大分県別府市松原町10-2
電 話:0977-23-3841
ホームページ:https://www.tsuge-kushi.com/

取材後記

絞りたての椿油をなめてみた。ほんわか温かく、さらさら、木の実の香り。「これ、飲めるかも?」そんな感想をいだく東製油の椿油。商品表示はいたってシンプル。「名称 食用椿油 原材料名 つばき実(九州産)」これだけだ。

 

東さんが抱える問題は少なくない。後継者がいないこと。椿の実の確保が地元だけでは難しいこと。作業面でも苦労が絶えない。気候に影響されるため雨天は作業が中止になるため、工程スケジュールが定まらない。椿の実も気象に左右されるので収穫量の変動が大きいなど。それでも東さんは「玉締め製法」の椿油作りをやめることは考えていない。

 

先代たちから受け継いだ思い。「椿油の良さを後世に残し、広めたい」からだ。「年とって桶が持ち上がらなくなれば桶を小さくすればいい。それでも無理になったら、1日で出来ていた仕事を2日や3日にわければいい」と東さんは話していた。ホームページの開設には後継者候補が現れることへの期待や椿の実を持ち込む人が増えることなどの「願い」も含まれている。

 

肌馴染みがよく、今は愛用品となった東製油の「天然椿油」が途切れることなく多くの人の愛用品になって欲しいと願うばかりだ。

 

(RKK熊本放送/久保田 泰代)

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