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「世界が別れ」エリザベス女王の国葬を報じる新聞見出しに“違和感”

暮らし
9月20日の新聞朝刊各紙1面には、イギリス・エリザベス女王の国葬に関する記事が並んだ。RKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』に出演した神戸金史・RKB解説委員は、各紙の見出しと書き出しの一文を比較。「世界が別れ」「世界が追悼」という見出しに「古さを感じた」と評した。その一方で、「淡々とし意味付けもしっかりしている」と軍配を上げた全国紙の見出しもあった。  

読売・産経は「世界が別れ」

朝刊を見ると、台風14号とイギリス女王の国葬で埋め尽くされている感じです。「見出しが面白い」と思ったので、ご紹介しようと思います。

 
「英国女王 世界が別れ」と書いているのは読売新聞。

バイデン米大統領やフランスのマクロン大統領ら約200か国・地域から500人規模の外国の元首、王族らが参列し、英史上最長の約70年7か月にわたり君主を務めた女王との別れを惜しんだ。
という書き出しです。続いて、産経新聞「英女王 世界が別れ」。読売新聞と全く同じ見出しです。記事の場合は、はじめの1段落が一番大事で、そこだけで完結するように書くようにします。それを「前文」や「リード」と言います。産経新聞は

英史上最長の約70年にわたり在位し、英国民だけでなく世界の人々から敬愛された女王と最後の別れを惜しんだ
と、何だか盛り上げるような文章がありました。

 

「国葬」なので、その国の民がどう送るかという話なのに、「世界が別れ」を告げたほど偉大な人だったんだと、持ち上げていくトーン。「世界が別れ」と読売新聞と産経新聞が足並みを揃えたのには、その新聞らしい論調が出ていると感じました。

台風をトップにしなかった西日本新聞

「ほかはどうなっているかな?」と見たら、西日本新聞は「英女王国葬 世界が追悼」とあります。これは共同通信電ですが、

献身的に尽くした『英国民の母』に世界が最後の別れを告げた。
なんか、「みんな古いなー」という感じの文章。「久しぶりに見たな、こういう新聞」と思いました。

 

西日本新聞が1面トップに持ってきているのは不思議でした。西日本新聞は九州ブロック紙なので、台風14号をトップにするべきだったのではないでしょうか。新聞紙面を作る時、編集の責任者が毎日誰かいます。議論をしながら、最終的には誰かが決めるんですが、西日本新聞は「女王の国葬を1面に」という考えを持っている人たちがけさの朝刊を作ったのでしょう。

全国紙が1面トップから外した理由

毎日新聞は「英国の母 最後の別れ 女王国葬に2000人参列」。「世界が別れ」という言葉は使わず、「英国の母」としているのが毎日新聞の特徴です。

国葬の様子は世界各国で生中継され、視聴者数は41億人に達する。
と報じており、世界を意識した書き方になっているなあ、と思いました。

 

朝日新聞は淡々と事実を書いていくトーンで、「エリザベス女王 国葬 天皇陛下ら参列 英全土で2分黙禱」という見出しです。

 

朝日、毎日、そして日経は、1面トップではありません。1面トップは台風14号。全国紙は、西部本社版(九州・山口向けに出している紙面)だから、台風を1面トップにする選択肢は当然あるんですね。ところが、産経新聞と読売新聞はドーンと「世界が別れ」。はっきりしているなという感じです。

淡々かつ意味づけのある日経新聞にしっくり

日経新聞は、

天皇、皇后両陛下や各国の元首らが参列し、国内外で愛された君主に敬意を示した。第2次世界大戦後の歴史とともに歩んだ女王の時代が終わり、新国王チャールズ3世の治世が本格的に始まる。
という前文で、見出しは「英女王国葬2000人参列 両陛下ら最後の別れ」

 

僕が見ていて一番すっきりとし、腑に落ちたのは、日経新聞です。事実を言いながらも、第2次世界大戦後の歴史とともに歩んだ女王の時代が終わった、という意味づけをきちんとしているところ。僕としては一番いいなと思いました。

あまり気分よくなかった中学校での黙とう体験

ところで、僕が初めてした黙とうは、1980年6月のことでした。大平正芳首相(当時)が在職中に亡くなって、葬儀がありました。僕は中学2年生で、たまたま図書室にいたら、校内放送で先生が「今から黙とうを始めます」と言ったんです。

 

女性の先輩と2人で立ち上がって、黙とうしたんです。ところが「1分間」とか言われなかった。3分ぐらいしていたら、先輩が「もう止めていいよね?」って言ったんです。そのことが忘れられなくて。先輩が言ってくれなかったら、一体いつまでしていたんだろう? と思います。

 

あの時は「内閣・自民党合同葬」だったそうですが、今度の安倍元総理の国葬ではどうなるのでしょう。こういった「学校への強制」などはしないという話にはなっていますが。

神戸金史(かんべかねぶみ) 1967年生まれ。毎日新聞に入社直後、雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。東京報道部時代に「やまゆり園」障害者殺傷事件を取材してラジオドキュメンタリー『SCRATCH 差別と平成』やテレビ『イントレランスの時代』を制作した。

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