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なぜトイレは臭いのか 原因成分の主犯は実はアンモニアではなかった 「アンモニアは共犯にすぎない」駅のトイレでにおい成分を収集し突き止めた研究員 悪臭コレクションは600種類

トイレで気になる嫌な「におい」。アンモニアが主な原因だと考えられてきました。しかし、においの主犯は、実は別の成分にありました。「におい博士」と呼ばれる研究者が駅のトイレで収集した数百種類のガスを分析し、においの真犯人を突き止めました。

駅のトイレ「当時は本当に臭いところが多くて…」

 

「少しだけおしっこのにおいがしますね」

便器に顔を近づけ、においを嗅ぐのは、北九州市に本社を置く衛生陶器メーカー「TOTO」の研究員・山本政宏さん(57)です。社内では「におい博士」と呼ばれています。

神奈川県茅ケ崎市の研究所で研究を続けている山本さん。その調査は職員用のトイレで、においの元となるガスを集めるところから始まります。
 


TOTO研究員 山本政宏さん
「簡易的なポンプを使ってこういう場所から発生するガスを・・・」「シュー!」

山本さんがにおいの研究を始めたのは今から約30年前。新人だった当時、駅のトイレに飛び込みで交渉し専用の機械を使ってにおいの元を集めて回りました。

TOTO研究員 山本政宏さん
「その当時は本当に臭いところが多くて、一日中いると気分が悪くなるくらいでしたけど臭さに耐えて分析していました」

ぶつかった壁「何の成分がにおうか機械は教えてくれない」

 

なぜトイレは臭いのか。好奇心を頼りに研究を進めましたが、壁にぶつかります。

TOTO研究員 山本政宏さん
「機械さえ使えば分かると思っていたのですが、何の成分がにおうか機械は教えてくれないので、人間の鼻を使うしかないというところに行き着いて」

機械で「においの成分」を検出することはできても、どの成分が臭いと感じるかは「人間の鼻」だけが頼りです。そのため、山本さんは鼻のトレーニングに力を入れるようになりました。

においを集めた冷凍庫で鼻を鍛える

 

研究室にあるのは、さまざまなにおいを集めた「悪臭コレクション」。冷凍庫を開けると。

TOTO研究員 山本政宏さん
「臭い物質が、多い頃は600種類。今は数百種類あります」

これを使って、研究員とにおいを嗅ぎ分ける訓練をしているといいます。
 


研究員
「なんだろう・・・」

TOTO研究員 山本政宏さん
「この並びのどれかに近いですけど、違いますよね」
 


研究員「最初はお酢の酸っぱいにおいでしたが、だんだん腐ったようなにおいが強くなっていきますね」

記者も嗅いでみると・・・

RKB 岩本大志記者
「実際に二つのにおいを比べてみたいと思います。くさい・・・違いは全く分かりません」

においの強度を6段階に分類

 

訓練で鍛えた山本さんの鼻。その鼻で、トイレで収集した約300種類のガスをかぎ、どの成分が人にとって臭いと感じるか、判定していきます。

TOTO研究員 山本政宏さん
「硫黄系のにおい。臭気強度2」
「フェノールのにおい。臭気強度2」
「次々に色んなにおいがしてきますので、それを瞬時にどんなにおいと判断して記録するのはかなり訓練しないとできません」

においの強度を6段階に分け、山本さんが臭いと感じた瞬間と機械が収集したデータを照らし合わせます。

トイレの悪臭 真犯人は…

 

地道な調査の結果、トイレでの「においの真犯人」を突き止めました。

TOTO研究員 山本政宏さん
「従来アンモニアが一番だと思われていたんですが、実はそうではなくて、トリメチルアミンという成分が一番くさいにおいの原因ということが研究で検証できました。アンモニアのにおいに似ているんですが、主犯はアンモニアではない。アンモニアは共犯者というイメージです」

入社から3年後となる1995年に「真犯人」を突き止めた山本さん。研究の成果は、TOTOの大ヒット機能「きれい除菌水」など新たな開発につながっています。
 


TOTO研究員 山本政宏さん
「時間がかかっただけに、商品が発売されて評判がよかった時には貢献できたなと感じて」

「臭わない水回り、つくっていきたい」夢は海外にも

 

山本さんが今気になっているのは海外のトイレです。

TOTO研究員 山本政宏さん
「臭わない水回りとか、掃除が楽な水回りをつくっていきたいということは日本ではありますし、それを海外に広げていきたいということも強く思っています。いつでも快適なトイレを誰もが使えるように、ということに少しでも貢献したい。悪臭とは、切っても切れない悪縁だと思っています」

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