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歌人・窪田空穂(くぼたうつぼ)の故郷・松本市

歌人で国文学者の窪田空穂(1877-1967)は、松本市が故郷。生家の向かいに窪田空穂記念館があって、ここで空穂の生涯を知ることができます。代表作、書、愛用のキセルや補聴器といった遺品などの資料が並び、『空穂会』の諸結社が毎月発行している冊子なども置かれています。
 


館内を窪田空穂記念館・分館長の栗田正和さんにご案内いただきました。恥ずかしながら空穂が優れた国文学者であったことを初めて知った中島です。万葉集、古今和歌集。新古今和歌集の評釈を記した功績があるのですね。そして、読売新聞で身の上相談の担当をしていたという一面も。
 


代表作のひとつ『鐘鳴らし 信濃の国を 行きゆかば ありしながらの母 みるらむか』~巡礼しながら信濃の国を歩いていたら、亡くなった母に会えるのかなあ…~という歌をはじめ、多くの歌を自筆の書で残しています。細身で斜めの字。一度見たら忘れられない感じの字です。「クセ字といわれていますね」と、栗田分館長。
また、登山の歌もありました。『槍ヶ岳 そのいただきの 岩にすがり 天の真中にたちたり 我は』。訳不要の歌。そして何かすごく槍ヶ岳のピークの岩感とシャープな空気が伝わってきます。行ったことないけど「そうそうそう!」と言いたくなるくらいの共感!栗田分館長が「空穂は実際に登山してたんです。当時はまだまだ槍ヶ岳登山は危険を伴っていてハードルが高かったんですけどね」とおっしゃってました。
 


さらに目を引いたのが、空穂の生家エリアの子供達が通う中学校で行われた空穂の歌人気投票第一位(2019年)という文字。渋い&文化度高い人気投票だ!
その歌は『山かひに いささかみえて ゆかしくも 真しろき峰の 乗鞍ケ岳』。「ここから見えるんですよ、乗鞍岳が。特に冬場だと真っ白の乗鞍岳が見えます。空穂と同じく今の子供達も見てるし、中学校の校歌にも乗鞍岳が歌われているので納得の第一位です」と、栗田分館長。なんだかワクワクが止まりません。
 


栗田分館長のお気に入りの歌も聞いてみました。答えは『この家と 共にふりつつ こうやまき ふたももとせの ふかみどりかも』でした。この家とは空穂の生家。記念館の向かいの立派な古民家です。詠われた高野槙は今も庭にあります。
「歌われている高野槙ですが、空穂の父が屋敷を改築した時に樹齢150年と言われていて、空穂が歌にした時に200年。今も立派にそびえていて、樹齢300年くらいです。その真上をFDAの飛行機が飛んで行く…時代の流れを感じられますね」と、栗田分館長。そう、記念館上空は信州まつもと空港への飛行エリアです。
 


焼いたとうもろこしの香りで記憶が呼び覚まされる歌や、シベリアで亡くなった息子さんへの想いのつまった歌など、対峙するこちらの気持ちが上がり下がりする表現に満ちた記念館です。心を研ぎ澄まして、皇居での歌会始のメンバーを目指す勢いで訪ねてみましょう。

□ 窪田空穂記念館 →  https://matsu-haku.com/kubota/
□ 新まつもと物語 →  https://visitmatsumoto.com/
□ 長野県公式観光サイト →  https://www.go-nagano.net/
□ 信州まつもと空港地元利用 →  https://www.matsumoto-trip.com/airport-arrival/

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