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ガス会社は「カーボン0」の未来をどう描く?高価でもLNGに需要【1.5℃の約束】

高騰するLNG(天然ガス)相場。その中でもより高価な「カーボンニュートラルLNG」の導入を決めるや、大量に買い付けて注目された企業が九州にある。社長が“喫緊の課題”と位置づけるカーボン0に向けた未来。確かな実需も導入を決めた背景にあった。

(国連は世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5℃に抑える目標を掲げています。RKBは地球温暖化を防ぐ取り組みを連載します)

油より「断然低い」CO2排出

福岡県北九州市若松区にあるLNG基地。2022年10月、この基地に約7万トンのLNG=液化天然ガスを積んだ大型船が入った。「LNGこそが温室効果ガスを減らす重要な役割を果たす」と話すのは、地元の西部ガスホールディングス(西部ガスHD)の道永幸典社長だ。
西部ガスHD・道永社長「都市ガス事業を営む当社が“脱炭素”に貢献できるステップは工業需要のLNGシフト化です。LNGも炭素ゼロではないですが、油に比べたら断然低い。石炭や石油からの天然ガスシフトに旺盛な需要があります」

天然ガスを燃やした際の二酸化炭素の排出量は、石炭と比べて4割ほど少なく、クリーンなエネルギーと言われている。西部ガスは、石炭や石油を使う企業に天然ガスへの乗り換えを促している。すでに天然ガス由来の「都市ガス」は、パイプラインやタンクローリーで北部九州の家庭や工場などの113万軒あまりに供給されているという。

割高な“カーボンニュートラル”を7万トン輸入

その天然ガスも、採掘や輸送、燃焼の過程でどうしても二酸化炭素が出る。この分を森林保全や植林を通して吸収された分で相殺し、地球規模では排出量を実質ゼロとみなすことができるものを「カーボンニュートラルLNG」と呼ぶ。

西部ガスは今年4月に導入し、年間輸入量の約1割にあたる7万トンを買い付けた。冒頭の大型船が積んでいたのがその「カーボンニュートラルLNG」だ。LNG自体の価格が1年前と比べて2倍以上に高騰する中、よりコストのかかるものを導入した背景にはメーカー側からの“需要”があった―。

「エンドユーザーが気にする」導入のきっかけに

LNG基地と同じ北九州市にある「東邦チタニウム」。24時間体制で航空機のエンジンなどに使われるチタンの精製や、電子部品に欠かせない金属製品を製造している。工場には都市ガスが供給されている。製造工程での温度調整はもちろん、化学反応に使う水素の原料としても欠かせない。
東邦チタニウム北九州事業所若松工場・鈴木純一工場長「カーボン排出量が低いモノが使われているかどうかをエンドユーザーは非常に気にしています。全世界的にもその流れになっています。コストを負担してもカーボンフリーに貢献していきたい」

価格高騰の“逆風”の中でも「環境を守る」

西部ガスは今年8月に福岡市と協定を結び、水素ステーションの運営にも参画。水素から発電した電気をさまざまな場所で使う方法を模索している。
西部ガスHD・道永社長「脱炭素、気候・地球温暖化は喫緊の課題だと思っております。電気が得意な分野、ガスが得意な分野があります。特に熱需要は絶対にガスの効率がいいです。ここに注力しながら、カーボンニュートラルに貢献したいです」
エネルギー分野で進む脱炭素に向けた取り組み。LNG価格の高騰という逆風を受けながらも地球環境を守る取り組みが着実に進められている。

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